金型・部品加工業専門コンサルティング

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(株)愛工金型製作所のコンサルティング事例【後編】(8月号掲載)

 

今月号も引き続き、愛知県の(株)愛工金型製作所(愛知県小牧市 TEL 0568-54-1981)を取り上げ(以下、「同社」と言う)、ラベルシール・カードで有名なエーワン合同会社とタイアップして行ったラベル活用5Sコンサルティングの具体的な事例を紹介する。

 

5S導入の目的

今回のラベル活用5Sコンサルティングのメインテーマは、「粗利益にインパクトのある5S改善」である。

 

粗利益とは売上-製造原価であり、今回は特に製造原価と5Sとの関係に着眼したい。製造原価は主に材料費+労務費+購入品+外注費などであるが、これらの費用と5Sとの関係性は次のようなものがある。

 

① 材料費と購入品

これらの費用は変動費として概ね受注数量に比例するが、製造コストを増加させない管理として、欠品と過剰在庫を発生させないことが5S導入のポイントになる。

 

② 労務費と外注費

労務費を売り上げに比例しない固定費と考えると、外注費が社内製造現場の稼働率の影響を受ける。

つまり、社内の生産能力をオーバーした分が外注対応になり、もし稼働率が低下するとその分外注費が増加し粗利益を圧迫する。

 

そのため、製造現場の5S導入は稼働率を高めることがポイントになる。

 

5S導入の際の留意点

では、どのように進めると良いのか。一般的に5Sは、まず「整理」として不要品の廃棄から始めるとされている。

 

今回エーワン社と取り組んだ方法は課題抽出を入り口としたことである。「何が稼働率低下の障害になっているか」に着眼し検討を進めた。

この切り口で同社の技術者の方々にヒアリングを行い、そこでどのような問題が発生し、どのような改善を行うことで、探す・待つ・歩くなどのムダを減らせるのかを一緒に検討した。

 

このように、5S導入にあたっては教科書どおりに進めることも間違いではないが、特に中小企業については、道具が見つけやすい、仕事が楽になる、疲れなくなるといった従業員が自らやりたくなるような目的がなければ、そもそも定着が難しい。

 

具体的な導入事例の紹介

それでは、エーワン社と取り組んだコンサルティング事例を紹介する。

 

【事例1】作業エリア:測定具置場

発生していた問題点:

同社の強みとして、精密で小型な金型から大型の金型まで幅広く扱っているという点がある。

そのため、測定具の種類が多くなり、特に大型ノギスやマイクロメーター等は共用工具であるため本数が限られており、誰かが使用中になると、それを探し回ったり、空くのを待つ等のロスが発生していた。

 

改善策(写真1):

写真1 測定具置場の改善後

 

a.棚の名称とその責任者を明示し、整頓状態を維持するための管理責任者を明確にした。

b.測定具と棚板それぞれに測定具名を記載したラベルを貼り、置くものと置く場所を一対一で明確にし、使用中かどうか・どこに戻すかをわかりやすくした。

c.作業者ごとの氏名ラベル(マグネット仕様)を用意し、測定具を持ち出す際に持ち出す測定具のあった棚板に貼ることで誰が使用中かをわかるようにした。

 

使用したエ-ワン社のラベル:

屋外でも使えるサインラベルシール(油面にも貼れるハイグレードタイプとマグネットセット)を使用。測定具に貼るラベルは、マシニング等の機械油や放電加工機の水・油などの汚れにも強いラベルを使用。棚板にはマグネットタイプを使用し、変更や移動が簡単にできるようにした。

 

【事例2】作業エリア:各種金型置場

発生していた問題点:

同社の強みとして金型製造だけでなく、量産成形も隣接する工場で行っているため、保全がしやすく稼働率の高いプラスチック製品の量産成形を行うことができる点がある。

ところが、扱う製品種類が多いためメンテナンスを行う金型も多くなり、新規の金型もあることから同社の金型置場は大混雑していた。

このため作業に入る際に着手する金型を探す手間があったり、入荷してきた金型に気づきにくいといったロスも発生していた。

 

改善策(写真2):

写真2 金型の処置段階に応じた置場の明示

 

用途・処理段階に応じた金型置場の区分けと明示を行った。具体的には、入荷してきた金型、出荷できる金型、まとめて分けて置いておきたい大型の金型などが一目で見分けがつくよう、金型置場の種類が記載されたプレートを掲示した。

 

使用したエ-ワン社のラベル:

屋外でも使えるサインプレートセットを使用。

耐水・耐光性に優れたフィルムラベルとプラスチック板のセットで構成されており、油汚れしやすい金型工場内でも問題なく使用できる。

さらにこのプラスチック板は紙の穴あけパンチでも容易に穴をあけられるなど利便性が高い。

 

【事例3】作業エリア:各種掲示板

発生していた問題点:

同社の強みとして、多品種かつ超短納期対応を行っている点がある。そのため、日程表や掲示版には連日追加・変更が繰り返されている。

ところが、その掲示場所は使用用途が明確に区分されていなかった。

このため、各作業者が目的の情報や書類について、探す・見落とすといったロスが発生していた。

 

改善策(写真3):

写真3 月次・週次日程表の明示と注意喚起する付箋の活用

 

d. 2つあったそれぞれの掲示板に「月次日程表」「週次日程表」といった明示を行い、何の情報を掲示するのかを明確化した。

e.「緊急」「変更あり」といった印刷した付箋紙を使い、即時対応や設計変更のある図面を一目でわかるようにした。ポイントは白色を基調とし、いかに赤など注意喚起させるための色を目立たせるかである。

 

使用したエ-ワン社のラベル:

屋外でも使えるサインプレートセット、ポスト・イット®ラベルシールを使用。

ポスト・イット®ラベルシールは糊つき付箋紙として簡単に貼ったり剥がせるので採用した。裏面には「剥がしやすい加工」がされており作業性も良い。

 

以上が今回のラベル活用コンサルティングの事例紹介である。

 

ラベルの印刷については専用アプリケーションにより、手軽に作成でき、負担なく追加・更新できる。

筆者は多くの企業の製造現場を拝見しているが、やはり手書きマジックの掲示よりも、印刷文字による見た目に引き締まった掲示の方が厳密な品質管理をしている印象を受ける。

 

5S改善によって伸ばせる強み

今回の取り組みによって、企業としての強みである金型・量産・品質部門の一体生産をさらに強化できる効率的なオペレーションが可能になる。

それは製造現場の稼働率向上であり、今回の5Sへの取り組みを量産成形部門や品質管理部門へ横展開することにより、さらなる効果が期待できる。

 

新社屋移転により、同社はQCDに対し理想的な動線を実現できる工場レイアウトを構築し、金型製造については顧客からも高い信頼を得ている短納期対応をさらに強化していく。

 

トライ回数を最小化できる設計や精度の高い機械加工技術を高める取り組みを行っていく同社の今後の成長に大きな期待をしている。

 

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コラム投稿者

金型・部品加工業 専門コンサルティング

代表:村上 英樹(中小企業診断士)

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タチバナ金型製作所のコンサルティング事例(4月号掲載)

 

本号で取り上げる金型メーカーは、愛知県にあるタチバナ金型製作所(愛知郡東郷町春木下鏡田161-6)である。同社は主に自動車部品や遊戯具部品などの射出成形金型を製造しており、従業員3名の少数精鋭である。

 

同社を取り上げたのは、経産省の産業支援策である「ものづくり補助金」の申請を筆者がサポートし無事に採択され、そのまま技術開発もお手伝いさせていただいたため、その取り組みについて紹介させていただこうと思ったからである。

 

同社は、自社の弱みを改善するテーマに挑戦し、本業と並行しながらじっくりと腰を据えた実験に取り組んだ。筆者が一番に伝えたいのは、開発テーマが採択要件にあっていれば小規模メーカーも十分採択される点である。

 

会社の最も強みとしているポイント

同社の強みは、顧客から見て要求価格で受注してくれる点である。

これを可能にしているのは、もちろん低コストで金型を製作できているためだ。

 

橘木社長は創業社長であるため、設計から機械加工、組立・調整まで全工程に対応できる。社長以外の製造スタッフについては、各工程を必要最小限ムダのない人工で担当しており、伝達など間接コストを無くし高い稼働率でものづくりを行っている。

 

コンサルティング以前に粗利益を下げてしまう要因となっていた課題

ところがこうした効率的なものづくりを行っていても、特に射出成形金型は、価格競争による型単価の低下は著しく、多くの中小金型メーカーの大きな課題となっている。

筆者自身も23年の金型メーカー勤務の中で驚くほどの価格変化を見てきた。

 

こうした背景から起因する同社の課題は企業の成長性だとみている。連載第1回に書いた、財務面のチェック項目「設備投資のための資金計画」が同社の課題である。

 

これまで同社は1台保有しているマシニングを2台に増やしたいという想いがあった。

2台体制であればキャビティとコアを同時に加工できリードタイムは1/2にできる。

 

リードタイムが半分になると受注できる型数を増やすことができ売上は増加する。労務費や外注費を比例して増やすことなく売上増加ができる。

 

これにより効果的に粗利益を増やすことができる。

同社はそういった投資のチャンスを逃していた。これは機会損失と呼ばれ、実は増やせるべき利益を逃している損失だと考えるべきである。

 

設備投資の原資は多くの中小企業の場合、借入で調達することが多い(図1)。

 

図1 設備投資の原資の内訳

 

利息支払い額や銀行借入の返済額、またはリース費用が充てられる。

 

粗利益とは、売上-製造原価(材料費、労務費、外注費)であるが、設備投資の原資を確保できる粗利益を稼ぐことができていたか、これらの構成要素を細かく見ていく。

 

① 売上:生産能力により毎月受注できる型数に制約がある。
② 材料費:売上に比例するが為替動向などによっても変動する。基本的に自社ではコントロールできない。
③ 労務費:効率性の高い生産が会社方針であり過度な残業は少ない。
④ 外注費:無理な受注による負荷オーバーのための外注策は少ない。

したがって、①~④によると同社の粗利益減少要因は「売上」が主原因であるとわかる。

次はこの売上についての構成要素を見ていく。売上とは単価×数量であるため、それぞれを同社に当てはめ分析する。

① 単価:とにかく顧客要求に応える方針であり、これまで価格交渉はほとんど行っていない。
② 数量:毎月ほとんど固定的な型数を受注している。

 

したがって、①②によると同社の粗利益減少要因は「受注単価」にあるとわかる。

受注単価については、やはり何といってもリーマンショックにより業界全体で仕事量が激減し、価格相場が大きく引き下がったことも影響している。

同社は粗利益について中長期的な視点で検証ができていなかった。

 

課題となっていた部分をどのような方策で改善したか、成功した改善策

そこで同社は、経営のカンフル剤とも言える、補助金を活用した設備投資を考えた。

新型マシニングの導入により粗利益に直結する生産改善を行った。

 

具体的には、金型意匠面の切削加工面の品質向上による磨き工数削減と、既存設備よりも早い主軸回転で送り速度を上げ、加工工数の削減を図った。

それに伴い、ボールエンドミルの加工条件と加工パス軌跡の見直しも行った(写真1)。

写真1 補助金事業で使用した設備や実験ワークなど

 

そもそも手仕上げ磨きはコスト増加要因が多い。

労働集約型業務であるうえ一定レベルの技術が必要で、型ダレやキズなどにより修正・手直しロスの発生要因にもなるため、人件費の安いパート社員に任せる、というわけにもいかないところがある。

 

同社は、補助金事業によって製造コスト(労務費、外注費、減価償却費)を増やすことなく売上増加を図り、しかも単価ではなく数量要因の増加で実現できた。

顧客への価格メリットはそのままに自社の粗利益がアップできたことになる。

 

補助金による改善後は、労働生産性による儲けから設備生産性による儲けへと粗利益の稼ぎ方が変化した。機械設備によって稼働率を高め製造コストを引き下げる考え方である(図2)。

 

図2 労働と機械の製造コストに対する考え方の違い

 

従来は、型数をこなすには人が頑張る考え方であったが、改善後は機械に仕事をさせ、人の時間を有効に使う管理を重視するようになった。

人がフレキシブルに動けるための時間管理である。

人の時間を有効に使う管理を実施した結果、外注化していた設計が内製化できるようになった。これによる粗利益アップの効果は高い。

 

もちろん補助金の活用にあたって苦労した点もある。これについては次回で詳しく解説する。

なお、補助金は開発計画が全て終わってからの後払いになるため、初期投資となる資金調達は必要である。

 

今後の成長に向けて

同社は、今後の事業拡大のため射出成形とプレス、両方の金型を扱い始めた。

しかし、それぞれの金型技術には明確な違いがあるため容易ではない。

 

例えば、型合わせの考え方から異なる。プレス型は直角面が多いが射出成形はコッター面と呼ばれる傾斜面が多い。

 

プレス曲げの場合、板が曲がり終わる下死点までが金型の仕事であり、板を曲げる最中に上下型それぞれの面を摺動させ型ズレを防ぐ。

一方、射出成形は型が閉じた下死点で原料を射出し成形する。それぞれ型を閉じる前か後、どちらで仕事をするのか異なる。

 

このため、柔軟に対応できる技術・ノウハウが必要になる。

 

同社は、人がフレキシブルに動ける時間管理により、こうした新たな仕事に取り組む時間が作れるようになった。

現在、生産能力を強化するため一緒に金型づくりを続けていけるスタッフを募集している。

 

ヒトモノカネの面で生産性の高い経営を目指す今後の同社の成長に期待している。

 

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ユーアイ精機株式会社のコンサルティング事例【後編】(3月号掲載)

 

先月号から引き続き愛知県尾張旭市にあるプレス金型メーカー・ユーアイ精機㈱における特に長期的な対策となる改善事例を紹介する。

筆者が企業の経営診断で作成する診断報告書は、①経営の現状、②課題、③改善策を提示するが、③の改善策については、明日からでも取り組める短期的対策、3か月から1年後、3年から5年後といった中・長期的に取り組む対策に分けて提案している。

 

例えば、短期的対策については、技術面や生産管理面など比較的効果が早期に出やすい改善を取り上げることが多く、長期的対策は、組織体制の見直し、人材採用の取り組み方の見直し、販路開拓、人材育成など、効果が出るまで時間のかかるテーマを取り上げている。

 

本号は、ユーアイ精機における中・長期的な取り組み事例である。

 

会社が強みとしているポイント

先月号に引き続き同社の強みを見ていくと、経営者が技術と経営の両面に意欲的に関与している点が挙げられる。

筆者が日々お会いする経営者の方々はどちらかに偏っている事が多い。

 

本来、製造業の企業経営は、受注・生産・出荷などを行う「事業」の上に、ヒト・モノ・カネを運営するという「経営」がある。

ところが多くの中小製造業が日々のめまぐるしい「事業」に追われ、「経営」まで手が回っていない。

 

その点、同社の水野社長は経営と事業をバランスよく行っている(大変だと思うが)。

例えば、解析ソフトのセミナーに社長自らが参加し、トライや型設計効率化のため積極的に研究している。

 

さらにプレス金型メーカーには珍しく3Dプリンターを導入し自社独自の活用方法を模索している。

 

そういった社長を支える製造部長の存在も同社の強みである。

顧客との打ち合わせや外注手配、組付けやトライまで、内外何でもこなす製造部長の存在は同社のキーマンと言える。

 

多くの中小企業経営者には、片腕とも言える参謀や番頭役の方がついておられるが、最近筆者に多い相談は、いずれ事業承継を迎える後継者を支える参謀役が見つからないというものである。

技術面に加えマネジメントまで行う人材の存在は、会社の将来をも左右するポイントになる。

 

粗利益を下げてしまう要因となっていた課題

ところが同社の強みはウィークポイントにもなっていた。

製造部長は上流・下流工程、両方の中核業務を兼任しているため、負荷が集中すると中間工程が滞り、会社全体の稼働率を低下させてしまう要因となっていた。

 

例えば、製造部長がトライ作業に追われていると、上流であるCAMや機械加工への手配が遅れ、受注が溜まっていてもスタートが切れない、その後差し迫った納期対応に追われるといった状況が発生し、①新しく入った仕事の話を泣く泣く断る、②外注対応で急場をしのぐ、といったことが多くなっていた。

 

これは、粗利益=売上-製造原価という観点で言えば、まさに粗利益を下げることにつながる(図1)。

図1 高負荷による粗利益減少の要因

 

製造部長に負荷が集中する原因は、設計や組付、トライといった、特に上流と下流工程を担当する人材の技術教育が思うように進んでいないという点である。

そこには会社が抱えるジレンマもある。

 

工作機械は高価な設備でありその投資額は大きいため、経営者としてはまずその稼動率を高め投資回収期間を短縮したいと考え、マシニングなどの稼働を優先しがちになる。

しかも最近のマシニングやワイヤーカット放電加工機は、ユーザーインターフェースやCAMの操作性が飛躍的に向上し、その習得期間については昔よりも随分短縮できるようになった。

 

そのため同社においても機械加工担当者が優先的に配備され、育成に長期の時間を要する設計やトライ作業の人材育成が停滞するといった状況になっていた(図2、図3)。

 

 

図2 ユーアイ精機の機械加工現場

図3 ユーアイ精機のトライ作業現場

 

特に設計やトライ作業は経験値がモノを言う仕事であるうえ、利益貢献度を算定しにくいため、多くの中小金型メーカーでは多能工化や設計人材育成に取り組めない悪循環を生んでいる。

 

課題となっていた部分の改善

そこで同社は、前号で紹介した6つの段階的な生産管理項目のうち、「製造工程全体を俯瞰できる機械・作業者への割り当て計画」を機能させ、この課題解決に取り組んだ。

 

各工作機械に加工計画を割り当てていくと、よほど受注が満タンで、かつ隙間なく納まるスケジューリングをしない限り、空き時間は出来るものである。

この時間を教育時間として事前に計画する取り組みを行った。その空き時間についても、例えば1時間空く時もあれば半日空く時もある。

 

技術指導の経験のある方でしたらこう考えないだろうか、「半日あったらこの練習をやって欲しい」「1時間しかないならこの反復練習をやっておいて欲しい」など。

同社はこれを事前に準備して加工計画の間に教育計画を落とし込む改善を行った。

 

機械加工から取り組むことになったが、現在はウィークポイントであった順送型の設計人材育成をおし進める計画をしている。

 

もう一つ行った改善は多能工化である。

これにより、機械担当者に設計やトライ作業などを習得させる狙いがある。これは指示書作りなど間接コストの削減ができる「ついでに」方式によって行った。

 

「ついでに」方式とは、筆者が金型技術者であった時に自ら実践した多能工化を行う方法である。

後工程など自分以外の作業者に意志を伝えるためには指示書などを作成するが、すぐ後の工程の作業を自ら行うことでこの指示書を不要にする。

 

例えば、型設計及び部品図を作ったらそのまま自分でCAMデータまで作り、そのCAMデータを作ったらそのまま自分で機械加工まで行う。

機械加工を自分でやったらそのまま自分で組み立てる。そうすることで形状や寸法以外の細かな指示を省くことができ、間接コストの圧縮ができる。

 

本来私が18歳で金型の世界に入った頃は当たり前だったやり方でもある。

倣い加工から3次元CADの計算によるNCデータで型を削るようになり、習得に時間がかかるCAD/CAM作業者は専任になった。

 

著しい短納期化と相まって多くの中小金型メーカーでは効率化のため、各作業工程の分業化が進んだように思う。

そのため後工程に意図を伝える指示書が必要になった。

 

「ついでに」方式はその変遷を逆戻りする方法でもある。この方法により、3次元CAD設計後の寸法入れも省くことができる。

 

さらなる企業の発展へ

今後同社は、順送型設計の完全内製化によるさらなる外注費の削減に取り組み、粗利益の向上を図る。

さらに計画的な人材教育と多能工を増やすことにより会社全体としての余剰時間を創出し、3Dプリンターの新たな付加価値の創出といった計画もある。

 

そのため、機械的な金型部品の3Dモデリングだけでなく、デザイン性の高いモデリング能力を持つ人材教育に取り組んでいる。

こうした将来への投資を行うことは企業を永続させることにもつながる。

 

今年も国内金型メーカーを取り巻くマクロ環境の変化は、経営者にとって目の離せないところであるが、同社のような先を見据えた取り組みは、その経営環境変化に備えるものである。

同社は本号で取り上げた中・長期的な改善で、より多彩な能力を持つ人材育成が可能な体制をつくることができた。今後企業としてのさらなる成長が楽しみである。

 

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ユーアイ精機株式会社のコンサルティング事例【前編】(2月号掲載)

 

本号で紹介する金型メーカーは、愛知県尾張旭市にあるプレス金型を扱うユーアイ精機(株)である。従業員は18名。主要製品は自動車・厨房部品の量産用金型、試作部品、金型用部品などである。

 

同社社長は経営にとても高い関心を持ち、本来受注生産である金型メーカーは能動的な計画は作りにくいと言われる中、同社は5年以上先の事業計画まで作ることができている。企業独自にユーアイ・ビジョンという方針を作り、ホームページを活用して広く社内外に発信している。

 

会社が強みとしているポイント

同社の強みは、試作鈑金から号口金型までワンストップで対応できることである。

これにより部品の試作を依頼する顧客は、量産時のプレス工法(型方案・量産工程)まで検討してもらうことができる。

 

例えば、絞りや曲げを伴う製品を依頼する場合、試作鈑金ならプレス後の3次元レーザーによる外形トリムが多いため変形が少なく手修正も可能であるが、量産プレスでは抜き反りや途中工程の変形も考慮した工程設計が必要となるため、同社は試作の段階でその先の量産まで踏み込んだ工程設計まで行うことで依頼部品のコストや形状の事前検討を併せて行うことができる。

 

筆者が知る限り20人規模の企業で、試作鈑金と号口金型の両方をとり扱っているメーカーは少ない。

その理由はいろいろあると思うが、まずコスト面から考えて儲けるポイントが異なる。

 

試作板金は、1個から数点といった小ロット生産であるため、曲げ・絞り・たたき工程に必要な道具や金型にコストを掛け過ぎないことが儲けるポイントとなる。

逆に号口金型は、必要な耐久性を持ち不良の発生しない安定した生産ができる金型をいかに予算内でつくれるかが儲けるポイントである。

 

設備面からみても保有する機械は異なる。

試作板金では3次元レーザーやブレーキプレス、プレス機は油圧式が多く、号口金型はマシニングやワイヤーカット放電加工機などで、トライ用プレス機は量産時と同じクランク式が多い。

 

したがって小規模企業において、1つの企業で同じ製造工程による両立となると難しいと考えられるのだが、同社はそれを実現し強みとしている。

 

また、同社はその試作ノウハウを活かし、マグネシウムやハイテン材など難加工材のプレス技術の開発を行っている(写真1参照)。

 

写真1:同社の技術開発によるマグネシウム材のプレス成形品

 

例えば、ハイテン材をレール状に長い形状に曲げる製品はスプリングバックや反りへの対応が課題になるが、それをうまく型構造の工夫によってコントロールしている。

筆者も苦労した経験があるが、大きくR状に湾曲したハイテン材の反りは特に修正が難しいため、金型への細工が必要となる。
その他、980Mpaハイテン材を箱形に曲げる製品についても、スプリングバックをうまくコントロールして1工程で直角を出す型構造も考案している。

 

試作・号口両方のノウハウを持つ経験豊富な同社工場長の技術をうまく経営に活かしている。

 

粗利益を下げてしまう要因となっていた課題

前述したように同社の事業の特徴は、試作と号口、さらに単品部品加工までを幅広く受注し、これらを同じ加工工程で混合生産していることであり、これが販路拡大にも寄与している。

 

しかしそのため、同社の製造現場では混乱が生じた。短期の試作鈑金や部品加工、長期で再加工の多い号口金型部品が混在した生産は管理が難しい。

どうしても短期仕事が優先になり、長期の仕事や負荷オーバーした分は後回しまたは外注対応になる。

 

そうなると残業による人件費や会社からのキャッシュアウトが増え、自社の粗利益が減少していくという悪循環に陥っていた。

 

管理が難しくなった原因は、①扱う品種・品番が激増し部品ごとの工程管理負担が増えた、②2、3日の短いサイクルで扱う部品も混在するため新規受注のたびに行う計画変更が負担になった、などである。

 

課題となっていた部分の改善

筆者の経験上、金型メーカーの生産管理は、下記のように段階的に細分化するのが理想だと考えている。

① 会社全体の受注品目を管理する日程計画
② それぞれの金型ごとの工程別に分けた日程計画(ガントチャートなど)
③ 金型を構成する部品ごとの日程計画
④ 社内で加工する部品全てを工程別に分けた日程計画
⑤ 製造工程全体を俯瞰できる機械・作業者への割り当て計画
⑥ 各作業者が見る小日程計画

 

同社は特に④の管理に問題があったため、加工する際に準備が間に合わず着手できない部品が多発した。

例えば機械加工では、着手日に材料・図面・NCデータが揃っていないといった問題である。

 

そこで同社は、加工工程を整流化する管理の仕組みを導入した。

具体的には、特に最初の工程になることが多くボトルネックの原因にもなっていたワイヤーカット放電加工の工程で生産管理ボードをつくり、毎日4台の機械で当日加工する部品の予定をつくり細かく一元管理するようにした。

 

これには次のような効果があった。①材料・図面・NCデータが準備できたかどうかの見える化、②各部品の加工予定を隙間なく1日の計画に当てはめることで稼働率を最大化できる、③複数の機械間で加工予定を入れ替える調整がしやすい、などである。

 

これにより現在は、予定外の機械の空き時間や後工程の予定遅延を減らすことができ、ムダな残業や外注費を削減することができた。

 

同社は、生産面の評価指標として日中の機械稼働率を用いているが、経営面としては「労働分配率」という指標を活用している。

労働分配率は人件費を企業の付加価値で除したものであり、売上から材料費や外注費など外部への支払いを差し引いた自社で生み出した価値と人件費のバランスを表す。

 

この割合は企業ごとの方針によるが、同社は毎月の人件費や外注費が多くなり過ぎていないか、この指標を使いチェックしている(資料1参照)。

 

資料1:労働分配率についてどう考えるかについての資料

 

人件費や外注費などの製造原価の増加をできる限り抑え、そのうえで受注を増やし売上を高めることが粗利益の増加につながる。

従来同社の高い従業員のモチベーションは、ただ忙しく仕事をさばくことに向けられていたが、現在は粗利益を高める行動にその意識は向けられている。

 

同社は自社を広く認知してもらうことで「呼び込む営業」に積極的に取り組んでいる。

難易度の高いハイテン材やマグネシウムなどのプレス加工にこだわり、その高度な技術に取り組む企業姿勢をホームページや講演などで社外発信している。

 

これにより製品開発をしたいという企業から共同開発依頼を受けるなど、お願い営業をすることなく事業拡大ができている。

それに応える製造現場は従来以上に多様な部品を製造しているが、営業と技術、両面から粗利益を高めていく体制をつくることができた。

 

今後の企業としての発展

現在マグネシウム素材においては海外企業と共同製品開発を進めている。

経営全体戦略としては、競争を意識した技術・営業戦略、受注平準化への取り組みを社長が先頭に立ちおし進めている。

 

これらの取り組みは企業を永続させるためのものであり、更に生産体制の強化もできたことで今後ますます同社の発展が期待できる。

 

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金型・部品加工業 専門コンサルティング

代表:村上 英樹(中小企業診断士)

愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054