組織内に潜む自分ファースト比率が、受注キャパと製造品質に大きく影響する
私は金型メーカーや部品加工メーカーでお仕事をするにあたり、まず一人のビジネスマンとして、意識面の高さについて、下図のような段階があると考えています。

この図は、上に行くほど、ビジネスマンとしての意識が高くなっていくことを表しており、例えば、下から3段階目にある「会社ファースト」で仕事を考えることができる人は、下の階層にある自分の生活(自分ファースト)のことも大事にしますが、まず会社として優先すべきことを先に考えて行動できる人だという表現です。
逆に、一番の下の階層の「自分ファースト」が強くなると、「自分の仕事を終わらせて早く帰る」ことが最優先になることで、会社や部署で優先したい方針は二の次になってしまいがちであることを表しています。
例えば、実際にあったプレスメーカーでのワイヤーカット加工を例にしてみますと、自分都合が強くなると(自分ファースト)、サッと1stカットだけで済ませて自分の手元から離れることを最優先にしてしまいがちですが、会社ファーストで仕事を捉えると、量産部門で使うパンチを少しでも長持ちさせるため、4thカットまでやって加工変質層をきちんと取り除いておこうと考えるといったケースが考えられます。
その他にも、自分ファーストで考えてしまう事例は次のようなものがありました。
- 自分の担当であるマシニング加工をまずはサッと終わらせたい。リーマなどの精度穴があっても推奨される正しい手順や工具は無視して、加工さえしてあれば良いと考えてしまう。加工後もピッチ寸法をきちんと測定確認しない。
- 同じくマシニング加工において、とにかく形状を削ってさえあれば良いと考えてしまう(自分の手元から離れさせることが最優先になる)。焼き入れ後の歪みは考慮せず、歪みが起こりやすい形状でも、焼き前と焼き後に仕上げ加工を分けることがない。焼き入れ後も歪み寸法を確認しない。
- CAMオペレーターが自分の仕事の手間を省くことを最優先してしまい、実際のマシニングセンターによる加工では、ポキポキ小径工具が折れてしまっても、自分の残業時間などを理由に、加工軌跡や条件などを改善しようとしない。
- とにかく設計を終わらせて自分の手元から離れさせることが最優先になる。解析ソフトを会社が入れていても使わないため、成形寸法に対する金型意匠面の見込み調整が入ることがない。結果トライ担当者の1stトライ後の補正作業がかなり大変になっている。
- 各々の設計者が使いたいCADソフトを別々に使ってしまい、社内で使うCADソフトがバラバラになる。結果、後工程に渡されるCADデータの内容や品質がバラバラになり、CAM担当者はモデルデータが扱いにくい状況になっている。
- 金型設計者からシミュレーションソフトによる解析を依頼された担当者が、ギリギリ公差に入ったところで意匠面の調整作業を止めてしまう。実際には、型部品の再現性の誤差や成形素材の誤差により、解析結果には誤差が考えられるため、余裕を持って狙い寸法に入るまで意匠面モデルを調整すべきだが、簡単に済ませてしまおうとする。
その他の種類の金型メーカーや、機械加工メーカーなどでは、その他にも色々な事例があるかと思います。
さて、これらの事例は逆に、「会社ファースト」「部署ファースト」の発想になると、例えば、成形メーカーや金型メーカーにおいては、次のような行動に変化すると思います。
- 少しでも金型を長持ちさせるため、4thカットまでワイヤーカットをやっておこう。
- トライを一発で終わらせるため、もう少し解析をかけて追及してみよう。
- 解析結果は公差内に入ったけども、順送型のステージ数を少しでも減らせないか、少しでも削りやすいパンチ形状にできないか、もう少し解析で調べてみよう。
- ワイヤーカットやマシニングで加工精度が出るよう、自分が担当する平面研磨できちんと反りを除去しておこう。
- 組み付け寸法が狂わないよう、マシニング加工後のリーマのピッチ寸法は、まずは機上で測定しておこう。また正しい手順を調べて身に付けよう。
- 少しでも機械の手離れをよくするため、CAMの方で手間をかけてエアーカット軌跡はできるだけ減らしておこう。
- 会社の投資計画を考慮して、今あるソフトだけで3次元設計ができるように検討してみよう。
もちろんこれらの考えに至っても、上司の許可なく勝手に際限なく時間を使って作業することはできませんが、やるように指示があっても面倒くさいなどの理由で実行しないのは問題があります。
ところで、ある意味ちゃんとこれらのことをやっている会社さんにしてみれば、これらのことは当たり前と言えば当たり前のことだと思います。しかしながら出来ていない会社があるのもまた事実なのです。
ですから今回のコラムのタイトルになるわけです。自分ファーストの考えの人が会社や組織に高い割合で蔓延してくると、会社の受注キャパや、そもそも作る金型や加工部品の品質に大きな影響が出てくるのです。
したがって、これはなかなか見逃せない問題ということで、徐々に大きく表面化してきます。
経営が厳しい会社に共通した課題
最近増えている金型メーカーや部品加工メーカーの廃業や倒産ですが、私が以前かかわった会社でも、残念ながらそういった状況になってしまった会社があります。
そういった会社は例外なく、社員さんの自分ファースト比率が高いという共通した特徴がありました。
例えば、効率が悪いとわかっていても絶対に設計のやり方や手順を変えないとか、趣味や家庭の事情を理由にどれだけ忙しくても残業や休出を絶対にしないオペレーターさんとか、自分の工程以外の作業は絶対に手伝わないとか、何らかの自分ファーストが強くて、結果、分の悪い外注策が取られ、利益率が悪いどころか、常に赤字状態になっていました。
もちろん年々下がる受注単価の問題はあるとは思いますが、それはどの会社も同じ条件でこの業界の仕事をやっており、私としては、こういった会社の最も根の深い問題は、社内の自分ファースト比率が高いことが原因の一つとしてあると思っています。
こういった会社によくいる自分ファーストの人で、「俺は休日は絶対に出ませんよ」とか「休みの日の会社からの電話は絶対に出ませんね」と言われる人も稀におられるのですが、これが「働き改革」かと言うと、ちょっと違うと言うか、かなり違いますよね。
これはただの(重度の)自分ファーストです。
部署ファーストや会社ファーストの人であれば、自己犠牲の精神で「自分の時間は諦めて」というのではなく、どうしたら会社の売上や出来高を維持・向上させながら「自分も早く帰れて休みもきちんと取れるか、皆で考えよう」となるわけです。
ところで、自分ファーストは「人間性が未成熟」であることが主な要因だと私は思っておりますが、いろいろな会社に訪問していると、そういった一面を垣間見ることができます。
例えば、事務所に入らせてもらうときでも、基礎教育が行き届いている会社は、訪問したときに全員が立ち上がって挨拶してくれます。また通路で一般の社員さんとすれ違うときでも、本人は横に避けて、道を譲ってくれながら挨拶してくれます。
ですが、自分ファースト比率が高い会社では、そういった行為がほとんどありません。そういう部分で自分ファーストが蔓延していることを感じたりします。
まとめ(自分ファースト比率を下げる取り組み)
さてまとめると、この自分ファーストの人が、組織にどれだけいるかの比率が、前述したように、金型メーカーや部品加工メーカーの事業運営に大きくかかわってくると思っていまして、この比率をできる限り減らしていけるよう、何らかの取り組みが必要になります。
例えば、社員一人ひとりが、常に自分の発言・行動を「これは自分ファーストになっていないか?」を自問自答する。これを全員が習慣にすることなどです。
また、最初はリーダー職の人から率先して実践し、リーダー同士で指摘し合ったり、部下に指摘することから始めることが考えられます。
これを読んでくださっている御社の自分ファースト比率はいかがでしょうか。2:6:2の法則における20%を超えていませんでしょうか。
参考になれば幸いです。
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コラム投稿者
金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054
