儲かる日報とそうでない日報―1日の活用状況を知る(型技術2023年5月号掲載)

2つの日報のタイプについて
目次

儲かる日報とそうでない日報―1日の活用状況を知る(型技術2023年5月号掲載)

筆者はこれまで多くの金型メーカーや部品加工メーカーの現場を見てきたが、そこで使われている作業日報をまとめると、2種類のタイプがあり、また会社ごとの運用パターンには3種類あることがわかった。

さらにその日報のタイプにより、儲かっている会社が共通して採用している日報と、出来高が上がらない会社に共通している日報とに分かれることもわかった。

今回はその理由についても見ていきたいと思う。
まず2種類のタイプの日報とは、次のようなものになる。

  1. 個別の加工部品にそれぞれ添付して、その部品に何らかの作業が行われると、その作業した日付と共に、作業した担当者名と作業種類と、工数を記入又は追記していくもの。
  2. 各作業者が毎日、自分が作業した加工部品ごとに、作業種類と工数を記入し提出するもの。

この2種類にどのような違いが生まれるのか、具体的に見ていきたいと思う。

① 部品ごとに添付するタイプの作業日報の特徴

まずこのタイプの日報を付ける最大の目的は、営業担当者が見積もりを作る、その原価を知るためであろう。これに尽きると思われる。

この日報は「原価を知る」という目的に対しては、効率よく効果を発揮するが、経営管理層が知りたい作業者ごとの効率性などは埋もれてしまう傾向にある。

例えばある作業者が、Aという部品をマシニングセンターで加工していたとして、その日は仕事が薄いためこの部品しか仕事が無く、一日のうち2、3時間くらいしか加工に携わる作業が無かったとする。

この場合、この部品の図面に添付している作業日報には、2時間とか3時間などの工数が記入されるが、その他、この作業者が行っていたであろう、掃除や改善活動などの時間は、どこにも記録されないということになる。

そう、このタイプの日報は、最低限、部品や金型の原価が集計されるのが主旨であって、各作業者がその日他に何をやっていたかが分からなくなることが多い。

あまり考えたくはないが、性悪説に基づくと、様々なことが考えられる。

例えば、ちょっと失敗して余計な工数がかかってしまった時や、他に仕事が無いためいつもよりゆっくりと丁寧に作業をしたときなどに、図面に添付している日報に、本来かかった時間より短い時間で記入したとしても、それが露呈することはない。それで辻褄が合ってしまう。

ただし、後述する②のタイプの作業日報では、各作業者の一日のタイムカード時間と整合しなければいけないため、そういった不正をすると矛盾が出てくる。「この空いた時間、何してたの?」とか「こんなに時間かかってるけど、何かあったの?」といった具合である。詳しくはまた後述する。

このように、部品ごとに添付しているタイプの日報は、あくまで営業が知りたい情報が収集されるのであって、経営者が知りたい「各作業者が1日を有効に活用していたか」という情報はうまく収集されない。

したがって筆者がこれまで見てきた中では、出来高が上がらない・作業者がついのんびり作業してしまう、などと相談を受けた会社に共通している日報がこれであった。

逆に生産性が上がっている・作業者がキビキビ作業している、という会社に共通しているのが、次の②のタイプの日報である。

② 毎日各作業者が一枚提出するタイプの日報の特徴

これは前述したように、毎日各作業者が提出するタイプのものである。簡略して表現したものが下図である(本来はもっと多くの項目がある)。

毎日各作業者が一枚提出するタイプの日報の事例

ポイントは、日報に記載したその日の作業工数の合計が、作業者のその日のタイムカード時間と同じにならなければいけないことである。

これにより、マシニングセンターやボール盤作業などの実務時間と、仕事がないときに行っていた掃除や改善などの非実務作業時間が浮き彫りになる。

また、営業担当者が知りたい原価については、EXCELや生産管理ソフトなどを使って、部品や金型ごとに集計すれば、①のタイプの日報と同じ用途は果たす。

ただし運用については、漠然とこの日報をつけていれば良いというものではなく、上司や管理部門がきちんとフォローする必要がある。

例えば、ある日の加工について「ちょっと時間がかかり過ぎてないか?」と確認することが必要である。

作業者心理として、仕事が無いため仕方なくブラブラしていたり、掃除の時間が多かったりすると、実作業をやっていない印象がついてしまうため、マシニングセンターの作業やハンドワーク作業の時間に潜り込ませたりといったことが起こりがちである(もちろん全員ではないが)。

それを抑制する管理として、きちんと実作業である加工時間が妥当かどうか、作業者の記憶があるうち(翌日など)に確認することが望ましいということである。

これらをまとめると、
(ア) 加工時間など実務作業時間は、上司や管理者が妥当性を確認する
(イ) 掃除など非実務作業時間が多過ぎていないか、経営管理者が確認する

この2つのステップを踏むことによって、特に①のタイプの日報では見えてこなかった、作業者が「1日を有効に活用していたか」を知ることができる。

実際の運用状況

筆者がこれまで見てきた中では、上記を踏まえ3種類の運用パターンが使われていた。それは次のとおりである。

(A)①のタイプの日報のみで作業集計している会社
(B)②のタイプの日報のみで作業集計している会社
(C)①と②、両方のタイプの日報で作業集計している会社

前述したように作業者がキビキビ動いていたのは、(B)のパターンの会社であった。もちろんこちらも前述したように、上司や管理者などによる妥当性確認がきちんと機能しているという前提があってのことである。

また非常に数は少なったが(C)のパターンをとる会社もあった。だがこのパターンの会社では、作業者の日報記入がかなり負担になっていた。

そもそもの目的(原価集計?経営管理?)のために、日報記入が実務作業時間を圧迫するようでは本末転倒とも言える。

したがって筆者がオススメするのは、作業者の負担にも配慮した(B)の②のタイプの日報のみで作業集計することであるが、すでに運用されている日報のタイプを変更していくことは容易ではない。

したがって、自社が採用している日報のタイプが、経営者や管理者の皆さんにとって目的に叶っているかどうか、まずは検証してみてはいかがだろうか。

また、今回望ましくない例として紹介した①のタイプの日報で運営している金型メーカーや部品加工メーカーにおかれては、例えば今回をきっかけに、②のタイプの日報のような非稼働時間の内訳まで集計できる原価集計ソフトなどの導入を検討してみてはいかがだろうか。

参考になれば幸いである。

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金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054

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