【今さら聞けない】トロコイド加工の意外な盲点

目次

トロコイド加工の意外な盲点

危険な事例

今回は、CAMを使った荒取り加工でよく使われるトロコイド加工についてコラムを書きたいと思います。

トロコイド加工は、近年の高速で動くマシニングセンターの特性を利用した切削方法で、下図右の工具を正面から見たイメージ図のように径方向を薄めの切り込み量とし、かつ加工深さを深めにとり、とにかく下図左に示すような工具直径をフルに使うような溝加工をしないことで、軽切削かつ高速に荒取り加工を行う手法のことを言います。

工具直径に対する切り込み量の違い

この極めて工具欠損リスクを減らし加工できるトロコイド加工ですが、もしCAMの設定をまったく気にしないで使うと、隠れた危険があるということについて、今回は見ていきたいと思います。

下の図は、島形状のあるポケット加工を行う事例ですが、ポケット内にある円筒突起の脇にある隙間を削るにあたり、危険な軌跡が出力されることがあります。

島形状のあるポケットの事例
島形状のあるポケットの事例

下の図は、CAMの設定を気にせず出力したパス軌跡です。

危険なパス軌跡の事例
危険なパス軌跡の事例

円筒突起の脇のパスを拡大したものが下の図です。

危険な箇所を拡大した図
危険な箇所を拡大した図

円筒突起の脇は、工具がギリギリ入るかどうかの狭いエリアになっており、細く尖ったような軌跡になっていることです。

トロコイド加工は高速切削ができる反面、①薄く削る・②後退し離れる、を交互に繰り返しながら切削しており、従来の工具直径フルで削る(以下「フルカット」と言う)軌跡と比べると、工具軌跡の総距離は伸びる傾向にあります。

そこで、軽切削であるためにF値を上げることで切削総距離が長くなることを相殺するのが一般的だと思います。

したがって、マシニングセンターの自動加減速はかかってくるとはいえ、図のような狭い箇所に入り込み、極めて小さな円弧で動作するトロコイド加工は、フルカットの状態に近く、工具が折れるリスクをはらんでいると思われます。

そこで一例として、VISIというCAMでは、下図のような「輪郭オフセット」というパラメータに、トロコイド加工軌跡で動作する半径を入力します。

そうすると、下図のように指定した半径で円弧軌跡を描くことで、狭いエリアにグリグリと細く入り込むことを抑制することができます。

もちろんパスが入らなかったエリアには削り残りができますので、この後、高速条件ではなくフルカットを想定した、トロコイド加工で使った送り条件よりも遅い条件で、残った箇所を除去するパスを追加するのが良いと思います。

(それならばと、溝加工でも大丈夫な遅い送り条件にして、狭いエリアを含め全てトロコイド加工で行うという考えもありますが、そもそも切削総距離が増えるトロコイド加工を使うことがデメリットにもなるかもしれません・・・)

一方、こうした狭いエリアを持つ形状を加工する場合には、トロコイド加工を使わずに、フルカットを含む従来の荒取り加工の軌跡で加工を行うことも選択肢としてあると思います。

まとめ

以上、まとめますと

  • 遅い条件でもいいから、狭いところも一気に全て加工する(パラメーターを無視する)
  • 高速条件を活かしたいので、削り残った狭いエリアは別途あとで追加工する(パラメーターを使う)
  • そもそも狭いエリアのある形状ではトロコイド加工は使わない(フルカットもする従来の荒取り加工を使う)

CAD/CAMの違いで見ても、VISIでは初期値では円弧サイズはゼロになっている(設定次第ですが)、hyperMILLでは工具径に応じて一定の係数で円弧が自動で作られる、となっています。

ただし、これも一長一短で、

  • 初期値がゼロという指針・・・できるだけ気づかないうちに削り残りができてしまうことを避けたい(短所:円弧軌跡が作りきれない狭い箇所に注意する)
  • 初期設定で円弧軌跡ができるという指針・・・できるだけトロコイド加工軌跡を作り、切削負荷を下げ、均等化したい(短所:気づかずに削り残りができる可能性がある)

という意図が読み取れます。

トロコイド加工を使いなれているオペレーターの方は、こうした危険はもちろん意識した中で使用されていると思いますが、とかく無人加工になりがちなCAMで作ったマシニング加工は、今回のような危険な軌跡が含まれていても、気づかずにいつの間にか工具が折れたりすることもあります。

また、CAMに慣れていないオペレーターの方が、何気にトロコイド加工を使って加工データを作成したときに、パラメータが初期設定のままで使用し、今回のような危険なパスが出力されたとき(使用しているCAMによります)、リスクに気づかずに加工してしまうこともあると思います。

効率的で工具欠損リスクの低いトロコイド加工も、注意して使わないと、裏目に出てしまうこともありうるというお話しでした。

参考になれば幸いです。

金型・部品加工業専門コンサルティングからのご案内

「金型メーカー・機械加工業のための自己診断ハンドブック」が発売されました!

自己診断ハンドブックの販売

私がコンサルティングの初回訪問時や、無料診断サービスにおいて、訪問先企業の製造現場で確認する項目を解析付きで紹介しています。

金型メーカーや部品加工メーカーに皆さまに、自社をセルフチェック自己診断)するために使っていただければと思っております。

くわしくはこちらのページからどうぞ。

ホームページの技術コラム本の第3巻が発売されました!

第3巻の表紙

設計部署や製造現場、管理部署にぜひ一冊。

経営者や部長などマネージャー職の方々から、悩める現場リーダーへのプレゼントにも最適です。

くわしくはこちらのページからどうぞ。

2パターンの技術セミナーレジュメを販売いたします

   

2パターンのレジュメを販売しております
2パターンのレジュメを販売しております

日刊工業新聞社さん主催で行われた、機械加工メーカー向け金型メーカー向け、それぞれの技術セミナーで配布されたレジュメを販売いたします。どうしても遠方で参加できないといった方や会社さまより、レジュメだけでも使いたいとリクエストがあったためです。

当事務所のホームページに掲載されているコラムの内容がベースとなっておりますが、それとの違いとしては、具体的計算と事例ワークなどを盛り込み、ホームページよりも手厚く解説しております。

本来レジュメと言いますと、図やイラストがほとんどで、言葉による文章が入っていないイメージがありますが、本レジュメはそうではなく、復習がしやすいよう、多くが文章で構成されており、1人で読み進めることができます。

くわしくはこちらのページからどうぞ

オーダーメイドの社内教育マニュアルを作成いたします

当事務所では、企業さま独自の社内教育マニュアル作成代行しております。

サンプルページ_1
サンプルページ_2
サンプルページ_3
  • 研修機関や工作機械メーカーで受ける基礎講習の先の応用的な内容を社内教育マニュアルにしたい
  • 社内の設計や加工ノウハウについて、作業者ごとバラバラでベストな条件での標準化ができていないので何とかしたい
  • 社内のベテランしかできない加工や設計があり、それを引退前に後輩に伝授しなくてはいけない
  • エース社員やベテラン固有の技術をノウハウ化したい
  • 現状男性の職人さんしか対応できない設計やCAMの作業を、女性パート社員さんでも対応できるようマニュアル化と標準化を図りたい

といった様々なご要望を受け付けております。

当事務所では、一定のヒアリングと現状把握をさせていただいたのち、御社の教科書として、今後長きに渡って受け継いでいけるオリジナルの社内マニュアルを代行して作成しております。

詳しくは、こちらのご案内ページからご確認ください。

CAMや設計パソコン用のデスクトップ壁紙を販売いたします

当事務所のコラムを読んでくださっているユーザー様へ、日ごろのご愛顧の感謝を込めて、CAMや設計でお使いになられているパソコン用のデスクトップ壁紙を販売させていただきます。

今回の壁紙は、お忙しい皆さまに、後工程へアウトプットする直前にお使いいただくチェックシートとしてご活用いただけます。

デスクトップ壁紙は、以下の4種類があります。

金型・部品加工業専門コンサルティングの壁紙

詳しくは、こちらのご案内ページからご確認ください。

4コマ漫画ギャラリーを開設しました

コラムページにプロローグとして添付している4コマ漫画を集めたページを開設しました。

4コマ漫画ギャラリー

こちらをクリックすると入れます

コラム投稿者

金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054

よかったらシェアしてね!
目次
閉じる