金型の組み立てを効率的に行う方法
さて、今回は金型の組み立て作業を効率的に行う方法についてです。
この工程は、確認することも多く、本来効率性よりも、確実性を求められる作業になります。
したがって、早く作業する方法という表現よりも、効率的に行う方法という視点で見ていきたいと思います。
大まかなポイントは次のとおりです。
- 出来る限り手戻りを無くす
- 環境を整える
- 設計面から配慮する
出来る限り手戻りを無くす
これは、当たり前と言えば当たり前の話ですが、組み立てに時間のかかる人の特徴として、何度も組んだりバラしたりといった手戻り作業が多いということがあります。
逆に、作業が早い人は手戻りが少ないのですが、この違いは、部品ごと、ユニット(サブアセンブリ)ごとに、組む前にやるべきことをきっちり済ませているという点があります。
組む前にやらなければいけない作業として、手仕上げ加工や、部品寸法の確認・修正、途中まで組み上げた状態での部品間の寸法確認などがあります。
これらの作業を、組み立てはじめる前にきっちりと済ませておくことが、結果的に効率性につながります。
また、私はこの作業をマシニングオペレーターが、機械稼働の待ち時間などにやる多能工化の形式もおススメしています。
この途中まで組み上げたユニットごとの寸法確認は、実は上手い人とそうでない人がおりまして、その原因として、金型の図面は2次元でも3次元設計であっても、個々の部品図や完成状態の組図は作りますが、途中まで部品を組み上げたユニット状態での寸法指示図はほとんど作られません。
ですので、ユニット状態での寸法確認については、出来る人とそうでない人が発生してしまいます。
この点については、部品図と完成組図のCAD図から自分で寸法を拾ったりして確認することになります。
設計者が、各ユニット状態の図面を作り、組み立て作業をサポートしているメーカーもありますが、これはこれでリードタイムが伸びたり、コストアップになるので考えものです。
やはり組み立て作業者のスキルで対応するべきかと思います。
環境を整える
これも当たり前と言えば当たり前のことになりますが、組み立て作業は周辺環境の整備が重要になってきます。
ひとつの基準として、4メートル四方の作業スペース内で作業が完結できるくらい、使う道具が手元化されているかどうかということがあります。
もしそこまで整備されていない場合は、作業者の動線距離が必要以上に長くなっていることも考えられますので、道具の購入コストとのバランスを考慮しながら、効率性の良い作業レイアウトを考えます。
それと、これはプレス機の段取り替えのとき、なるべくフォークリフトを使わず金型交換時間の短縮を図る考えと同じなのですが、クレーン待ちの時間をゼロに改善するという方向性もあります。
ぜひ検討してみてください。
設計面から配慮する
最後に、設計面から組み立て作業時間を減らす配慮をする視点があります。
これは、使用するキャップボルトやノックピンのサイズを、できるだけ統一するというものです。
入れ子やパンチなどサイズの問題で、どうしても制限される場合は別ですが、例えばノックピンの径や長さの種類がいくつもあったりするとそれだけで、準備が大変だったり、慎重に間違わないよう確認しながら組付けるので、どうしても時間が多くかかります。
可能な限り締結部品のサイズを統一することで、組み立てやメンテナンス時のバラシ作業も効率的になります。
こうした配慮が行き届いているメーカーは、外注設計に渡す設計標準にも、きちんとその点が明記されています。
もしよろしければ、取り入れてみてください。
まとめ
かつては職人作業でじっくり取り組めた組み立て作業も、たっぷりコストをかけてやれるような事業環境ではなくなってきました。
とはいえ、マシニング加工やワイヤーカット加工のようにプログラムによる自動運転という作業ではないので、打てる手は限られてきます。
また、非常に属人的な作業でもありますので、作業者間のスキルの差は出来る限り減らしたいですよね。
そういった点でも、部品ごと、ユニットごと、どこに作業時間の差が生まれているのか、因数分解の視点で原因を考えると良いかもしれません。
参考になれば幸いです。
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