CAD/CAMの買い替え稟議を上げるのは大変?―費用対効果の考え方(型技術2023年2月号掲載)

CAD/CAMの買い替え稟議を上げるのは大変?―費用対効果の考え方

CAD/CAMの買い替え稟議を上げるのは大変?―費用対効果の考え方(型技術2023年2月号掲載)

今回のテーマは、設計作業などで現在使っているCADよりも、より高機能で効率的に作業できるCADが見つかり、それを購入するための稟議書を上層部に提出する際に必要となる費用対効果の考え方についてである。

ここでよく問題となるのが、その数百万円する新たなCADを購入するにあたり、これが新規導入ではなく買い替えとなるため、今使っているCADよりもどれだけ作業時間が短縮され、その短縮がいくら分の金額効果になり、何年で元が取れるのか、そもそも元が取れるのか、購入する価値があるのか、という議論が沸き起こることである。

短縮効果だけで考えても辛い

筆者はコンサルタントとして、設計部門の改善改革をお手伝いすると、前述したような稟議の場面に立ち会うことが多いのだが、実際に稟議書を書く担当者は大変苦労されている。

最近の設計ソフトの進化はめざましく、たしかに支援機能がないCADから金型設計の支援機能が充実したCADに切り替えると、各段に作業効率は上がることがある。

実際に設計する作業者からすると、特にその効果は実感できる。

ところが、これを金額効果に置き換えると、「ん?・・・・こんなもんか?」と思うことがある。

例えば、ある金型の平均設計リードタイムが10日かかっているとして、それが新たなCADの導入により2日短縮できるとする。

1日8時間×2日=16時間、設計作業のチャージ金額を5千円として計算すると、一型あたりの導入効果は8万円となる。

一人が使う新しいCADの購入費用を500万円とすると、ざっと63型やらないと元が取れない計算になる。

この型数を多いととるか少ないととるかは会社ごとに異なると思われるが、多いのが「そんなにやらないと元が取れないんだ、じゃあ導入は無理だな」と考えてしまうことである。

買えたとしても、稟議を通すまでの説得に、とても長い日数がかかってしまうこともある。

では本当に、こうした設計ソフトの費用対効果は、削減工数をベースに考えるのが正しいのだろうか。実際にソフトを使う立場となる設計者が、実感として効果を感じるあの感覚は錯覚にすぎないのだろうか。

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