無料診断サービス編②
前号から私が金型メーカー向けに行っている無料診断サービスの概要について紹介している。無料診断サービスは下記のような工程・項目に分けて行っており、本稿では引き続き、設計の項目の続きから見ていこうと思う。
- 設計工程
- CAM工程
- マシニング加工工程
- 機械加工全般
- 組み立て工程
- トライ工程(主にプラスチック金型)
- 原価管理
- 会社全般
- 購買
- 5Sの状況(効率性の観点で)
設計工程(続き)
組み立てや保全に配慮した設計になっているか
これは組み立て工程や金型メンテナンスを行う保全担当者向けに、使用するキャップボルトやノックピンのサイズなどを、可能な限り統一することができているかというチェックである。
入れ子やパンチなどの外形サイズでどうしても制限される場合は別だが、例えばノックピンの径や長さの種類がいくつもあると、それだけで準備に手間がかかったり、間違わないよう確認しながら組付けるため工数が余分にかかる。
可能な限り、金型内の締結部品のサイズを統一することで、組み立てやメンテナンス時のバラシ作業も効率的になる。加えてマシニング加工で使用するドリルやタップ、リーマなどの工具種類も減らしていくことにつながる。
こうした配慮が行き届いているメーカーは、外注設計に渡す設計標準書にも、きちんとその点が明記されている。
過去のトラブルの蓄積管理と、フィードバックがされる仕組みがとれているか
金型メーカーにおける過去トラブルについては、①トライ段階で認識される成形加工上のトラブル、②金型加工上で起こる工程内不良といった、主に2段階のトラブルがある。
いずれにおいても、新規の金型を設計する際やリピート型・更新型を設計する際にも、過去に発生した諸問題を対策するための処置を盛り込んでいく必要がある。
そのために設計や加工、組み立て、トライなどの各工程間を横断して、情報をフィードバックできる仕組みが社内に整っていることが必要となる。
また、設計の途中や担当者による設計完了後に適宜デザインレビューを行い、過去トラブル対策がきちんと盛り込まれていることを確認できる仕組みも整っている必要がある。
トラブル対策は、a)個別製品ごとに対策する処置と、b)トラブルの原因をカテゴリー別に分け、複数の金型で共通的な対策を設計段階から盛り込んでいく「標準化」を行うというパターンに分かれる。
この標準化はいずれ社内の「設計規格」として文書化していくことになり、金型メーカーに外注する際に使う「金型仕様書」として活用することもできる。
無料診断の際には、ア)過去トラブルからカテゴリー別に標準化した対策を盛り込んだ自社の「設計規格」まで作りこむことができているか、イ)過去トラブルの資料・登録検索できるデータベースなどが整備されているかなどをチェックしている。
これまで後工程で見つかってきた過去トラブルは、設計者が複数人いる場合ではこれを共有化するべきであり、例えばリピート設計の際に設計者が変わったからといって過去トラブルの対策が盛り込まれなかったということがあってはならない。
そのため過去トラブルの情報は、EXCELなどによる個人管理よりもデータベースソフトなどで共有管理できる方が、企業としての管理レベルは高いと考えられる。
更新型などの再利用データの適切な管理、フィードバックの仕組みはあるか
こちらもデータベースソフトなどによる管理ができているかというチェックになる。
金型メーカーへは毎回全くの新規の製品の金型製作が依頼されるわけではなく、過去の類似形状やダイカスト金型では同じ製品での更新型などがある。
そうした際に、過去に設計した図面やモデルを編集し、過去トラブル対策を盛り込んだり、微妙に意匠面形状を変更する場合などにおいて、速やかに間違いなく過去の設計データを検索し、CADにファイルを呼び出すことができる仕組みができているかをチェックしている。
またその再利用設計を行う際に、加工現場や組み立て現場で発生した問題点などの対策処置を漏れなくフィードバックして、設計に盛り込む仕組みが社内にできているかもチェックしている。
2 次元設計、3 次元設計それぞれに適した最善の業務手順になっているか
金型メーカーにおける設計作業は、2次元設計で行うメーカー、3次元で設計するメーカーなど様々である。


筆者はどちらの設計についても実務経験があるが、単純に組図までの設計リードタイムについては、2次元設計の方がかなり早いと考えている。
しかし3次元設計では、干渉ミスの発見やモデリング完了後に速やかに部品加工に入れるなど、2次元設計で実現できない様々な長所を持っている。
したがってそれぞれの設計方法においてどちらが優れているという視点ではなく、それぞれ最大限可能な有効活用の方法がとれているかという視点でチェックを行っている。
例えば3次元設計においては、タップやリーマなどの加工属性を設計モデルに付与し、後工程であるCAM工程で自動データ作成を行うことができるフィーチャー認識機能まで使えているかなどをチェックしている。
また2次元設計では、組図設計後に個々のプレート図を作らなくても、組図から一つひとつのプレートのCAMデータを作成できるソフトを活用するなどの効率化を図ることができているかなどをチェックしている。
解析ソフトは使っているか
すでに多くの金型メーカーで使われている解析ソフト(シミュレーションソフト)が活用できているかをチェックしている。
解析ソフトを活用することは金型製造において、従来手離れの悪い作業であったトライでの金型修正を、設計段階のCAD内でやってしまおうという取り組みになる。これはフロントローディングとも呼ばれる。
筆者はプレス金型でのトライ作業の実務も何年に渡って経験してきたが、従来の解析ソフトを使わないやり方は、フライスや研磨工具などを用いて徐々に製品寸法を追い込んでいくやり方であり、設計者も意図していない製品の曲がり方が発生したりすると、甚大な金型の修正工数がかかるといった非常に効率の悪いプロセスであった。
解析ソフトを使うことで、仮に100%の成形結果は得られないとしても、少なくとも問題の起こる傾向を読むことはできる。
これにより大がかりな金型の修正作業の発生確率は減らすことはできるため、無料診断の際にはまず解析ソフトを活用することができているかをチェックしている。
今回のまとめ
以上、無料診断サービスにおける設計工程のチェック項目を紹介した。
診断サービスの対象としている金型メーカーの種類は、筆者が現役時代に従事していたプレス金型メーカーに限定せず、射出成形や鍛造金型など、様々な金型メーカーを対象としているため、あまり細かな設計スキルの診断というよりも、管理レベルやいかなる設計手法においても最善の策がとれているかなどをチェックしている。
次回からはCAMやマシニング加工工程の診断項目を紹介していく。参考にしていただければ幸いである。
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金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
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