混同していませんか?コストダウンに対する2つのアプローチ
金型メーカーや部品加工メーカーにおいて、提案制度などを設けて、日々改善に取組まれている企業さんは多いです。
これはとても素晴らしいことだとは思いますが、そのわりになかなか成果を出すことが難しく、経営が良くなったとか、部門利益がどんどん増えた!という話はあまり聞きません。
今回はその実態、理由について触れていきたいと思います。
まず改善活動を積極的に実行している会社さんには、前提として「できるだけ安く作るように」という指示がトップから出ていることが多いです。
これはこれで必要なことですし、望ましいトップダウン指示だと思いますが、この「安く作れ」には2つのアプローチがあり、多くの会社さんでこれをごっちゃに混同してしまっているという問題点があります。
この「安く作れ」のアプローチとは次の2つを指します。
- 材料や工具等について購入費を減らす。例えば、交渉や相見積もりによって今より安く購入する・安価な部品を使う設計に変更する・加工方法を見直し工具消耗を減らす、など。
- 金型や部品加工の案件ごとにかかる工数を、今よりも少なく作業できる(早くやる)ようにする。
このうち、①の購入費の削減は会社の利益を増やすことに直結します。コスト削減分は直接の利益となり、社員の皆さんの給料や福利厚生の原資になったり、会社にプールする資金になったりします。
一方、問題なのは②の工数削減の方です。こちらは扱い方を間違うと利益増加につながらないばかりか、逆に利益を減らすことなりかねません。
なぜそのような事態になってしまうのか見ていきたいと思います。
実は、5分や10分などの工数削減をしても、会社の利益には役に立たないことがあります。
それはなぜでしょう?
「工数削減」の本来の目的は「今よりもっと多くの仕事を受けられるようにする」ためだからです。
年々、金型や部品加工の単価は下がり、そのような中、工数削減した分は「仕事(金型や部品加工)を安く受けられる」根拠になります。
ですが、その浮いた分の時間に何か新しい仕事をとってきて、そこを埋めないと、安く仕事を受けた分、会社の売上が減ります。
ですから改善提案などで、5分とか10分、もっとそれ以上(1時間とか3時間など)の工数削減をしましたと報告が上がってきても、その浮いた時間について何もしなかったら、会社の利益に対しては何の効果もありません(ただし削減した時間分の工具摩耗が減って工具費が削減したなどの効果は出ます)。
理由は、作業者の皆さんのお給料は変わらないからです。工数削減した時間分を、休みを取る・早く帰るなどして人件費も減らせるならその分、会社の利益につながりますが、そういうわけにもいきません。したがって人件費は仮に売上ゼロでも発生する固定費ですから、何分・何時間、工数削減しようが変わりません。
私がお付き合いしている、あるプレスメーカーの社長さんは、金型の見積もりの際に工数の積み上げで原価計算をしても何の意味もないと言い切ります。
お客さんを取り巻く競争価格で、受注できるギリギリの単価、つまり二つ返事でOKと言ってもらえる価格を読むことに集中しています。
このやり方が良いかどうかは今回は置いておいて、受注できた仕事を積み上げて、目標とする月または年間の目標売上額に到達するまでの仕事量を、現場が受け入れられるかがポイントになります。
「改善活動」はこうした現場が仕事を受け入れられる余力を捻出するために行うのが、本来の目的です。現状の仕事を早く少ない時間でやるだけが目的ではない、ということです。
改善とは別のアプローチで、「現場に120%の仕事を入れると仕事が早くなる」という話をよく聞きます。
これは改善という自主性に任せるやり方ではなく、会社が強制的に背中を押して、仕事を早くやらざるを得ない状況にする方法です。
これはこれで、多くの会社で一定の成果を出せていますし、自主性を重んじるか、トップダウンで強制的にやらせるかの違いです。もう少し細かく見ていくと、「120%詰める方式」は、現場としては急きょ追い詰められる状況になるので、計画をもって新しい加工方法や金型仕様などに取り組むなど、大きな効果を狙う改革やプロジェクトには着手しにくい状況になります。
こうした点から私は、現場が能動的に計画を立て、プロジェクトとして改善や改革を進めていく方が、大きな成果を狙えると思っています。
必要なのは「目的を絞った」改善活動
その具体的な進め方として、漠然と「改善提案を提出しなさい」ではなく、目的を絞った改善活動をオススメしています。
「目的を絞る」とは、例えば次のようなことを言います。
- 毎日一つでも多くの部品が加工できるようにするための改善
- 一人でもその工程から人を減らせるようにするための改善
- 一つの部品・一つの金型を対象に、最短のリードタイムで作れるようにするための改善
この事例のうち、1.と3.は対照的な取り組みになります。
1.は、加工リードタイムを短縮しようとは思っていません(もちろん短縮しても構いませんが)。一個一個の加工時間は変わらなくても、機械の空いている時間を多能工化などによって今よりもっと活用できるようにするなど、要は日あたりもしくは週あたりの加工枚数が増えるようにする改善です。
3.は加工枚数にこだわるのではなく、あくまでの一つの部品、1つの金型の完成までの時間にこだわる改善です。
多くの会社では、こうした違いをごっちゃに混同して指示されていることが多いです。やはり会社の利益のための「改善の本来の目的」を現場に明確に伝えなくてはいけません。
ちなみに、2.の改善も「本来の目的」を考えると、色々な解釈が出てきます。
例えば、過去に私がコンサルした事例では、機械の生産スピードをあえて落とすようアドバイスしたことがあります。
その会社では、機械から加工された部品が次々と出てくるので、担当を二人一組の体制でないと間に合わないという状況がありました。
そこで機械の生産スピードをあえて落として後工程の生産に間に合うか試算したところ問題なかったので、生産スピードを落とし、1人で対応できる体制に変えてもらいました。
また、異動した一人の担当者は別の工程に行くことで、異動先の工程の生産性を高めることができました。
このように、「改善の本来の目的」が何なのかによって、会社によってありがたい改善とそうでない改善があるのです。
したがって、会社の利益にこだわるならば、明確に目的を絞った改善活動を行っていくべきではないでしょうか。ある意味、目的を外した改善は、残念ですがノーセンキューとなるわけです。
もうすでに、提案してくれるならどんなアイデアでもOK!という時代は終わっているかもしれません。
まとめ
最初のテーマにもどりますが、「安く作れ」というコストダウンへのアプローチについては、次のような2つの意味があります。
- 材料や工具等について購入費を減らす。例えば、交渉や相見積もりによって今より安く調達する・安価な部品を使う設計に変更する・加工方法を見直し工具消耗を減らす、など。
- 金型や部品加工の案件ごとにかかる工数を、今よりも少なく作業できる(早くやる)ようにする。
特に②の本来の目的は「今よりもっと多くの仕事を受けられるようにする」であり、そこで取り組む改善活動はきちんと「目的を絞って」行うということがポイントになります。
最後になりますが、「今よりもっと多くの仕事を受けられるようにする」、これをきちんと理解している現場と、理解していない現場では、そこで働く人たちの意識や雰囲気はかなり違うと感じます。
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コラム投稿者
金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
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