無料診断サービス編(10)(型技術2020年9月号掲載)

目次

無料診断サービス編⑩

今月も引き続き、筆者が金型メーカー向けに行っている無料診断サービスの内容について解説する。無料診断サービスは金型メーカーで行われる作業工程の流れに合わせ、下記の項目に分けて行っている。前号から引き続いて、会社全般としての管理項目の診断内容を解説する。

  1. 設計工程
  2. CAM工程
  3. マシニング加工工程
  4. 機械加工全般
  5. 組み立て工程
  6. トライ工程(主にプラスチック金型)
  7. 原価管理
  8. 会社全般
  9. 購買
  10. 5Sの状況(効率性の観点で)

会社全般としての管理項目(続き)

工場長や部長が扱うべき管理指標

前号で扱った班長・主任向けの内容から飛躍し、工場長や部長など工場全体を管理する立場の方が、日々の管理の成果を見える化するための「管理指標」にはどのようなものがあるのかを解説する。

筆者のコンサルティングでは、次の管理指標を使った見える化を推奨している。

(1) 労働分配率(社員の人数と付加価値とのバランスを見える化)
(2) 社員一人あたり付加価値額(付加価値のボリュームを見える化)
(3) 時間あたりの付加価値額(労働時間が適正かどうかを見える化)
(4) 損益分岐点の確認(設備投資が適正かどうかを見える化)

(1)労働分配率

まず最も基本となる管理指標は「労働分配率」である。
この指標により、社員の人数と現場の生産・加工から生まれる付加価値額とのバランスを見える化することができる。

計算式は、下図のようになる。

労働分配率の計算式
労働分配率の計算

この計算式により、製造部門であげた付加価値額、これは粗利益と言い換えても構わないが、その付加価値額と人件費のバランスを見ることができる。

一般的には、次のような目安となる。
40%以内:良好
50%以上:黄色信号
60%以上:赤信号

製造部門を任される、工場長・部長・課長としては、この労働分配率が40%以内に収まるよう、さまざまな管理の取り組みを行うというわけである。

また黄色信号であったり、赤信号のパーセント数値になった場合には、それを引き下げる取り組みを行っていかなければならない。

その取り組む内容については、計算式の内訳を見るとよくわかる。

まず分子の「総人件費」については、できる限り必要人数以上に増やさないことで、パーセント数値を低く抑えることができる。

次に分母の「付加価値額」については、できるだけ増やしていくことで、パーセント数値は下がる。

具体的に付加価値額の計算は、売上-購入費-外注費ということで、売上額から、社外に支払う「購入費」や「外注費」を差し引いた、社内に残る利益額を表している。

したがって、製造部門による努力、例えば稼働率を上げて手離れ良く仕事を行い、作った余力時間にさらに受注を増やしていくことで売上額が増え、付加価値額のアップに貢献していくことができる。

また、あい見積もりをとって材料や市販品を安く購入したり、できるだけ機能を満たせる安い部品を使ったり、リーズナブルな工具を使ったりすることで、さまざまな購入費を抑えれば、付加価値額を増やすことにつながる。

さらにできる限り内製化を行い、外注費を抑えることができれば、これも付加価値額のアップにつながる。

「労働分配率」は、こうしたさまざまな製造部門の取り組みによって、見える化される指標であるため、総合的な製造部門の管理指標として推奨している。

(2)社員一人あたりの付加価値額

次の見える化指標は「社員一人あたり付加価値額」である。

労働分配率は万能的な指標であるため、これだけでも毎月の管理の見える化は可能であるが、あくまでパーセント数値なので、絶対値としてのボリューム感がわかりづらい。

そこで具体的に製造部門で生まれた付加価値を金額として表し、さらにそれを生産性、すなわちいかに投入資源を少なくし効率よく生産できたかを表す指標として、「社員一人あたり付加価値額」を使う。

計算式は、下図のようになる。

社員一人あたりの付加価値額
社員一人あたりの付加価値額の計算

この計算式により、投入量(インプット)としての従業員一人あたりに、アウトプットとしてどれだけの付加価値額をあげることができたかがわかる。

付加価値額の計算式は、先ほどの労働分配率と同じで、売上額から社外に支払う「購入費」や「外注費」を差し引いた、社内に残る利益額を表している。

多く付加価値額をあげることができれば、社員一人一人の働きがよかったこと、管理者としての仕事の割り振りや設備の利用効率が良かったなどが考えられる。

逆に付加価値額が少なければ、人数のわりに生産できた量が少なかったことが考えられ、人数に見合った仕事量を入れるか、非正規社員の人数を見直す・他部署へ異動させるなどの取り組みを考えなければいけなくなる。

なお、目標とする月次の付加価値額は、業界・業種で異なるため、自社にあった目標値を設定することが必要となる。

(3)時間あたりの付加価値額

次は「時間あたりの付加価値額」である。計算式は下図のようになる。

時間あたりの付加価値額の計算式
時間あたりの付加価値額の計算

本来この指標は、時間あたりの生産性を見える化することで、付加価値を生む「速度」を見るための指標である。この指標を使うことで、「(2)社員一人あたりの付加価値額」では見えてこなかった過度な残業依存になっていないかを見ることができる。

「(2)社員一人あたりの付加価値額」は、従業員数から割り出した1人あたりの計算であるため、仮に毎月一定目標の付加価値額を維持できていたとしても、従業員一人ひとりが実は過度な残業によって達成されていたという事実があったとしてもこの指標からは見えてこない。

例えば、(2)の「社員一人あたりの付加価値額」は目標達成していたとしても、過度な残業が行われていれば、③の「時間あたりの付加価値額」は下がってくる。

一見同じような計算をしているようでも、この「(3)時間あたりの付加価値額」を使うことで、時間あたりの出来高を見ることができ、効率良くモノづくりができているかを確認することができる。

(4)損益分岐点の確認

最後は「損益分岐点」の確認である。

この指標を使うことで、人件費や工場家賃など、仮に売上ゼロでも発生する固定的な費用(これを「固定費」と言う)を、いくらの粗利益(この指標では「限界利益」と言います)で乗り越えることができるかを見える化することができる。

ここでこの指標を使うことの意義は、これまで出てきた指標では見ることができなかった「設備投資が過剰になっていないか?」を確認するためである。

設備投資を行うと年間の機械償却費が増え、これは仮に売上ゼロだったとしても毎年発生する固定費にあたるため、黒字を達成するまでの損益分岐点が上がってしまう。

したがって現場の効率化のために設備を増やす・最新設備を導入する、ということは大いにメリットがあるのだが、得られる利益とのバランスを見ておかないと、自社や事業部門のビジネスとしては成り立たなくなってしまう。

現場作業者からは「機械が足りない」「設備が古くてスピードが遅い」などの不満は日常的に出てくるが、工場長・部長という立場からは、この損益分岐点を常に意識しながら、企業の最大の命題である「利益をあげること・増やすこと」のハードルが高くなり過ぎないかに常に配慮しながら設備投資を考える必要がある。

以上、ここまでが工場長や部長など工場全体を管理する立場の方向けの見える化の管理指標である。

次回は無料診断サービス編の最後、5Sについての診断事例を紹介する。

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コラム投稿者

金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054

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