リーダーに必要な資質とは?(型技術2023年8月号掲載)
今回は、部下を持つリーダーに必要となる資質ということで、「柔軟性」と「利他の精神」といった2つを紹介する。ではまずは「柔軟性」から見ていこう。
【柔軟性】
金型メーカーで仕事をするリーダーにとっての「柔軟性」とは、環境や顧客要求などの変化に対し、ポジティブかつ適切に対応していく能力を指す。
もちろん自分ひとりの個人能力だけではなく、チームとして部下を巻き込み、総合的に変化に対応していける能力になる。
この業界における「変化」には様々なものがある。
例えば、機械や工具、治具などの進化によって仕事のやり方が変わるといった「変化」もあるし、新たな顧客の開拓により今までやったことのない製品や加工品が入ってくる「変化」もある。
また、これまでお付き合いしていた外注先が変わる「変化」によって、社内の加工内容も変わる可能性もある。
当然こういった「変化」は厳しく大変な状況になることもあり得る。
しかしリーダーとしては、仮に心の中ではネガティブに受け止めざるを得なかったとしても、少なくとも部下の前ではポジティブに受け入れる姿勢を見せたいものである。
それでは、図を使って実際の加工現場での事例を見ていこう。
図1は望ましくない事例、図2は望ましい事例である。


違いがわかりやすい事例かと思われる。
望ましくない事例の方では、リスクを重視し過ぎるため「変化」に対応することができていない。
もちろんリスク管理として不具合に備えることや、品質管理を一番に重視することは重要ではある。
しかしそれを重んじるあまり、リーダーとして部下の「考える能力」を伸ばそうとする姿勢に欠けてしまうのは良くないのではないか。
また特に良くないのが、リーダー自身も今のやり方を採用している理由がよくわかってない点である。
これでは新しい方法を試したいという部下の提案を却下するにあたり、説得性に欠け、納得を得ることはできないであろう。
やはり「柔軟性」を持つリーダーとして正しいのは、望ましい事例に出てくるリーダーのように、業界の技術変化にポジティブに対応でき、部下の意見もすすんで受け入れる姿勢を持つことである。
部下がまだ未熟な状態であれば、即座に採用できる提案はむしろ少ないであろう。
しかし、とにかく新しい考え方を歓迎する姿勢が重要で、部下の「考える能力」を伸ばしていくためには、あえて耳を傾ける「傾聴」の姿勢も大事になる。
いかがだっただろうか。参考になれば幸いである。
【利他の精神】
次のテーマは、「利他の精神」である。
この言葉をインターネットで調べると、「相手や他人の利益・メリットを優先し、自分の損失を顧みず、自らを捧げる考え方」などと出てくる。
実際は会社で働くうえで、ここまでの自己犠牲の精神は必要ないと思うが、金型メーカーでの管理職・リーダーとして仕事をするうえで、なぜこのような考え方が必要になるのか、事例を交えながらみていこう。
望ましくない事例として、筆者がコンサルの現場で遭遇するタイプが図3のような方である。

これは、CAMやマシニング加工などの運用状況を診断させていただく際に見られるシチュエーションである。
残念ながらこういった方が多いのが事実である。まずこちらのようなタイプをBタイプと呼ばせていただく。
さすがに図にあるように「ご自分で勝手に見てもらえますか」とまで言った方はわずかであるが、このBタイプの方に多い言葉として、
「いや、充分にできていますので、指摘は必要ないです」
「あ、いや、その時はたまたまそうだっただけで今は問題ありません」
「それは前任者から教えてもらっていないので出来ていないだけです」
「いやそれは前から考えてましたが、たまたまやってなかっただけです」
などがある。
では次に、図4の方で望ましい事例を見ていこう。

いかがだろうか。こちらのような方をAタイプと呼ばせていただく。
先ほどの望ましくない事例のBタイプと比較すると何が違うだろうか。
こちらのAタイプに多い発言としては、次のようなものがある。
「とにかく何か一つでも改善点があれば、それが当社の生産性UPのネタになるので、ぜひ言って欲しいです」
「ウチの人間は打たれ強いので、ガンガン指摘して欲しいです」
「これまでウチは井の中の蛙でした。これからは他社に負けない会社にしたいので、ガンガン指摘して欲しいです」
「100点の作業者なんて当然いません。でも何が足りないのか自分たちではわかっていません。ぜひ教えてください。」
Aタイプの人は、Bタイプのような「個人評価」が目的ではなく、会社や部門全体としての成果や業績が目的となっており、冒頭で出てきた「利他の精神」に近いものがある。
もしかすると、コンサルタントに現状をダメ出しされることで、自身の現状での力量は低く評価されるかもしれない。
しかしながら、現状での力量を打開し、伸びしろを指摘してもらうことで、会社や部門としての業績を上げ、その結果、自分やチームのメンバーに巡り巡って評価や報酬が還元されることを考えている。
逆にBタイプは、会社や部門の業績よりも、自分個人の「現状受けている評価」の方を重視している。
また「臭いものには蓋をする」といった傾向があり、Bタイプの方は、改善点や他社と比べた良くない点などについて、なるべく見つからないように隠す行動も見受けられる。
Aタイプの方の傾向としては、逆に「臭いの原因は元から断つ」といったように、隠さずその原因となる改善点をあぶり出してもらい、それを改善していく方を優先する方が多いようである。
会社の経営面から考えると、Bタイプの人は、専門仕事には向くかもしれないが、管理職やリーダーには向かないかもしれない。ともすれば、会社の業績の足を引っ張りかねない。
もしまだ管理職になっていない方で、ご自身がこのBタイプに近いという感覚を持っているようであれば、今からでも遅くないので、ぜひAタイプのような考え方に変わるべきである。
最後に、「納期どおりにモノを作る(仕事をする)」これはある意味、仕事として当たり前のことであり、製造業だけでなくどの業種でも同じことが言える。
しかし本当に評価をされる人というのは、少しでも一歩でも効率よく品質の良いものを作っていこうと、仕事のやり方を改善したり、自分のスキルを高めていこうと、日々努力している人である。
評価されるべきは、「やって当たり前」のことではなく、皆(チーム)でやっている仕事の環境を、メンバーのひとりとしていかに良くしていくか、こうした取り組みに協力していくことだと思う。
Bタイプの人に多いのは「やって当たり前」のこと、この殻から抜け出ない人が多い。最低限、納期どおりにモノを作っていれば評価されていると思いこんでいる人で、こういった状況のことを「有能性のわな」と言う。
逆にAタイプの人は、仕事の本質を理解している人である。ぜひAタイプの人の気持ちで、皆さんがお仕事されるよう願ってやまない。参考になれば幸いである。
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コラム投稿者
金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054