金型メーカー・単品部品加工メーカーのQCD、突き詰めると生産性が下がる?
QCD・・・このキーワードは、製造現場で働く人にとってもはや当たり前のように遵守すべきとされ、品質・コスト・納期、この3要素は製造現場の基本として今もしっかり定着しています。
ところが金型メーカーや機械加工メーカーなどにおいて、このQCDを徹底し過ぎることで、逆に出来高を下げる解釈をしてしまっている現場を見かけることがあります。
例えば次のような解釈です。
- 加工品質を守ることや、ミス・不具合を発生させないため、丁寧に丁寧に仕事(加工)をする。時間は多くかかることになるがこれはやむを得ない。
- 徹底してコストを下げるため、旧式の遅い機械を使うことや、専門でない他部署・多工程の応援を借りることは工数が余計にかかるため好ましくない。
- 納期をとにかく守るため、納期が近いもの・遅延リスクが高いものをとにかく優先して仕掛かる。
さて、これらはQCDの解釈からすると間違っていません。ところが「量をさばく」という視点からすると、逆効果になることがあります。
「量をさばく」とは、つまり売上や利益を多くするため、できる限り出来高を多くしていこうとする取り組みです。
QCDと出来高、どちらが優先とも言い切れないところがありますが、私が見る限り、QCDを意識するあまり、出来高の方が犠牲になっている現場もあります。
やはり会社や部門の業績あってこその仕事ですので、この「量をさばく」という前提が、まずあってのQCDではないでしょうか。
以前、クライアント企業でこのような出来事がありました。
ある製缶品、溶接で組み上げた箱状の筐体部品について、表面や側面を削ったり穴を空ける加工を受注しました。
その会社のマシニングセンターは一般的な立形マシニングしかなかったため、その加工は、何度も反転させたり、その都度基準面を削ったりするなど、非常に手間がかかり、受注したときに想定していた工数ではとても足らず、大きく原価を割ってしまいました。
しかも数週間に渡って継続的に数を作らなければいけないということもあって、その加工現場を大変悩ませていました。
そこでその現場の加工者さん達がとった対策は、とりあえず社内のほとんどの立形マシニングセンターを使い、いわゆる人海戦術、全員攻撃のイメージでとりかかることにしました。
この手離れの悪い仕事をまず先に全部片付けてしまおうと考えたのです。
そのような中、できるだけ効率よく加工できる方法はないかという相談を受けたのですが、私も知る限りの手はお伝えしたものの、本来製缶品のような中大型製品で、複数面の直角性が求められる加工は、横型マシニングセンター(NC横中ぐり盤)でやるのがセオリーだと思っています。したがって、6番クラスの立形マシニングセンターしかないその会社では、私としても打てる手がなく、その仕事を劇的に効率化することはできませんでした。
ですが、私が反対したのは、その仕事の回し方についてです。
まず全員攻撃、ほとんど全てのマシニングセンターを使って、この仕事を終わらそうとした判断についてです。
気持ちはものすごくわかります。私も元加工者として、こういった悩まされる仕事は早々に全部片付けたくなります。
しかし問題は、この月の売上と外注費が惨憺たるものになってしまうことです。
したがってそれを回避しようと思えば、納期に間に合う限り、最小限の機械台数でこの手離れの悪い仕事を担当させ、それ以外の機械は逆に、それをリカバリーするべく、他の手離れの良い仕事を優先してどんどんこなしていくべきです。
つまり被害を最小限に食い止めるイメージです。
今回のコラムテーマに戻りますと、このエピソードはやっかいな製缶品のQとDに意識がいってしまったあまり、「量をさばく」視点が抜けてしまったというものです。
私は経営コンサルタントとして、この手離れの悪い仕事に集中するというよりも、まず会社全体の利益(売上と外注費)に意識がいきました。したがって、この仕事の被害は最小限に食い止め、いかに他の機械で「量をさばく」ことができるかに注意が向かいました。
このエピソード以外にも、冒頭で挙げたQCDそれぞれの行き過ぎた考え方の事例のように、いくらでもこの現象は起こっていると思います。
繰り返しになりますが、QCDはもちろん大事な視点です。ですがそこに「量をさばく」が加わると、取りうる方策が別のものに変わるというのが今回一番お伝えしたいテーマです。
「量をさばく」の量は英語にすると、quantity になりますでしょうか。
そうであれば、QCDのうち、quality(クオリティー)のQだけではなく、quantity(クオンティティー)のQも同じかそれ以上に重要です。
QCD「+Q」ということですね。参考になれば幸いです。
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コラム投稿者
金型・部品加工業 専門コンサルティング
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