今年度は多能工ならぬマルチスキルに挑戦?(型技術2023年6月号掲載)

今年度は多能工ならぬマルチスキルに挑戦

今年度は多能工ならぬマルチスキルに挑戦?(型技術2023年6月号掲載)

金型メーカーや成形メーカー等でお仕事をされる方々におかれては、4月からの新年度は多能工ならぬマルチスキルに取り組んでみてはいかがだろうか。

「え、何が違うの、同じ意味じゃない?」と思われた方もいると思われるが、筆者はそれぞれ別の物として、普段のコンサルティングでとり扱っている。

本記事においては、どちらも筆者独自の解釈で扱っている。重要なのはその違いと、それを踏まえ、実務で何に取り組んでどのように成果を出していくかだと思うため、厳密な言葉の定義にはこだわっていない。その点をご理解いただければ幸いである。

さて、まず「多能工」とはどういうものかを考えると、実際に他の工程に入って作業できて、はじめて「多能工」と言えるのではないだろうか。例えば、自分の本業となる工程の仕事に加え、前後工程がオーバーフローしているときにヘルプに入るなど、実際に他工程の作業者に交じって作業をするといった、管理者(上司など)の許可や指示を受けたうえで取り組むことだと考えられる。

一方「マルチスキル」の方は、実際に他工程で作業に入る入らないということではなく、今目の前の自分の仕事において、他工程のスキルも使って作業をすることだと考えている。例えば、マシニングセンターの段取りが主業務だとしたら、時折、加工条件や加工軌跡を変更したいと思ったとき、自分で3次元CAD/CAMを操作して編集するとか、型組付けや保全担当者でありながら、3次元CADを使ってモデル編集を行い、金型意匠面の調整を行うことなどが考えられる。

このような「マルチスキル」を発揮することで、業務にどのような違いが出てくるか、筆者が実際に関わっている企業の事例で見てみたいと思う。

成形メーカーA社の金型部門の事例

こちらの金型部門では、設計から加工、組み立てまでの全工程にわたり、CAD/CAMはVISIシリーズを使っており、全ての作業者がVISI CAD/CAMを扱うことが出来ている。

そのためマシニングセンターの担当者は、別のCAMオペレーターが作ったNCプログラムに対し、仕掛ける前、加工条件や使用する工具など、何か自分の都合で変更したければ、自らVISI CAMを操作して変更し、加工後も寸法の追い込み等があれば、自分で必要部の加工データを作って仕掛けている。

またトライ担当者も自らVISI CADを操作でき、金型意匠面のモデリング編集も自分で行えるため、トライ後に意匠面を調整する必要があれば、自分でモデルに肉付けしたり、さらに自分でマシニングセンターを使った加工や放電加工をするなど、調整の追加工を行っている。

こうすることで、完全な分業体制をとる他社と比較すると、トライ工程から設計や加工部門へのフィードバック手続きの手間やタイムロスがなく、筆者から見てもかなり効率的なプロセスをとっている(変更後のモデル管理もしっかりと行っている)。

このようにマルチスキルは、「多能工」という定義とは違って、実際に他の工程の作業を手伝うかどうかということではなく、今行っている自分の作業に、他の工程の人が使っているスキルを活かしているということだと考えている。

そしてその効果はこの事例企業のとおりである。次は対照的に「マルチスキル」を持っていない人が多い事例企業を見ていきたいと思う。

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