金型メーカーや部品加工メーカーにおける「あいつはがんばっている」とは?
今回のテーマは、「今さら聞けない」シリーズに入れても良いかと思ったほど、金型メーカーや部品加工メーカーの業界では当たり前の話なのですが、もしよろしければお付き合いくださいませ。
このコラムを書くきっかけになったのは、ある会社さんで見かけた、とあるエピソードが理由です。
その会社さんにはワイヤーカット専任のオペレーターがおりまして、社長いわく、彼はとても働き者で、ワイヤーカット加工が立て込んでいる時は土日でも休日出勤して、段取りを仕掛けに来てくれるとのことでした。
家は比較的会社から近いところにあるらしく、ワイヤーカットの段取りはワーク1個であれば1時間ほどでしょうか、休日も厭わず段取りをやりに来てくれる忠義に厚い社員との評価を受けています。
これはこれで、労務管理上好ましくはないものの、日本企業らしい職場のエピソードだと思うのですが、一方、私がコンサルしている別の会社では、仕事量にもよりますが、ワイヤーカット加工は毎日必ず多数個掛けをやっている現場があります。
テーブルの形状によりますが、下図のような四角形の枠状のテーブルであれば、手前と奥、それぞれ左右にワークを乗せれば、最大4個を一度に段取りすることが可能です。

こちらの会社では、私が以前アドバイスしたことを実践しており、昼間も夜も、必ず多数個かけをしています。
そのため特別なトラブルがない限り、残業も休日出勤もほとんどありません。
・・・・こうしてみると、「頑張っている」のはどちらのオペレーターなのでしょうかという疑問が湧いてきます。
後者のオペレーターは、最初から多数個かけが出来たわけではなく、サブプログラムの編集や、自動加工の前のチェックなど、当初は私のアドバイス自体に不満や疑念を持ちながらも、何とかハードルを乗り越え、一定のスキル獲得と共に、今では普通に多数個かけを行い、仕事があれば、ほとんど1個ずつ仕掛けることがありません。
前者のオペレーターさんに面と向かっては言いませんが、私は後者のオペレーターさんの方が「頑張っている」「会社に貢献している」と思います。
実は、私がコンサルタントに転身したのも、これが大きな理由です。
私が勤めていた会社には、同じ金型部門で仕事をしていた同期の社員がいました。その彼はあまり器用な方ではありませんでしたが、とても真面目で、土日も厭わず休日出勤をして設計や加工の仕事をしていました。
私は今も仕事にしているくらい改善が大好きで、とにかく目の前の仕事を自動化したり加工方法を変えたりして、効率化することを日常的にやっていたのですが、その同期の彼が何か改善をやっているのはただの1回も見たことがありません。
彼のスタンスは、老舗の味をとにかく守り続けるがごとく、前任者のやり方をひたすら実直にやり続けることでした。
結果的に会社の評価は、改善の取り組み云々ではなく、土日も厭わず出勤してくれる彼の態度や姿勢の方に向いていました。
これはこれで、彼の真面目さを私もすごいと思いますし、評価とはあくまで人が下すものですので、私が文句を言っても仕方ありません。
ですが、その職場で働き続けるモチベーションが薄くなってしまい、難関資格である中小企業診断士の合格に向け、「自分個人」の方の改善・チャレンジ意欲の方に気持ちを方向転換させたきっかけになりました。
合格後、独立開業して今に至ります。
私のことはさておき、金型メーカーや部品加工メーカーの職場も、やはりビジネスですので、「誠実さ」はともかくも、「頑張っている」とは何か、他の同業者も含めた広い目で、見極める必要があると思います(井の中の蛙にならないように)。
仮に「改善はやれないが土日は厭わず出勤します」方式の人が、何年もそのスタンスで仕事をやり続けた場合、会社としての技術の向上、他社との差別性、生産性の向上、収益・利益の向上などは見込めるでしょうか。
最初に事例としてお話ししたワイヤーカットオペレーターの方は、Gコードプログラムを読むこともできない、ややスキルが不足している人です。
当たり前のようにGコードプログラムが読め、多数個かけをしても、混乱せず粛々と段取りができる人の方が、スキルが劣り土日出勤する人よりも、多くの出来高を上げつつ、かつ労働時間は少なくて済むわけです。
それぞれの会社の時給ベースにもよりますが、ひょっとすると後者の人の方が、残業代・休日出勤分が無い分、給料は少なくなってしまうかもしれませんが・・・。
まだまだコロナの影響から抜け出せないこの業界ですが、「頑張っている」かどうかは、自社だけでなく、広く同業他社も含めたスキルの水準で判断していかないと、生産性という点で、適切に上を目指していけないと思わされるエピソードでした。
御社はいかがでしょうか。ぜひ先ほどの事例では、後者の無人化スキルが高い人の方が評価を受ける会社であって欲しいと思います。
参考になれば幸いです。
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コラム投稿者
金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054
