金型メーカー・単品部品加工メーカーにおける2種類の仕事の教え方(覚え方)

真のプロと一般のプロの違い
目次

金型メーカー・単品部品加工メーカーにおける2種類の仕事の教え方(覚え方)

これまで、ここのホームページコラムでは、いくつか金型メーカー・単品部品加工メーカーにおける仕事の教え方(もしくは覚え方)を紹介してきました。改めて整理すると、次の2つになります。

仕事の教え方(覚え方)の2つのパターン

パターンA(ルーティン作業の場合)

まず標準的に決まったルーティン作業を覚える手順については、次のような順序で仕事を教えます(覚えます)。例えば、マシニングセンターや放電加工機の段取り作業などの一部が考えられます。

  1. 手順を覚える
  2. あるべき状態を知る
  3. 急所を押える

具体的な意義と内容は、後ほど詳しく見ていきます。

パターンB(応用的な作業の場合)

一方、ある程度応用力を要し、ジャッジ(判断)を要する作業については次のような順序で仕事を教えます(覚えます)。

  1. 選択肢を知る
  2. 判断基準(優先度)を覚える

この考え方の意義と、詳しい内容はこの後見ていきます。

2種類の仕事の教え方(覚え方)の意義

まず、パターンA(ルーティン作業の場合)ですが、改めて次のような手順になります。

  1. 手順を覚える
  2. あるべき状態を知る
  3. 急所を押える

まず順序や作業内容が固まっているルーティン作業を覚えるにあたっては、やはり最初は「①手順を覚える」になります。ただし、これは作業中での確認作業をどこで入れるかなど、いい加減に覚えると後々不具合やミスの元になりかねないので、慎重かつ丁寧に順番を教える(覚える)必要があります。

また次の「②あるべき状態を知る」は、手順の中のそれぞれの作業において、正しい状態を知る必要があります。例えばマシニングセンターの段取り作業を例にとると、「松葉でクランプする際、適切に先端側の方の高さを低くくして正しく押さえられている」などがあるべき状態と言え、それを知る必要があります。したがって、これは「①手順を覚える」とは別の知識になります。

最後の「③急所を押える」は、「②あるべき状態を知る」とはある意味反対のことになります。「もしこれをやってしまうと重大な不具合や大惨事になるため、これだけは絶対に押さえておくこと」になります。

例えばマシニングセンターの段取りで言えば、工具の突き出し長さの設定や、そもそも工具直径を間違えないことなどが考えられます。まさに加工トラブルや加工不具合に直結する内容になります。

「②あるべき状態を知る」との違いとしては、「③急所を押える」は、②よりもさらに重大な注意点になります。例えば、ワークのクランプの仕方が多少理想とは違っていたとしても、100%ワークが動いてしまうとも限りませんが、工具の突き出し長さや工具直径などを間違えた場合、100%不具合やトラブルが発生します。

どちらも重要な管理項目だと思いますが、「③急所を押える」は、特にこれだけは絶対に注意して欲しいという点を別途、重点項目にするということです。したがって、②と③は分けて考える方が良いと考えています。

その他「③急所を押える」に入る項目の例としては、設計では落下する可能性のある部品の締結ボルトのサイズや本数など、組み立て工程で言えば、同じく締結用のキャップボルトの必要ねじ部の長さなどが入ると思います。

次に、パターンB(応用的な作業の場合)ですが、改めて次のような手順になります。

  1. 選択肢を知る
  2. 判断基準(優先度)を覚える

まず「①選択肢を知る」ですが、応用的な作業ということなので、ランダムに思いつく方法で仕事をするというわけでなく、自分が実行できるいくつかの方法の中から、適切な基準で作業方法を選定し、それを実行するということになります。

例えば、金型の構造設計において市販部品の形状を選定する時や、マシニング加工では深いポケット加工など、どのような工具を使ってどのような順序で加工していくかを検討する時、金型トライ時の調整作業の場面などが考えられます。

そうした時には、まず自社のやり方にどのような選択肢があるのかを知ることから始めなければいけません。応用的な作業の場合の教え方(覚え方)のスタートは、まずここからになります。

次に、「②判断基準(優先度)を覚える」ですが、これも重要な手順です。いくつかの選択肢の中から、どのような優先順位でやり方を選択していくのか、その判断基準を知ることで初めて応用的な作業ができると言えます。

過去にこちらのコラムや私が講師を務めるセミナーでは、事例として、構造設計でのストリッパーボルトの形状の選定基準や、マシニング加工におけるCAMデータの作り方では、ポケット加工のジョブを使うのか輪郭加工のジョブを使うのか、その優先順位の考え方などを紹介しました。

私は、多くの金型メーカーや部品加工メーカーで、特にこのパターンB(応用的な作業の場合)の教え方がうまくいっていないと思っています。

例えばここ最近、マシニング加工現場で実際にあったお話ですが、油圧式であるハイドロチャックに高送りカッターを取り付けて荒取り加工している例がありました。

ハイドロチャックは加工時の減衰性や、焼き嵌めチャックに匹敵する繰り返し振れ精度の良さが特徴だと思っています。

ですが、加工時の荒取りと仕上げでの使い分けについては、あまり周知されていないようで、いくつかの市販図書などに書かれているように、ハイドロチャックは構造上、他のミーティングチャックと比較して剛性や把握力が劣るとあります。ただし最近は高剛性タイプというのも販売されているので、そこを改善している商品もあります。

実際に、ある顧問先企業の加工現場で、私が以前手ほどきして、HRC60に焼入れ処理されたSLD-f材を高送りカッターで荒取りするという加工を行っていた時です。私がCAMでデータを作り、実機での加工まで手ほどきしていた時には3時間以上持ちこたえていた交換式チップが、ある日を境に1時間も耐えられなくなったと報告を受け、「あれあれ???」となっていたのですが、実際に加工しているところを見て、すぐに原因がわかりました。

高送りカッターをハイドロチャックに付けて加工していました。もちろん当初私が手ほどきした時には、ハイドロチャックは使わずにという指示をしており、パワーチャックなど他のミーティングチャックを使って欲しいと指示を出していました。

ところがその後、その加工現場の機械オペレーターは、何の疑いもなくミーティングチャックを取り換えて加工していました。

この問題のそもそもの原因こそ、前述したパターンB(応用的な作業の場合)の教え方がうまくいっていないことに起因すると思っています。

「①選択肢を知る」で、パワーチャックやスリムチャック、ハイドロチャックなど、色々なツーリングの選択肢は知っていたかもしれませんが、今回は「②判断基準(優先度)を覚える」がうまく出来ていなかったと思います。

自社にある様々なツーリングの特性、その長所と短所を把握しておき、荒取りや仕上げ、突き出しの長い加工の時など、様々な場面で、工具やツーリングをどのように使い分けていくのか、しっかりと把握しておかなければいけません。

今回の事例では、SLD-fという比較的新しい鋼材での加工であったため、明確な判断基準がまだ無かったかもしれませんが、少なくともHRC60という硬度での荒取りということは、いつも以上に加工負荷がかかるという認識はあったはずで、やはり「②判断基準(優先度)を覚える」がきちんと実施されていれば、充分対応できる場面だったと思います。

今回は、マシニングセンターでの作業でしたが、金型メーカーや部品加工メーカーにおいては、同様に応用的な判断を要する作業が他にもたくさんあると思います。

これを読んでくださっている御社はいかがでしょうか。

パターンB(応用的な作業の場合)の教え方(覚え方)は、きちんと行われていますでしょうか。

またルーティン的な作業については、パターンAの教え方(覚え方)はできていますでしょうか。

参考になれば幸いです。

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コラム投稿者

金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054

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