無料診断サービス編(8)(型技術2020年6月号掲載)

目次

無料診断サービス編⑧

今月も引き続き、筆者が金型メーカー向けに行っている無料診断サービスの内容について解説する。無料診断サービスは金型メーカーで行われる作業工程の流れに合わせ、下記の項目に分けて行っている。前号から原価管理における診断内容を解説している。本号も引き続きその内容から見ていく。

  1. 設計工程
  2. CAM工程
  3. マシニング加工工程
  4. 機械加工全般
  5. 組み立て工程
  6. トライ工程(主にプラスチック金型)
  7. 原価管理
  8. 会社全般
  9. 購買
  10. 5Sの状況(効率性の観点で)

原価管理についての診断内容(続き)

金型案件ごとに損益分析をしているか。工賃は実績チャージを評価しているか

金型案件ごとの採算性については、ほとんどの金型メーカーが何らかのデータベースソフトやEXCELなどによる「見える化」を行っているが、細かく診断させていただくと、構成部品ごとの原価まで細分化して確認ができるメーカーとそうでないメーカーに分かれていることがわかる。

特に工数の集計について、部品単位で行うとなると、前号で紹介した日報の記入方法から正しく細分化して行う必要があり、マシニングセンターや放電加工などの工数について、金型品番だけで区分して日報に記載していると、部品単位で原価を集計することができない。

金型ごとの原価集計は、材料費・市販部品などの購入品費・外注加工費・工賃などの費目があるが、このうち材料費・購入品費・外注加工費は、発注時に金型品番を紐づけできるため、金型案件ごとに原価を集計することは容易である。

工賃についても同様に、計算のベースとなる工数を金型ごとに紐づけする必要があり、その方法について最近では、IOTによる自動収集の方法も出てきてはいるが、どの金型の何の部品を加工したのかといった割り付けまで自動で行うことが難しいといった理由により、筆者が知る限り多くの金型メーカーでは日報による申告制で集計する方法が主流になっている。

またその日報についても、段取りと有人加工、夜間などの無人加工を分け、加工形態ごとに原価を算出できる仕組みを持つ金型メーカーもあれば、大雑把な集計に留まるメーカーもある。

どのようなシステムで集計するか様々な方法があるが、厳しい赤字受注となったり、予定していた粗利益を得ることが出来なかった場合、また予定通りの粗利益を得られた金型案件であっても今後さらに利益アップを目指していくために、どこに改善の必要があるのか後できちんと分析できる仕組みが欲しい。

無料診断サービスにおいては、そういった仕組みが構築されているかを確認している。

またその改善の切り口の一つとして、金型ごとにかかった工賃について、「実績のチャージ」をきちんと評価しているか確認している。

実績のチャージとは、見積もり時に設定していた工賃を実際にかかった工数で除算したもので、計算式は「工賃÷実際にかかった工数」となる。

もし実績のチャージが、総人件費や減価償却費から算出した時間あたりの原価を下回っていた場合、その金型案件は採算割れということになる。

金型の見積もりにおける工賃分の見積もり時に使った時間あたりの単価(例えば5千円など)を、実績のチャージが超えていることが理想であり、その場合は見積もりした工数よりも早く加工が終わったことになる。これが加工担当者や加工部門の評価になる。

例えば、マシニング加工が10時間かかると想定した仕事を、時間単価5千円で見積もりし、5万円の工賃で受注した仕事が、実際には15時間かかってしまった場合、実績のチャージは「工賃÷実際にかかった工数」として約3,333円となる。

逆に7時間で終わらせることができた場合、実績のチャージは約7,142円となり、見積もり時の時間単価5千円よりも大きく上回ったため、年間目標売上の達成に貢献したことになる。

利益管理をしっかりと行っている金型メーカーは、この実績のチャージの評価を必ず行っている。

無料診断サービスでは、こうした採算性評価を綿密に行い、それを改善や企業利益向上に役立てることができているかの確認を行っている。

以上、ここまでが原価管理の診断項目である。引き続きここからは、会社全般としての管理項目を見ていく。

会社全般としての管理項目

次は工程ごとの特定部署の診断項目ではなく、会社全般としてあるべき管理がしっかりと整備されているか、またその進捗が適切に管理されているかの診断項目を紹介する。

中長期的な教育の仕組みはあるか

金型製作や機械加工の仕事が難しいという理由として、必要となる知識と技能をまず身に付けなくてはそもそも仕事自体ができないということがある。

金型製作や機械加工は応用力をいかにうまく育てていくかが重要であり、これが手順書・マニュアルなど定形的で決まった作業を行う業務形態の現場とは違うところである。

そのため未経験の社員を採用した場合は、一人工の戦力となるまでの教育期間はそれなりに時間がかかるもので、OJTとOFF-JTを組み合わせた教育を行うなど、計画的に社員教育を行う必要がある。

また社員一人ひとりが現状の自分の力量を定量的に知る必要があり、それを見える化したスキルマップもあるべきで、それを教育の進捗管理に使う必要がある(図1)。

ところが筆者が金型メーカーを診断させていただくと、多くのメーカーでは「本業が忙しい」「教えるベテランがいなくなった」「管理職はものづくりの経験がなく、現場社員の知識と技能を評価できないためスキルマップがつくれない」と言った理由からしかるべき教育体制がつくられていないことが多い。

無料診断サービスでは、こうした教育体制の現状について確認を行っている。

管理者ごとに役割と責任は設定できているか

この診断項目では管理者の階層ごとに役割と責任が設定されているか確認をしている。まず本号では加工現場でプレーイングマネージャーとして働く班長や主任がしかるべき役割と責任を担うことができているかの確認項目を紹介する。

加工現場で仕事をする班長や主任については、次のような役割を担うことが望ましいと考えている。

(1)管理対象となる機械は全て扱えることが望ましい
(2)常に最善の状態で扱えるよう機械の保守点検をルール化する
(3)最善のリードタイムで仕事ができるよう差し立てを行う
(4)自分が最も得意とする機械については模範オペレーターになる
(5)自社にある最も高度な最先端設備については自主的に担当する
(6)最善な5Sの状態を維持する
(7)部下のトラブルに対応する

全てを完璧にこなすというのは珍しいかもしれないが、どれも必要な項目だと考えている。次号でこの7項目について一つずつ具体的に解説する。

また、さらに上位の管理職として、工場長や部長などが扱うべき日々の管理の成果を見える化する「管理指標」には次の4つがある。

(ア)労働分配率
(イ)社員一人あたりの付加価値額
(ウ)時間あたりの付加価値額
(エ)損益分岐点の確認

こちらも次号で詳しく解説する。

今回はここまで。次回は引き続き、会社全般としての管理面として、多能工化や改善活動への取り組みができているかなどの診断内容も合わせて解説する。

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コラム投稿者

金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
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