無料診断サービス編(6)(型技術2020年4月号掲載)

目次

無料診断サービス編 ⑥

今月も引き続き、筆者が金型メーカー向けに行っている無料診断サービスの内容について解説する。

無料診断サービスは金型メーカーで行われる作業工程の流れに合わせ、下記の項目に分けて行っている。前々号からマシニング加工工程における診断内容を解説している。本号も引き続きその内容から見ていく。

  1. 設計工程
  2. CAM工程
  3. マシニング加工工程
  4. 機械加工全般
  5. 組み立て工程
  6. トライ工程(主にプラスチック金型)
  7. 原価管理
  8. 会社全般
  9. 購買
  10. 5Sの状況(効率性の観点で)

マシニング加工工程の診断内容(続き)

機械やツールについて最低限のメンテナンスは行われているか

1. バイスの精度確認について

ある金型メーカーで実際にあった話である。

マシニングオペレーターの上司が、マシニング加工工程を紹介してくれた際、「うちのオペレーターは、極めて精密な部品を扱っているので倍以上の手間をかけて段取りをしています」と紹介してくれた。

そこでマシニングオペレーターが小物部品のワークをバイスにセットする際の一部始終を見ていたが、おかしなことに気づいた。

樹脂製ハンマーで、前後左右何度もワークを叩き、平行直角になるよう調整していたが、その中で下図に示すように、バイスの開閉方向にも叩いていることに気づいた。

図1 バイスの開閉方向に叩く間違った事例
バイスの開閉方向に叩く間違った事例

当然バイスの構造上、このような叩き方はあり得ない。なぜ、このように叩くのか質問したところ、これだけ多方向から時間をかけて叩かないと平行直角が出ないとのことだった。

こうなる場合、理由は次の2つである。

  • 元々のワークの6面フライスの状態が悪い
  • バイスの口金の直角精度が出ていない

ワークの6面フライスの状態を確認したところ問題はなかったため、バイスの口金をダイヤルゲージで測定したところ、バイスの口金及びパラレルブロックを置くバイスの底面も歪みが出ていた。

バイスの口金は研削加工で修正できるが、バイス底面は長く使っているうち、工具をぶつけるなどの事故により歪みが出てしまったと思われる。

このように、高精度な段取りをしているつもりが、そもそもツールや機械、冶具の状態が良くないということがある。

無料診断においては、こうした機械や治具などのメンテナンス状況まで確認を行っている。

2. テーブルの水平度の確認について

またこれも同様のケースであるが、ある金型メーカーにあった8番の立形マシニングセンターの加工精度が出ないとのことで、テーブル上面をダイヤルゲージで測定してもらったところ、最大で0.2ミリの歪みが出ていた。

機械のメンテナンス状況をヒアリングしたところ、水平器による機械の傾き確認は、10年以上やっていないとのことであった。

水平器により確認したところ、テーブルの平行度は大きく傾いていた。

マシニングセンターの水平確認については、年1回など定期的に、また地震の後は確認するなどの配慮が必要かと思われる。

無料診断では計画的なマシニングセンターの保全が行われているかを確認している。

3. 傷んだミーリングチャックやコレットを使っていないか

最後に、ミーリングチャックと振れ精度についてであるが、高精度なミーリングチャックについても、傷んだコレットを使っていたり、長年使用していると精度が悪くなってくる。

近年、機上でのレーザー計測による非接触で振れ精度を確認することもできるが、ダイヤルゲージを使って簡易的に振れを確認することもできる。

もし振れ精度が良くない状態で、工具径補正を使って高精度に追い込む・直角精度を出すなどの加工を行っても、なかなか精度が出せず加工時間も多くかかってしまう。

全てが新品のときには管理は少なくても済むかもしれないが、早送りでぶつけたことがあるなど、長くマシニングセンターを使っていると何らかの事故はつきもので、機械やツールの精度にも気を配らなければならなくなってくる。

無料診断においては、こうしたミーリングチャックなどのツールにも配慮が行き届いているかも確認している。

以上、ここまでがマシニング加工工程での診断項目である。引き続きここからは、組み立て工程における診断項目を見ていく。

組み立て工程の診断内容

3次元設計を行っている場合、組み立て作業者はビューワーもしくはCADを扱えているか

2次元設計を行っている金型メーカーでは、組み立て担当者に集まってきた部品を組み立てるための組み立て図や部品図などが渡される。

では3次元設計を行っている金型メーカーでも、同じように組み立て担当者のために、2次元の組み立て図面を作図し渡すべきか。

この点について金型メーカーでは、主に次の3つのうちいずれかの方法をとっている。

(a) 3次元設計データから三角法の2次元組み立て用図面を作図し、組み立て担当者に渡している。

(b) 組み立て図面は作成せず、組み立てや保全担当者は、3次元設計データをビューワーソフトで閲覧し、必要な寸法はそのビューワーソフトから確認している。

(c) 組み立て図面は作成せず、組み立てや保全担当者は、3次元CADからデータを閲覧し、必要があれば3次元設計モデルの編集まで行う。

まず(a)のやり方は、3次元設計を行っている多くの金型メーカーでとられている方法で、(b)や(c)の方法と比べると、2次元図面を作図する時間とコストが余分にかかる。

ただし最初から2次元設計する方法とは異なり、3次元モデルから自動で投影図を作成する機能を使ったりはするが、寸法は手作業で入れているケースが多い。

また、(b)の方法に比べると、(c)の方法は組み立てや保全の担当者に、3次元CADを扱うスキルが必要になるが、組み立て工程に入ってからは迅速な対応がとれ、またトライ後調整のための部品モデル修正の際、金型設計者に負担を強いることがない。

昨今、厳しくなった金型コストを考慮すると、3次元設計を行うメーカーとしては、最低限(b)の方法をとりたいところであるが、さらにリードタイムで他社よりも一歩先をいくためには、(c)の方法をとれる体制であることが望ましい。

実際に(c)の方法をとっている金型メーカーでは、設計→加工→組み立て→トライの工程において、2次元設計に比べると負担の重い3次元設計を行う設計者から少しでも余分な負担を取り除くことで、(a)や(b)の方法をとっている金型メーカーよりも設計工程のリードタイムは短くなっている。

また人事面でも、設計やCAMの担当者、工作機械オペレーターは、新しい機械やソフトウェア、それに付随する機能を習得するという負担が定期的に来るが、組み立てやトライの担当者は比較的少ない傾向にある。

会社で働くうえで新しい知識や技能を習得することは、その後慣れるまで一定の苦労と心的負担があり、この点については、ある程度公平性が必要だと思われる。

そうした意義も踏まえ、3次元設計を行う金型メーカーでは、さらなるペーパーレス体制をとるために、従来はデジタル機器には若干疎遠だった組み立てや保全担当者に、3次元ビューワーソフト、もしくは3次元CADの操作スキルを持ってもらうことは、今後ますます必要になってくると思われる。

3次元設計を行っている金型メーカーの無料診断においては、組み立てや保全担当者のCADやビューワーソフト対応スキルについても確認を行っている。

今回はここまで。次回は機械加工全般における日程管理の診断内容の解説から見ていく。

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コラム投稿者

金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
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