協力性と全体最適:ボトルネック解消のカギ(型技術2024年2月号掲載)

協力性と全体最適:ボトルネック解消のカギ
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協力性と全体最適:ボトルネック解消のカギ(型技術2024年2月号掲載)

筆者は、金型メーカーや部品加工メーカーのコンサルタントとして、実務作業者や現場リーダーの皆様とご面談させていただく際、出来高を増やしていくことを目的に、「ボトルネック」についてのアドバイスをさせていただくことが多い。

なお、そういった会社の経営者は、売上をアップさせ、外注費を削減することを目的として、「できるだけ社内に仕事が入るようにしたい」と考えていることが多い。

その場合、現場ではどのような活動を行うべきか、という点について、CAM工程、機械加工、ハンドワーク作業、検査などのそれぞれの工程の担当者に話を伺うと、担当者ごとに視点が異なるため、どうしても部分最適に陥りやすい意見を聞くことが多くなる。

例えば、ハンドワーク担当者からは、「バリや手仕上げの作業時間を減らすために、機械加工できれいに仕上げてほしい」という意見が出ることがある。一方、機械加工担当者からは、「機械の稼働率を高めるために、手仕上げで対応できるところを増やしてほしい」という意見が出ることもある。

その他の工程でも、同様の意見が出ることがある。では、こういったときは、どちらの意見が正しいのだろうか。

ボトルネック解消のポイント

その判断基準になるのが、今回のテーマである「今のボトルネックはどこにあるのか」である。

ボトルネックとは、生産工程の中で、最も生産能力が低く、生産速度や品質に影響を与える工程のことである。ボトルネックがあると、その工程が遅れることで、全体の生産性が低下し、納期やコストにも悪影響を及ぼす。

つまり、「次の仕事を社内に取り込みたいのに、それを阻んでいるボトルネックはどこになっているのか?」ということである。

したがって、先ほどの金型部品加工の受注時における、各工程の言い分を見てみると、例えば、バリ取りや手仕上げがボトルネックで、バリ取りが大変なために、営業は次の仕事を社内に入れられないと判断するのであれば、現場としては、多能工化などの取り組みで、他の機械オペレーターやCAMオペレーター、設計担当であっても、時間を作ってハンドワーク部門を手伝い、バリ取りや手仕上げを担当する従業員を増やし、社内に仕事が取り込めるように余力を作り出すことが解決策の1つとなる。

また、機械加工がボトルネックであれば、例えば、穴あけ加工であれば、マシニングの方でセンタードリルだけ加工して、ピッチ精度が必要なリーマ加工穴以外はラジアルボール盤で対応してもらうなどが考えられる。また、面取りやR付け加工などであれば、ハンドワーク部門で手仕上げ対応してもらうなどにより、機械の負荷が下がって、その分の仕事を社内に取り込めるように余力を作り出すよう計らうことも検討できる。

CAMデータ工程がボトルネックとなるケースでは、簡単な穴加工やフライス加工であれば、機械オペレーターに図面のみを渡し、手動加工で対応させることも考えられる。

これらの行動は、一方で、自分の工程の効率や品質を犠牲にすることもある。しかしながら、全体としては生産性が向上し、出来高が増加することにつながる。さらに、協力性が高い人は、他の工程の状況や課題を理解し、積極的にコミュニケーションやフィードバックを行う。これにより、互いの信頼関係やチームワークも強化される。

金型メーカーにおいては、設計工程がボトルネックとなっているケースは少なくない。この場合、設計担当者の手離れを良くして余力を作ることが重要である。

ある2次元設計主体の会社においては、ベテラン設計者が構想設計や構造設計の肝となる部分の設計を行い、残りの部品設計は若手設計者やアシスタント設計者に任せるという設計の分業が行われている。また、3次元設計を行う会社においても、ボルトやピン、スプリングやガイドなど市販部品のモデリングや取り付く箇所のモデリングは、若手設計者やアシスタント設計者に任せるという分業化が行われている。

どちらもベテランの手離れをよくする対策である。目的はやはり、次の金型の仕事を入れるために、ボトルネックとなっていたベテランの設計キャパに余力を作るためであった。

生産工程において、ボトルネックとなる工程は、慢性的に同じ工程がボトルネックとなる場合と、流動的にボトルネックとなる工程が移り変わる場合がある。

まとめ

出来高を向上させるという目的においては、ボトルネック工程に余力を作ることを常に念頭に置くことが重要である。ボトルネック工程に余力があれば、次の仕事を社内に取り込むことができ、それが出来高向上につながるからである。

また、部署の全員が意識するべきは、常に全体最適を考え、決して部分最適な発想に陥らないことである。理由は、自分の工程だけの最適化を考えると、会社全体で見た場合、足を引っ張ってしまう活動になってしまう可能性があり、部署全体の生産性向上にはつながらないこともあるためである。

なお、全体最適の発想に基づき、ボトルネックを解消していこうとする、その意識・姿勢を評価する際には、その一番の評価対象は「協力性」になる。

協力性とは、自分だけではなく他人や組織の利益も考えて行動する能力や姿勢のことである。協力性が高い人は、自分の工程だけではなく全体最適を目指して努力する。協力性が低い人は、自分の工程だけを最適化しようとして部分最適に陥る。

つまり、どれほど会社や部署に「協力」してくれたのか、その行動・実績・態度が評価対象となるということだ。

協力性は、個人の能力や経験だけではなく、組織の文化や風土にも影響される。経営者やリーダーは、協力性を高めるために、以下のようなことを意識してみて欲しい。

  • 全体最適を目指すことを明確に伝える
  • ボトルネック工程を特定し、その解消策を共有する
  • 協力的な行動や成果を評価し、フィードバックする
  • 他の工程の状況や課題を把握し、情報交換や相談を促す
  • 異なる工程間での交流や教育を行う

以上のように、協力性が高まれば、それぞれの工程が連携して、全体として最適な状態を実現しやすくなる。全体最適が実現すれば、ボトルネックを生み出している原因が解消される。ボトルネックが解消されれば、出来高が増える。出来高が増えれば、売上アップと外注費の削減につながる。

このように、協力性と全体最適は、経営者の目的である生産性向上やコスト削減に直結するものである。現場でお仕事をする皆さんも、自分の工程だけではなく全体最適を考えて行動してみて欲しい。そして、経営者やリーダーは、社員同士のコミュニケーションを促進するような施策を検討してみてはいかがだろうか。そうすれば、きっと生産性向上につながるはずである。

さて、御社のボトルネック工程はどこにあるだろうか。

出来高アップは、どの会社でも常に目標に掲げられていると思うが、それを妨げるボトルネックに対して、適切な対処がなされる全体最適な取り組みは行われているであろうか。部分最適な発想に陥っていないだろうか。

参考になれば幸いである。

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金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
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