金型・部品加工メーカーにおける人事評価の最低限の評価項目とは(型技術2023年12月号掲載)
近年、働き方改革や人的資本経営など、人事に関する新しい施策や考え方が金型メーカーの業界にも少なからず影響を与えていると考えられ、より詳細な人事制度を社内に構築したいと考えるメーカーも多い。
しかし、中途採用が多いこの業界において、統一横断的な評価基準を機能させることは決して容易なことではない。
話し上手だが職人ではないマネージャー、無口でコミュニケーション能力は低いが腕はたつ職人タイプなど、様々なタイプの方が混在する金型メーカーにおける理想的な評価項目とは何か。今回はこのテーマについて考えていきたい。
当事務所が考える最低限の評価項目は次の3つである。
- 協力性
- 現在のスキル
- スキルUPへの取り組み状況
ここから順に、これら3つの意義を具体的に見ていきたい。
「協力性」の評価
なぜ最初にこの「協力性」が出てくるか、会社が儲けていくためには個々の社員の「協力」が欠かせないためである。
逆の見方をすると、この業界の現場でよく見られる望ましくない事例として、自分はスキルがある・知識がある・社歴が長いことなどを理由に、繁忙期でも積極的に業務に協力してくれない人がいる。
やはり「知っている・できる」だけでは意味がなく、会社はいかに売り上げを上げていくかが優先され、どれだけ売上や出来高に「協力」してくれたかが重要になる。
そうなると給料の決め手は、技量と成果、その両方となる。そのうち「成果」の方の評価としては、どれだけ売り上げを上げることができたか、そして「技量」を表すものとして、できる仕事の難易度である。
また、いくら出来高が評価の対象とは言え、簡単なプレートの穴あけのみをたくさんこなしただけではダメであり、難易度の高い仕事も含めた中で一定の出来高を正確にミスなくこなせたかどうかが評価に値する。
この原則的な考え方のうち、出来高をあげていくにはやはり個々の社員の「協力性」は欠かせない。
人をスキルや知識、資格だけで評価していると、会社の業績とは異なる方向で報酬を上げなければいけない場合も出てきて、会社に悪影響を及ぼすばかりか、他の社員のやる気を無くさせる一因にもなりかねない。
そこでこの業種の仕事をするうえで、どれだけ業務や改善などに協力してくれるかは、一番の評価ポイントになるというわけである。
ただし、この「協力性」を評価するにあたり注意することがある。ポイントは、「年度末や期末にまとめて」ではなく、こまめに点数評価をすることである。
その理由は、しばらく時間がたってどれだけ協力してくれたかを評価しようとしても、その評価者が細かな部下の貢献内容を忘れてしまうためだ。
したがって、1週間ごと、長くても1か月以内には、どれだけ業務や部署の改善プロジェクトに協力してくれたかを点数で評価するべきである(フィードバックも含め)。
さらに、年度末や期末に、それらこまめにつけてきた点数評価の平均をとる。この「平均」をとることも重要なポイントで、ある短い一定期間だけをがんばってくれたというよりも、一定してずっと協力し続けてくれることが重要である。
したがって、一年とか半年などの期間で「平均」をとり、安定的に協力をしてくれた場合こそ高い評価をするべきで、ある短期間だけがんばって、それ以降は息切れしてしまった場合などは平均値が下がり、上司としてはその是正を促すことができるというわけである。
もう一つ、その「協力」も上司の方針に沿っているかということも重要だ。
よく「私は私の方針で会社に貢献しています」と言われる社員さんもおられるが、それは厳しい言い方をすると、単なるわがままになってしまうかもしれない。
上司は上司で、自分の好きな方針で動いているわけではなく、経営層から伝え聞いている方針に沿って、部署の方針を決めている。
このように、会社組織は水がしたたり落ちるように、上層部から下部組織に向かって、同じ共通目的と方針で動いているため、末端の社員が、それにそぐわない方針で動いてしまうと、上司に課せられている期の目標を達成することに支障が出る。
したがって、前述した1週間ごとの「協力性」の評価は、あくまで上司の方針で動いてくれたかが重要になるわけである。
例えば、上司の方針が「加工現場の出来高を増やす」であった場合、きちんとその方針で色々と案を出して協力してくれればその部下である社員さんの評価は高くなるし、一方そうではなく、例えば「私は私で安い工具を探すなど行って会社に貢献してる」といったような、行動ベースでみると真逆の取り組み(会社は出来高を増やしたいのに、安ければ条件の遅い工具でも採用するなど)であったならば、その場合の点数は、残念ながら低い評価を付けざるを得ない。
そのため、やはり上司の方針に沿った「協力」であるかどうかは、とても重要なことなのである。
「現在のスキル」の評価
次に推奨する項目は、「現在のスキル」ということで、各作業者が今現在何がどれだけのことができるかを評価する。
これは1番目の評価項目である「協力性」を評価するうえで、そもそも一定のスキルがないと、会社や部署に協力しようにも協力するネタが欠乏してしまうところから来ている。
実際にはスキルマップなどを使って見える化するのが一般的である。
また私が推奨しているのは、1年後・3年後・5年後の見取り図を作ることである。これにより、明日から取り組む目標を短期と長期で見える化できる。
あくまでここでの評価項目としては、「現在」のスキルであるが、今後さらなる戦力になってもらうために、いつまでに何のスキルを得るのか・高めるのか、これを見える化することが重要だということだ。
「スキルUPへの取り組み状況」の評価
最後は、「スキルUPへの取り組み状況」の評価である。
これは2番目の項目で見える化した「現在のスキル」について、まずはこれから、例えば1年後までの見取り図をベースとして、何をどれだけできるようにするか、そこに向かって取り組んでいる状況を評価するものである。
ここでのポイントは、あくまで「行動」ベースで評価することだ。実際に何をやったか、である。
例えば、OFF-JTの講習を何コース受講したとか、社内で練習課題となる加工品を何回試作したか、などだ。
しかも「行動」ベースになるため、点数評価が可能になる。何回が目標であるうち、実際に何件実行できたかという点数だ。
「行動ベースで評価する」というのは、目標とするスキルに対して、すでに「やれる・知ってる」といった抽象的な結果を見るものではなく、何の研修課題を何件目標としているところ、実際に何件実行できたか、そこをドライに評価する。
まとめ
さて、いかがだっただろうか。
今回の3つの項目であれば、最低限、中途採用も多い金型メーカーにおいても、公平に皆さんの会社への貢献度を推し量ることができると思われる。
近年分業体制が当たり前の時代になっており、設計から加工、組立、トライといった各工程を一人で全部やるのはある程度の規模の会社であれば、ありえないと思われるため、それ相応のコミュニケーションは必要になってくる。
最初の項目の「協力性」はそれを含んだ意味での貢献度であり、必要以上にベタベタする必要はないが、会社や部署が本当に困っているときなどに、きちんと協力してみんなで帰れる、みんなで儲ける、を実践しているかどうかで充分だと思う。
だが、その「協力」をするにもやはり必要なのは「スキル」であり、さらに言えば、自分の担当工程とは別の工程にもサポートに入ろうと思えば、多能工になることも必要である。
したがって、そのために必要な「努力」を、時間を惜しまずやっているかどうかという意味で、3番目の項目「スキルUPへの取り組み状況」への評価が必要になり、特に多能工化を意識して取り組んでくれる人は人一倍高い評価を受けるべきであろう。
人事評価の基準は、透明性であるべきとよく言われるが、最低限今回の3つであれば、たしかに現場全員で共有し、取り組んでいきたいところだと思う。
御社の評価基準はいかがだろうか。機能しているであろうか。参考になれば幸いである。
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コラム投稿者
金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054