金型メーカーでの分業の意義―効果を見極めて実施を(型技術2022年9月号掲載)
本号では、昨今金型メーカーで主流になっている「分業」のあり方と意義について見ていく。
筆者が金型業界で仕事をはじめた30年前においては、設計と現場作業などである程度の分業の形はとられていたが、今ほど細かくは分けられていなかったと思われる。自分で機械加工した部品を自分で組み立て、自らトライを行うなど1人で複数工程を受け持っていたが、近年の金型製造では短納期化が進んだこともあり、一人が多工程を横断して受け持つことは少なくなった。
本号では設計と機械加工に分け、それぞれの分業のあり方について見ていく。まずはCAMと機械オペレーターの分業から見ていこう。
CAMと機械オペレーターを分業する真の目的
まずCAMと機械オペレーターを分業する目的であるが、やはり「出来るだけ機械を止めずに、次々とワークを仕掛けられるようにすること」、つまり機械の稼働率を最大化することである。
そのために、CAMオペレーターと機械オペレーターを分け、事前にCAMオペレーターがNCプログラムを先行して作り、理想として機械オペレーターは、マシニングセンターや放電加工機の加工を間髪空けずに仕掛けていくというわけである。
したがって多くの金型メーカーの機械加工の現場では、どっかと椅子に座って机に図面を広げ、機械は止めた状態で「さてこの加工はどうやろうかな?」と考え込む機械オペレーターは最近あまり見なくなった。
ところが、いまだにこの機械を止めて考え込んでいる加工者を見かけることがある。
8時から15時までのパート社員もCAMオペレーターとして作業している会社もある中で、少なくとも機械を止めたままじっと座って加工検討する仕事のやり方は、もうすでに時代遅れになっているかもしれない。
とは言えここでよく出てくる議論が、CAMオペレーターは加工の熟練者でないといけないのか、またはそうでなくても大丈夫なのかという意見である。
熟練者でないといけない理由は、例えばマシニングセンターであれば、熟練者でないとそもそもクランプ方法がわからないとか、ある程度深い加工だが表からで済むのか裏と表に分けて加工しなければいけないのか、薄物ワークでビビリ対策のため加工条件を変えなければいけないのか等、経験に基づく配慮や工夫をCAM操作に盛り込まなければならないため、というものである。
では、時短勤務のパート社員を活用している金型メーカーで作られるCAMデータは、そういった配慮がされていないのだろうか。
もちろんそうではないはずだ。だがこれまでやっていた加工そのままを、というわけにはいかない場合もある。
例えば、理想とするクランプ方法からは多少妥協することになるかもしれないが、多くの形状で共通できる治具やバイスを使用するとか、加工条件や工具も状況に応じて標準化しているはずである。
CAMの方でも一定のまとまった操作のテンプレートを作り、オペレーター間でバラツキが出ないよう標準化していると思われる。
これまでとは異なる仕事のやり方を採用しようとするときは、やはり何らかの創意と工夫は必要で、それを乗り越えた企業が、高い稼働率を手にすることが出来ている。
筆者もマシニングセンターや放電加工の作業を長年やってきた経験上、やはり事前に別の者がNCプログラムを準備してくれるならそれにこしたことはなく、次のサイクルスタートボタンを押すまでの機械の停止時間を短縮することに寄与することは間違いない。
さらに言えば、機械段取りもしつつ自分でCAMデータも作らなくてはいけない場合、図形を第3者に書いておいてもらうだけでも助かる。
加工現場の目的は、何といっても機械加工の出来高を少しでも多く上げることである。
ここで稼働率と言わないのは、目的は機械の稼働時間を伸ばすことではなく、ワークを何枚(何個)、加工するかの方が重要だからである。遅い送りで稼働時間を長く引き伸ばしても意味はない。
速い送りで一点一点の加工時間は短く、それでいて次のワークの加工開始までの停止時間を最小化する。昔は「都度、違うものを加工するんだから、載せ替えの時、ある程度機械が止まるのは当たり前でしょ」とされてきたかもないが、今の時代、金型単価を考えると、そうも言っていられない。
これを読んでいただいている読者の現場はいかがだろうか。参考になれば幸いである。
設計業務の分業について
あくまで筆者の所感であるが、設計業務は1人の担当者が構想から構造、最後の部品図作成、その後の材料・部品表の作成まで全てを完結させるスタンスをとっている会社よりも、設計プロセスを分業している会社の方が手離れよく多くの型数をこなしているように見受けられる。
多くの金型を作るためには、最上流の金型設計を手離れよく完了させなければならないことは明白で、外注設計を使うこともあるが、やはりまずは社内設計をいかに効率よく完了させていくかを考えなければならない。そこで出てくるのが、設計の分業化である。
ただし社内の設計者全員が熟練レベルであれば、分業は必要ないかもしれない。基本の考え方を料理の厨房で例えると、キャベツの千切りまで調理職人がやるのか、となる。
金型設計の工程を細分化すると、①構想設計、②構造設計、③部品図作成、になるが、特に一番熟練を要する①と②③を切り離している会社は多い。
理由は、成形ノウハウ(①で必要)と、金型構造の設計ノウハウ(②③で必要)は別物であるためである。
突き詰めると、これら2つのノウハウはそれぞれ別個の教育が必要になる。
なお3次元設計の場合は、②と③が一体化していると言えるが、これも分業している事例がある。
ある程度、構造部のレイアウトやプレートや部品のサイズ調整・配置が完了したら、残るは市販部品や締結部品の配置の作業になるかと思うが、その作業は社内で標準化されていたり、CADの自動機能があれば、熟練者ではなく設計アシスタント的な人でも充分に対応できる。
そこで熟練者は下図のように、市販部品や締結部品を配置する場所に、種類やサイズが分かるよう色分けした円要素を置いておき、自分の作業はここまでとして、次の金型の設計作業に移る。

一方、設計アシスタントの人は、上図の状態から自動機能などを使って、市販部品や締結部品などの配置を行っていき、そのまま設計完了まで持っていく(下図を参照)。

また2次元設計であれば、すでに分業体制を敷いている会社は多く、前述した①~③に細分化された設計工程のうち、①と②③を分離(構想設計を専任)、①②と③を分離(部品図作成のみアシスタントへ)、①②③全てを分離、と様々なスタンスがある。
これらのコンセプトはやはり「キャベツの千切りはアシスタントへ」が基本となっており、熟練者が得意とするところに集中してもらうための体制となる。
設計のリードタイムそのものを見ても、金型仕様が会社ごと異なるため、単純な比較はできないが、プレス金型で言えば順送金型を3~5日で設計する人や、10~15日で設計する人、1か月かかる人など様々である。
だがやはりビジネスで金型を作る以上、今現在の設計リードタイムに問題意識を持ち、思ったように型数をさばけないという課題がある企業は、一度、設計工程の分業のあり方を見直してはいかがだろうか。
今回は、筆者のホームページで定期更新している技術管理コラムから、分業化についての2つのコラムをまとめ掲載させていただいた。金型メーカーの皆さまに参考にしていただければ幸いである。
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コラム投稿者
金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
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