「環境」と「遊び」が応用力・創造力を育てる―効率化追求の副作用(型技術2023年4月号掲載)

「環境」と「遊び」が応用力・創造力を育てる―効率化追求の副作用(型技術2023年4月号掲載)

今回のテーマは、これも筆者の事務所に相談が多い、柔軟な応用力・創造力を持った設計者や加工者がなかなか育たないといった問題についてである。

この点については、20年以上前に自分が経験してきた状況と、日々のコンサルティングの中で、多くの金型メーカーや部品加工業の皆さまとの現状を比べると、「なるほど」と思うところが多くある。

やはり徹底した効率化を目指すと、なかなか柔軟性が育ちにくいといった副作用があると考えられる。

例えば、昨今CAMとマシニングセンターなどの段取り作業は分業化されていることが多く、単純なポケット形状や、直線的な逃がし形状などについても、CAM担当者から機械オペレーターへNCデータや段取り書と工具一覧表が提供されることが主流である。

だがこういったシンプルな形状の加工などを利用して、柔軟な応用力を伸ばしてあげる発想も大事かと思われる。

例えば、マシニングセンターのオペレーターが、手動ボタンとドライランなどを使って、自分で工具と条件を選んで加工してみるといったことが考えられる。

「おー、CAMでやると慎重な条件になってるけども、結構条件上がるなぁ」とか、「切り込み量はこっちにした方が早く削れるなぁ」など、自分で発見することも出てくる。

このような話をすると出てくるのが、「いや、そんなに自由にやらせると機械をぶつけたり、ポカミス連発して材料オシャカにするのがどんどん出てきてしまう」といった意見で、たしかにそのとおりなところもある。

環境を意識する

私は、人がどう育つかは「環境」によると思っていて、昔の子供と現代の子供に違いがあり、成人して大人になったときの感性に違いがあるのは、皆さん感じているのではないでしょうか。

多少のケガをするのは承知で公園や運動場で自由に遊ばせるのか、ケガしてばい菌でも入ったら危ないので家の中でゲームや勉強をさせておくのが安全なのか、それは親の判断一つである。

ただやはり、徹底した効率化を追求していくと、柔軟性を持った加工者がなかなか育っていかないといった弊害は出てくると思われる。

一方、CAM側から見ると、CAMで作った加工データは、機械の無人手放し運転を基本としており、加工がはじまったマシニングセンターに、オーバーライドのダイヤルを機械オペレーターが常に握ったまま、加工中ずっと監視しているというスタンスは取らず、サイクルスタートボタンを押したら、次の段取りのために操作盤の前から離れることを想定している。

そうなると、やはり安全重視の条件になるのは自然なことであり、あまり「攻めた」条件は使われない傾向になるのはやむを得ない部分がある。

よく加工中にビビリが出てきたとか異音がしたなどの異常が起きた場面に、オーバーライドを調整したり、切り込み量を変えてみたりと、色々と条件を変化させる必要に迫られるが、「応用力を育成する」観点からはむしろ、シンプルな形状の時や複雑でもなく深くもない普通の加工の時こそ、色々と条件を変えてみて、肌感覚を身に付けるべきかと思う。

そうした経験を、有事の際(トラブルの予防処置や、いざ発生した際)に、自分の引き出しとして使うのが自然だと思われるがどうだろうか。

2つの要因

まとめると、柔軟な応用力・創造力を持った設計者や加工者が育つ要因としては、

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