ミドルマネジメント層へ向けた人材育成セミナー内容のご紹介①(型技術2021年3月号掲載)

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ミドルマネジメント層へ向けた人材育成セミナー内容のご紹介①(型技術2021年3月号掲載)

本号では、昨年12/1に筆者が講師として福岡県金型研究会でのセミナーでお話した内容を紹介したい。

テーマは、「コロナ渦の今、ミドルマネジメント層へ向けた人材育成」ということで、経営者と現場担当者との間に立つ、日々の生産活動にも気を配りながら、経営面にも配慮しなければならない、一般的に部長や課長といった立場の方向けの内容である。

図1 セミナーのコンセプト

少し福岡県金型研究会に触れさせていただくと、福岡県工業技術センターが幹事を務めており、昭和60年に発足し、これまで基礎・中級教育や技術セミナー、工場見学会などの様々な活動を30年以上に渡り継続しているとのことである。

30年以上というと、社会情勢の面で色々な出来事があったが、金型技術向上のために継続して活動されてきたことは本当に素晴らしいと思う。

そのような中、福岡県工業技術センターは技術面での企業支援が専門であるため、金型製造を前提とした経営管理についてはこれまで支援内容として扱ったことがなかった。
そこで筆者に声をかけていただき、今回のセミナー開催に至ったというわけである。

さて、セミナーの対象となるミドルマネジメント人材の仕事としては、特にロアーマネジメントとの違いとして、より経営的な視点を持たなければならない点で、見ている視野に違いがある。

図2 階層ごとの視野の例

そこでセミナーの具体的な内容であるが、メインテーマとして本誌2020年9月号の無料診断サービス編⑩で解説した「工場長や部長が扱うべき管理指標」に沿う内容とした。

そのときの記事では管理指標の種類と改善方法について解説したが、今回は事例を使った指標の使い方などを話したので、その点を中心に解説していこうと思う。

改めてミドルマネジメント層が管理するべき指標を挙げると、次の4つになる。
(1) 労働分配率、(2) 社員一人あたり付加価値額、(3) 時間あたりの付加価値額、(4) 損益分岐点の確認

(1)労働分配率における事例解説

 まず最も基本となる管理指標は「労働分配率」である。この指標により社員の人数と現場の生産・加工から生まれる付加価値額とのバランスを見える化することができる。

計算式は、総人件費÷付加価値額(売上-購入費-外注費)となり、一般的には40%以内であれば良好、50%以上になると黄色信号、60%以上で赤信号の状態となる。

ミドルマネジメント人材としては、この労働分配率が40%前後に収まるよう取り組みを行うことになる。例えば、稼働率を上げて作った余力時間に受注を取り込む、積極的な相見積もりにより購入費を抑える、さらなる内製化により外注費を抑えて付加価値額を増やす、などが考えられる。

ではここから、簡単な事例を使って労働分配率の改善について見ていこう。

売上高:4億円、材料費:1億円(25%)、外注費:1億円(25%)、人件費:1億円(25%)

とする。

この条件で計算すると次のようになる。

労働分配率=人件費1億円÷(売上4億円-材料費1億円-外注費1億円)=50%

計算結果は50%なので、黄色信号の状態と言える。

そこで外注費を減らす改善を行い、改めて以下の条件で計算してみる。

売上高:4億円、材料費:1億円(25%)、外注費:0.8億円(20%)、人件費:1億円(25%)

労働分配率=人件費1億円÷(売上4億円-材料費1億円-外注費0.8億円)=45%

結果は45%になったので、「良好」に近い状態になった。

この事例では労働分配率が良くない年度の結果を受け、翌年度の取り組みとして内製化を進め、社内で対応できる部品のオーバーフロー外注を減らすなどの取り組みを行い、付加価値額に含む外注費を減らすことで、労働分配率を改善した事例である。

内製化する具体的な取り組みについて、多能工化などが考えられるが、後述する指標での取り組みも含め、改めて次号で紹介したい。

(2)社員一人あたりの付加価値額での事例解説

 製造部門で生まれた付加価値を金額として表し、いかに少ない投入人員で効率よく生産できたかを表す指標として「社員一人あたり付加価値額」を使う。

計算式は、付加価値額(売上-購入費-外注費)÷従業員数となる。

この計算式により、投入量(インプット)としての従業員一人あたりに、アウトプットとしてどれだけの付加価値額をあげることができたかがわかる。一般的な金型メーカーの月次の目標額としては、70万円~90万円あたりが目安となる。

付加価値額を多くあげることができれば、管理者として仕事の割り振りや設備の利用効率が良かったなどが考えられ、逆に少なければ、人数に見合った仕事量を入れるか、非正規社員の人数を見直す・他部署へ異動させるなどの取り組みを考えなければいけない。

ではこちらも簡単な事例を使い、この指標の改善について見ていこう。

月次売上高:3,500万円、材料費:800万円、外注費:1,000万円、従業員数:25名

とし、この条件で計算してみる。

なお今回は年ベースではなく月次ベースとする。

社員一人あたり付加価値額=(3,500万-800万-1,000万)÷25名=68万円

計算結果は68万円なので、先ほど挙げた一般的な額よりも低くなった。

そこで、この事例でも外注費を減らす取り込みを行い、改めて以下の条件で計算してみる。

月次売上高:3,500万円、材料費:800万円、外注費:800万円、従業員数:25名

社員一人あたり付加価値額=(3,500万-800万-800万)÷25名=76万円

これにより結果は76万円になったので、一般的な額にすることができた。

こちらも先ほどの労働分配率での事例と同じく、内製化などにより外注費を減らす取り組みを行い、社員一人あたりの効率性を見える化した事例である。

(3)時間あたりの付加価値額での事例解説

計算式は、付加価値額(売上-購入費-外注費)÷従業員のタイムカード総時間数となる。

 「(2)社員一人あたりの付加価値額」は、従業員数から割り出した1人あたりの計算であり、毎月一定目標の付加価値額は達成できたとしても、実は過度な残業によって達成されていた場合などはその指標からは見えてこない。

(3)時間あたりの付加価値額」を使うことで、時間あたりの出来高を見ることができ、効率良くモノづくりができているかを見える化することができる。

こちらも簡単な事例を使い、時間あたりの付加価値額の改善について見ていく。

月次売上高:3,500万円、材料費:800万円、外注費:800万円、従業員数:25名、1日のタイムカード時間12時間

とし、この条件で計算してみる。

社員一人あたり付加価値額=(3,500万-800万-800万)÷(25名×12h×22日/月)= 2,878円/時間

計算結果である2,878円は、一般的な金型工賃の見積もりで用いる時間単価からすると低いと思われる。

そこで残業時間を減らす改善を行ったとして、改めて以下の条件で計算してみる。

月次売上高:3,500万円、材料費:800万円、外注費:800万円、従業員数:25名、1日のタイムカード時間8時間

社員一人あたり付加価値額=(3,500万-800万-800万)÷(25名×8h×22日/月)=  4,318円/時間

この事例では、改善前の過度な残業時間を改善したことで、一般的な工賃で用いられる時間単価にすることができた。

今回はここまでとさせていただき、次回は(4)の損益分岐点の確認についてと、具体的にどのような取り組みを行うことで各指標を改善するのかについて解説する。

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