ミドルマネジメント層へ向けた人材育成セミナー内容のご紹介⑥(型技術2021年10月号掲載)

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ミドルマネジメント層へ向けた人材育成セミナー内容のご紹介⑥(型技術2021年10月号掲載)

2021年3月号から、昨年12/1に筆者が講師として福岡県金型研究会で話した、部長や課長などのミドルマネジメント層向けセミナーの内容を紹介している。

今回も引き続き、どのような取り組みによって労働分配率を改善していくのか、その具体策について解説する。

CAM工程をボトルネック化させる他の事例

前号ではCAM工程がボトルネックになっている金型メーカーの事例と、その対策について書かせていただいたが、もう一つCAM工程をボトルネック化させてしまう他の事例も紹介したい。

前号で精度が必要ない穴加工は、簡単な加工図面だけハンドワーク部門に渡し、工数は多少増えてもCAM工程の手離れを良くするという対策をお話ししたが、多くの金型メーカーで、ハンドワーク加工に関係する、ある共通した問題がある。

プレス、プラスチック、ダイカスト金型など、金型種類を問わず、どの金型も2D加工、つまりプレート部品などの穴あけ加工やポケット加工など、3D加工以外の構造部の切削加工が多く存在する。

加工現場ではそういった2D加工も、3D加工で用いる同じマシニングセンター(以下、M/C)で加工しなければならないが、対話ソフトが装備されていないM/Cでは、ジョグ送りを使った手動加工や、Gコードプログラムを手編集して対応することになる。

しかしそういったスキルを持った機械オペレーターがいない加工現場では、例えば、たった2、3カ所のキリ穴をあけるようなプレート加工においても、別のCAMオペレーターにより、加工プログラムと段取り図、工具一覧表などを作ってもらい、それを使ってマシニング加工を行う分業体制をとっていることがある。

そもそも対話ソフトとは、M/Cの制御盤に添え付けられたCAMのようなソフトで、例えば、タップやリーマ穴などの加工において、センター穴・下穴加工・面取り・タップ(リーマ)などといった複数の工具を使う加工においても、「M10 タップ」など加工種類と座標位置を打ち込むだけで、簡単に一連の加工プログラムを作ることができる(Gコードプログラムを出力するものもある)。

しかしこの対話ソフトが装備されていないM/Cは、元々金型意匠面など倣い形状(3D形状)を高精度に切削するための機械というコンセプトであったとも考えられる。

話を本題に戻すと、複雑ではない単純なエンドミル加工についても同様に、プレートの厚みや段差の切削など、一本線で済むような軌跡の加工でも、別途CAMオペレーターにプログラムを提供してもらい、加工している場合がある。

このような加工であれば、手動送りやジョグ送りを使った操作の加工で充分と思われる。またきれいな仕上がり面が必要ない加工であれば、ラフィングエンドミルを使うことで、ある程度深さのある加工であっても、複数回の切り込みに分けて加工せずに、一回の切り込みで済ますこともできる。

したがって簡単な加工にまでCAMデータを提供するプロセスは、ムダな間接コストがかかっていると言わざるを得ず、CAM工程をさらにボトルネック化させてしまうことにつながる。

特に設計部門の方で工数をかけ部品図を作成し、それを現場に渡しているにもかかわらず、別途またCAMでデータ作成をしているという金型メーカーについては特にそう感じる(部品図を作成したのであれば、直接M/Cオペレーターに渡して加工した方が早いし、CAMオペレーターを経由するのであれば、ペーパーレスでCADデータから直接CAM作業に入る方がかかる工数は少ない)。

今回挙げた状況は、私がこれまで見てきた中では、特にプラスチック金型メーカーに多く見られた現象であった。もし思い当たるところがある金型メーカーがあれば、一度プロセスを検証されてみてはいかがだろうか。

前倒し生産で余力(隙間)を作り、受注を増やして売上・利益を増やす

労働分配率を改善するため、分母である付加価値額を増やす取り組みについて、本セミナーで解説した最後の内容となる、生産管理面からの考え方を紹介する。

まずはあるべき金型の日程管理のあり方について見ていくと、下図に示すように、金型製作は①大日程計画(金型ごとの管理)・②中日程計画(部品ごとの管理)・③小日程計画(工程ごとの管理)の3段階に分けて管理するのが望ましい。

図1 大日程計画の例
図1 大日程計画の例
図2 中日程計画の例
図2 中日程計画の例
図3 小日程計画の例
図3 小日程計画の例

しかし多くの金型メーカーでは、①大日程計画と②中日程計画は機能しているが、③の小日程計画がうまく機能していないことがある。

この③小日程計画において、できる限り隙間を作ることなく仕事を埋めていくことが付加価値額(受注量)を高めていくうえで重要なポイントになるということである。

具体的には、各部品について精度の高い工数見積もりを行い、小日程計画にできる限り隙間を作ることなく、仕事を埋めていき、積極的な前倒し生産を行う。

例えば7時間の仕事の後に、1か月先など納期に余裕のある仕事であっても、ちょうど隙間の時間に埋まれば、積極的に予定に入れていく。

このように1日の予定を隙間なく埋めれば、生産管理者としての私の経験上、例えば7時間で見積もった仕事は、現場担当者は6時間や6.5時間など予定よりも早い時間で終わらせてくれることが多い。予定が詰まっている方が、手が早くなるものである。

これは長期的な負荷の山崩しと言えるが、逆にこの山崩しをしないとどうなるか。

仕事の山谷が多いという特徴がある金型や部品加工の仕事の中で、“山”の状態にあたる短納期の仕事が多く詰まっている中に、またさらに仕事を詰め込まなくてはいけないといった、負荷の高い状態が慢性的になることで、納期遅れを出したり、オーバーフローによる外注策を取らざるを得ない状況になってしまう危険もある。

この局所的に負荷の高い状態をできる限り未然に防止していくことも、不要な外注費を減らすことにつながり、利益を増やしていくために重要な取り組みになる。

最後に(利益増加についての方針)

材料費や消耗品費、外注費などの費用を減らすと会社の利益は増える。ところが人件費と機械償却費は「固定費」であるため、現場改善しても基本的にこれらの費用は減らない。

しかし生産改善することで工数が下がり、その結果、型費に含む工賃が下がると、金型ごとの原価が下がることで価格競争に強くなる。また工数が減れば、その分「生産余力」が増えることで、受注できる金型面数が増え、売上をUPできる余地ができる。

材料費、購入品費、外注費を減らしていくことはもちろん重要で、これは利益UPに直結する。しかし皆さんのお給料である人件費はむしろ増えていってもらいたいし、最新機を導入することで効率化し、受注量を増やすことができれば、機械償却費が増えても損益分岐点のバランスは問題ないと思われる。

したがって費用を削るだけでなく、企業価値を継続的に増やしていくための理想としては、改善・効率化で生産の余力を作り、受注量を増やす、これがあるべき方針である。

金型メーカーや加工メーカーのミドルマネジメント層としては、コスト削減のみならず、売上・利益UPの方針で部下を動かしていくことが望ましい。

以上が、2020年12月に筆者が講師として福岡県金型研究会でお伝えした、部長や課長などミドルマネジメント層向けセミナーの内容である。

金型メーカーの皆さまの参考になれば幸いである。

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コラム投稿者

金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054

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