無料診断サービス編(4)(型技術2020年2月号掲載)

目次

無料診断サービス編④

今月も引き続き、筆者が金型メーカー向けに行っている無料診断サービスの内容について解説していく。無料診断サービスは金型メーカーで行われる作業工程の流れに合わせ、次の項目に分けて行っている。前回はCAM作業工程における診断内容を解説した。今回はその続きから見ていく。

  1. 設計工程
  2. CAM工程
  3. マシニング加工工程
  4. 機械加工全般
  5. 組み立て工程
  6. トライ工程(主にプラスチック金型)
  7. 原価管理
  8. 会社全般
  9. 購買
  10. 5Sの状況(効率性の観点で)

CAM工程の診断内容(続き)

3D 加工において、等高線と走査線加工で、加工条件を変えているか

ここで言う3D加工とは、CAMで点群データを計算しなければならない自由曲面を指しており、ボールエンドミルによる仕上げ加工を対象としている。

具体的には、3次元CAMで計算したNCデータで使われる等高線加工と走査線加工について、同じ工具であってもそれぞれの主軸回転速度(S値)と、送り速度(F値)を別々に使い分けているかという確認である。

そもそも等高線加工と走査線加工は、下図のように、加工する形状の傾斜部において、それぞれ得意とする角度エリアを加工するよう使い分けするべきで、一般的には30~40度あたりで分割されている。

等高線・走査線それぞれの加工エリア

最近のCAMは、等高線加工と走査線加工を一緒にした加工パターンも用意されており、そういった機能を使うと上記の使い分けは気にしなくてもよくなるが、原則は形状に応じてそれぞれを使い分けする。

加工するエリアを角度で分割した場合、下図のようにそれぞれの加工でワークに接触するボールエンドミルの箇所が異なってくる。

図2 それぞれの加工の接触点

図中におけるそれぞれの接触点は、等高線加工と走査線加工、それぞれの加工において、ボールエンドミルの最外周が接触する点を表しており、等高線加工であれば、90度の立ち壁が接触する点、走査線加工であれば、本例で最も角度が立っている30度の部位が接触する点になる。

主軸回転速さのS値の計算式である「S値=周速×1,000÷工具直径×π」によると、工具直径が小さいほどS値が大きくなり、図2の工具接触点を見ると、等高線加工よりも、走査線加工の方が小さい直径で接触するため、等高線加工よりも走査線加工の方が速いS値で加工できるということになる。

次に送り速度であるF値の計算式「F値=S値×1刃あたりの送り量×刃数」によると、S値が大きくなれば、比例してF値が上がり加工が早くなるため、緩い角度しか加工しない走査線加工については、接触する最外周の工具径でS値を計算し、速い送り速度で加工した方が効率が上がる。

そういった意味で最近のCAMを使い等高線加工と走査線加工が一緒になった加工設定ができる機能があったとしても、あえて別々に分け、走査線加工を速い送り速度で加工する意義はある。

腕の良いCAMオペレーターは、同じ工具を使っていても、パスの形状や今回のような工具の使われ方によってエンドミル条件を使い分けており、無料診断においては、工数を少しでも少なくできる加工条件を使っているかを確認している。

前号と本稿を合わせ、以上がCAM作業工程における主な診断内容である。もちろんこれ以外にも実地診断の中で思い当たることがあれば指摘させていただいている。

次は「マシニング加工」における診断項目を紹介していく。

マシニング加工工程の診断内容

適材適所の工具選定がされているか、最新の工具を使えているか

金型のマシニング加工は幅広く、2D・3D加工問わず、荒取りから仕上げ加工があり、また金型意匠面だけでなく構造部のプレート部品など加工内容は多岐に渡る。

それらの加工において適材適所で工具選定ができているかを診断させていただいている。

例えば、金型意匠面の3D加工の荒取り加工においては、高送りや肩削りカッターなど多くの種類のスローアウェイ工具が市販されているが、加工を診断させていただくと、垂直壁に適した工具、また傾斜面に適した工具など、それら工具の長所短所を把握したうえで使用しているとは言えない状況をよく見かける。

また工具の長所を把握したうえで、さらなる生産性向上を図るための最新工具の導入がなされているかという視点も重要で、無料診断ではこうした取り組みが行われているかを確認させていただいている。

精度に応じた作業手順がとれ、精度の不要な部品に過度な手間をかけていないか

この項目を加えている理由は、CAMとマシニング作業の分業化などが原因により、部品ごとの必要精度に応じた、加工工程・段取り手順の使い分けができていない現場をよく見かけるためである。

また多くの金型メーカーを診断する中で、ある共通した現象も確認している。

プレス金型・プラスチック金型・ダイカスト金型など、金型の種類を問わず、どの金型も2D加工、つまりプレート部品などの穴あけ加工やポケット加工など、3D加工以外の構造部の切削加工が多く存在する。

しかしながら、3D加工を主な用途として行うマシニングセンターには対話ソフトが付属されていない場合がある。

加工現場ではそういった2D加工も同じマシニングセンターで加工しなければならない場合があるが、対話ソフトのない機械では、ジョグ送りを使った手動加工もしくは、Gコードプログラムを手編集して対応するしかない。

または加工条件や座標位置を入力するだけで済むような、Gコードによるマクロプログラムを作って対応する方法も考えられる。

しかし、そういったスキルを持った機械オペレーターがいない加工現場では、例えば、たった2、3か所のキリ穴をあけるようなプレート加工においても、別のCAMオペレーターにより、加工プログラムと段取り図、条件表、工具一覧表などを作って提供してもらい、それを使ってマシニング加工を行う分業体制をとっている。

また、複雑ではなく単純な軌跡のエンドミル加工についても同様の手順をとっており、正面切削や段差の肩削りなど、一本線で済むような軌跡の加工でも、CAMでプログラムを提供してもらい加工している場合がある。

このような加工であれば、手動送りやジョグ送りを使った加工でも充分であり、またきれいな仕上がり面が必要ない加工であれば、ラフィングエンドミルを使えば何回もスライスせずに一回の切り込みで済むこともある。

したがって、簡単な加工にまでCAMデータを提供するプロセスは、ムダな間接コストがかかっていると言わざるを得ない。

特に設計に工数をかけて詳細な部品図を作成し、それを現場に渡しているにもかかわらず、別途CAMでデータを作成しているという金型メーカーについては、特にムダがあると感じる。

こうして余剰にかかった間接工数は、金型ごとの原価に現れてくる。無料診断においては、こうした余剰なコストが発生していないか確認させていただいている。

今回はここまでである。次回も引き続きマシニング加工の診断項目を紹介していく。

   

   

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コラム投稿者

金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
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