コストダウンへの2つのアプローチ―混同すると逆効果(型技術2022年8月号掲載)

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コストダウンへの2つのアプローチ―混同すると逆効果(型技術2022年8月号掲載)

金型メーカーや部品加工メーカーにおいて、提案制度などを設け、日々改善に取り組まれている企業は多い。

これはとても素晴らしいことだと思うが、なかなか利益で成果を出すことが難しく、経営が良くなった・部門利益が益々増えた、という話はなかなか聞くことができない。

今回はその実態、理由について触れていきたいと思う。

まず改善活動を積極的に実行している金型メーカーでは、前提として「できるだけ安く作るように」という指示がトップから出ていることが多い。

これはこれで必要なことであり、望ましいトップダウンからの指示だと思うが、この「安く作れ」には2つのアプローチがあり、多くの金型メーカーでこれを混同してしまっているという問題がある。

この「安く作れ」の2つのアプローチとは次の2つを指す。

  1. 材料や工具等について購入費を減らす。例えば、交渉や相見積もりによって今より安く購入する・安価な部品を使う設計に変更する・加工方法を見直し工具消耗を減らす、など。
  2. 金型や部品加工の案件ごとにかかる工数を、今よりも少なく作業できる(早くやる)ようにする。

このうち、①の購入費の削減は会社の利益を増やすことに直結する。コスト削減分は直接の利益となり、社員の皆さんの給料や福利厚生の原資になったり、会社にプールする資金となる。

一方、問題なのは②の工数削減の方である。こちらは扱い方を間違うと利益増加につながらないばかりか、逆に利益を減らすことになりかねない。

なぜそのような事態になってしまうのか。

実は5分や10分などの工数削減をしても、会社の利益にはつながらないことがある。

それはなぜか?

「工数削減」の本来の目的は「今よりもっと多くの仕事を受けられるようにする」ためだからである。

年々、金型や部品加工の単価は下がり、そのような中、工数削減した分は「仕事(金型や部品加工)を安く受けられる」根拠になる。

だがその浮いた分の時間に何か新しい仕事をとってきて、そこを埋めない限り、安く仕事を受けた分、会社の売上が減ることになってしまう。

したがって改善提案などで5分や10分、もっとそれ以上(1時間とか3時間など)の工数削減をしましたと報告が上がってきても、その浮いた時間について何もしなかったら、会社の利益に対しては何の効果も得られない(ただし削減した時間分の工具摩耗が減って工具費が削減したなどの効果は考えられる)。

理由は、作業者の皆さんのお給料が支払われることは変わらないためで、人件費は仮に売上ゼロでも発生する固定費であるため、何分・何時間、工数削減しようが変わることはない。

受注できた仕事を積み上げ、目標とする月または年間の目標売上額に到達するまでの仕事量を、現場が受け入れられるかがポイントである。「改善活動」はそのための余力を捻出するために行うのが本来の目的であり、現状の仕事を短い時間で行うことだけが目的ではない。

改善とは異なるアプローチで、「現場に120%の仕事を入れると手が早くなる」という話をよく聞く。

これは改善という自主性に任せるやり方ではなく、会社が強制的に背中を押し、仕事を早くやらざるを得ない状況にする方法と言える。

これはこれで多くの会社で一定の成果を出せており、自主性を重んじるかトップダウンで強制的にやらせるかの違いである。

少し細かく見ていくと、「120%詰める方式」は、現場としては急きょ追い詰められる状況になるため、計画をもって新しい加工方法や金型仕様などに取り組むなど、大きな効果を狙う改革やプロジェクトには着手しにくい状況になる。

こうした点から筆者は、現場が能動的に計画を立てて、プロジェクトとして改善や改革を進めていく方が、大きな成果を狙えると思っている。

必要なのは「目的を絞った」改善活動

金型メーカーにおける効果を出せる改善活動の進め方として、漠然と「改善提案を提出しなさい」ではなく、目的を絞った改善活動を推奨している。

「目的を絞る」とは、例えば次のようなことを言う。

  1. 毎日一つでも多くの部品が加工できるようにするための改善
  2. 一人でもその工程から人を減らせるようにするための改善
  3. 一つの部品・一つの金型を対象に、最短のリードタイムで作れるようにするための改善

この事例のうち、1.と3.は対照的な取り組みになる。

1.は、加工リードタイムを短縮しようとは思っていない(もちろん短縮しても構わないが)。一個一個の加工時間は変わらなくても、機械の空いている時間を多能工化などによって今よりもっと活用できるようにするなど、日あたりもしくは週あたりの加工枚数が増えるようにする改善である。

3.は加工枚数へのこだわりではなく、あくまでの一つの部品、1つの金型の完成までの時間(リードタイム)にこだわる改善である。

多くの会社では、こうした違いを明確にせず混同して指示されていることが多い。やはり会社利益のための「改善の本来の目的」を現場に明確に伝えるべきである。

なお、2.の改善も「本来の目的」を考えると、色々な解釈が出てくる。

例えば、過去に筆者がコンサルティングした事例では、機械の生産スピードをあえて落とすようアドバイスしたことがある。

その会社では、機械から加工された部品が次々と出てくるため、ある機械の担当を二人一組の体制でないと間に合わないという状況があった。

そこで機械の生産スピードをあえて落とし、後工程の生産に間に合うか試算したところ問題はなかったため、生産スピードを落として1人で対応できる体制に変えてもらった。

またその工程では不要になったもう一人の担当者は、別の工程に行くことで、異動先の工程の生産性を高めることができた。

このように「改善の本来の目的」が何なのかによって、会社によってありがたい改善とそうでない改善が出てくる。

したがって会社利益にこだわるならば、明確に目的を絞った改善活動を行っていくべきで、ある意味目的を外した改善は、残念ながら会社にとってはあまりありがたくない活動になり得る可能性がある。

もうすでに、「提案してくれるならどんなアイデアでもOK!」という時代は終わっているかもしれない。

まとめ

当初のテーマに戻るが、「安く作れ」というコストダウンへのアプローチについては、次の2つの意味がある。

  1. 材料や工具等について購入費を減らす。例えば、交渉や相見積もりによって今より安く調達する・安価な部品を使う設計に変更する・加工方法を見直し工具の消耗を減らすなど。
  2. 金型や部品加工の案件ごとにかかる工数を、今よりも少なく作業できる(早くやる)ように改善する。

②の本来の目的は「今よりもっと多くの仕事を受けられるようにする」であり、そこで取り組む改善活動はきちんと「目的を絞って」行うことがポイントになる。

目的を絞った改善活動の例として、マシニング加工現場において筆者のコンサルティングでは、日中昼間の有人加工と、夜間の無人運転による加工で、CAMから出力される加工条件を変えるようアドバイスしている。こうした取り組みも、とにかく安全に加工を完了したい無人運転と、トップスピードで加工したい有人加工とで目的が異なるため、目的を絞らないと真に求める成果を出すことが難しくなる。

最後になるが、「今よりもっと多くの仕事を受けられるようにする」、これをきちんと理解している現場と理解していない現場では、筆者が見る限りそこで働く方たちの意識や雰囲気はかなり違っている。

御社の現場はどうだろうか。ぜひ一度、確認してみてはいかがだろうか。

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金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054

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