スキルが薄くなってしまう人の共通点
今回は、私が普段コンサルの仕事をしている中で出会う、ちょっと残念な人の特徴と、その結果一人のエンジニアとしてどういった状態になってしまうのか、その一例について書いてみたいと思います。
このコラムを読んでくださっている方は、前向きな方が多いと思いますので、今回の事例に該当する方はほとんどいらっしゃらないと思います。しかし、もしよろしければ、反面教師として参考にしていただければと思います。
最初のエピソードは、とある会社のコンサルティングで行っている定例ミーティングでの会話の出来事です。
村上「それでは、半年前から着手してもらっている、金型の3次元設計導入の進捗について教えてもらえますか。」
A さん「はい、当社が金型意匠面のモデリングに使っている 3 次元 CAD を使って、構造部まで設計する件についてですが、CAD の販売サポートに確認したところ、構造設計のためのオプション機能が入っていないので、当社で 3 次元設計はできないという判断になりました。」
村上「なるほど。具体的に何が足りなかったのですか?」
Aさん「自動製品レイアウトと、自動構造設計機能ですね。」
村上「ああ、なるほど。 では因数分解の発想で、それぞれ順に、どのようにそれがないと問題なのか確認していきましょうか。
ちなみに普段2次元で設計を行っているBさんは、2次元3次元に関わらず、この自動製品レイアウト機能がないと、歩留まり設計は出来ない感じですか?」
Bさん「そもそも普段から、自動歩留まり機能は使わずにこれまで20年設計をしてきていますから」
村上「ですよね。私も複雑な製品になるとかえって自動機能が煩わしくなるので、御社の3次元設計で使おうとしている同じCADで、私も3次元設計をやりましたが、ほとんどこの機能は使いませんでした。ですから「この機能が無いと設計が出来ない」というのは極論ではないでしょうか。」
村上「次に自動構造設計の機能ですが、これも私の経験談ですが、出来るだけ小さい金型にするため部品配置を色々アレンジしたり、複雑なレイアウトの金型になると、かえって自動機能が煩わしくなります。私の場合は、自動構造設計のオプション機能を全く使っていませんでした。ですのでやはり「無いと設計そのものが出来ない」というのは極論ではないでしょうか。」
Aさん「あ~、そもそも私がまだそこまでこのCADのこと分かっていないので。」
村上「でしたら、その足りない情報量では、先ほどのように「当社で 3 次元設計は出来ない」と断定するのは、少し早いのではないでしょうか。」
こういったやり取りがありました。
この会社では、これまでずっと金型の設計は 2 次元で行ってきました。しかし、今後同業他社に遅れをとらないよう、3 次元設計に着手してきたいという同社社長の強い想いがありました。それでも、半年以上前に話が出てから、ああでもないこうでもないと言っては、担当に任命されたAさんとのやり取りを繰り返してきました。やっと重い腰が上がりかけてきたのですが、その後もこのようなやり取りが続き、なかなか進展しませんでした。
日本で初めてやるような斬新な取り組みであれば、たしかに充分な検証を行い、出来る限りリスクを最小限にとどめて着手していくべきだと、私は思います。しかし、3 次元設計は、同社のようなプレスメーカーでは何年も前から行われています。他社で充分に実績やリスクも積み上げられています。今更、着手するかどうかの検証については、必要以上にやることはないと思います。少なくとも会社として導入することがすでに決まっているのであれば、です。
この A さんは他の事案についても、同業他社では当たり前のように取り組まれていることに対しても、何かと反対意見を述べることにエネルギーを使う人でした。
ですが今回はこのAさんの態度についてのお話しではなく、こうした行動の結果、この人の持つスキルがどうなっていくかに着目してみます。私はこうしたやり取りのさなか、このAさんのキラースキルというべき何か突出したスキルを持っているかに注目してみたのですが、特に持っていないことに気づいたのです。
前述したやり取りのあと、次のようなやり取りもありました。
村上「先ほどのような自動設計機能は特に無くても設計作業は出来ますし、私自身も使わずにやっていましたが、むしろ自動の部品配置機能はあった方がとても効率的です。具体的には構造設計の最後に行う、キャップボルトやノックピン、ガイドピンなどの自動モデリングとその箇所の穴あけモデリング、その穴に加工属性を付与するまでの一括機能になります。とは言え、2日の作業が1日になるレベルでの効率性ですが。ですからいずれAさんがバリバリ月に何型も設計するようになってから実装してもよいかもしれませんね。」
Aさん「それも追加でCADの販売先に支払う費用が発生するんですよね。自分でその自動部品を追加できないんですか?」
村上「出来ますよ。私は以前別のコンサル先の会社の人と、そのための講習に参加したことがあります。2日間でスクリプトを組む内容だったんですが、私はVBでプログラムを組んだ経験があるので別に苦ではありませんでしたし、一緒に参加した人も基本情報技術者試験の資格を持っている人だったので苦にしてませんでした。ちなみにAさんはプログラミングの経験はありますか?」
Aさん「・・・・・ありません。」
村上「では、そういう人にも合わせた講習をやってくれると思いますよ。」
この会話をしたときにも改めて思いました。「あぁ、こういったいつも否定ばかりしたり、何か新しいことに取り組む指示があったときに何かと拒絶する人は、結果として手にするスキルは少なく限定されていくんだ」と。
もちろんそういった言動や行動パターンが全ての原因ではないと思いますが、よくよく思い返してみると、他にも同様に、反発したり素直に行動しない人が持っているスキルに着目してみると、「へ~、こんなこともできるんだ~」と感心するような、幅広いスキルを持っている人はほとんどいなかったのです。
例えば、とある別の成形メーカーの加工部門でのお話しで、そこはCAMオペレーターとマシニングオペレーターが完全分業されている現場だったのですが、現状よりももっと多くの出来高を上げるため何か案が欲しいと依頼を受けた際、日中昼間と夜間の無人運転で加工条件を変え、日中昼間の出来高をさらに増やしていく案を提案したのですが、あるベテランの段取りオペレーターから強い反発を受けました。
この方の言われる理由としては、やはり一部対応が難しいワークがあるとか、技能が追いついていない作業者が対応できないなどの理由を挙げていたのですが、全く同じ仕事内容の会社がすでにやっている点からすると、やはり通過点のような課題であり、聞いているとどうしてもやりたくないための言い訳のように聞こえました。やはりすでにやっている会社がありますので。
私から見た「やれない(やりたくない)」理由は、何人かのマシニングオペレーターさんが、そもそも加工条件を決める知識やノウハウがないこと、そして NC プログラムの編集を行うために CAM をワンポイントで使える操作スキルがないことによるものだと思いました。
本題である、この反発していたベテランオペレーターさんの持っているスキルを棚卸ししてみたところ、機械オペレーターとして20年以上の経験があるものの、NCプログラムについては、あくまで手打ち出来るレベルのGコードプログラムを使った加工が出来るまでに限定されており、自らCAMを使うことはできませんし、放電加工など他の加工の経験もありませんでした。
また金型部門の所属でありながら、金型の分解・組み立てなど、金型の構造や用途までの知識を持っておらず、あくまで加工図面があってはじめて部品が理解できるという感じでした。
これもあくまで全ての原因というわけではありませんが、こうした反発をする人の一例として、経験年数の割には狭い限られたスキルしか持っていない事例だと思ったわけです。
こういった事例もありました。
コンサル先にて、3次元CAMを初めて触るという人に、3次元加工の手順からCAMの操作まで、手取り足取り指導するというお手伝いをした際のエピソードです。
その会社でオペレーターに任命されたCさんは、ちょっと面倒くさがりなタイプの人で、ダミー面を作るなど手間のかかる操作については、何かと理由をつけて絶対にやろうとはしない人でした。
その理由も「夜9時を回ったときのようにギリギリの時間で作業しているときだったら、こんなことをしていられるのか?」など、現実に起こるかどうかわからない事例を挙げては、何かとやらずに回避することに必死でした。
私としては、まだ実戦本番ではなく研修中であるならば、出来る限り吸収できるものはしておいた方が、年齢も20代でもあることですし、後々自分のためにもなると思ったのですがCさんは違う価値観を持っていました。
さてこのエピソードについても、このCさんの態度のお話ではなく、こうした面倒くさがりな結果、このCさんのスキルはどうなっていたかを見た結果、やはり元々担当していた2次元CAMの仕事について、決まったテンプレートでしかCAMデータが作れない、自分で工程をアレンジしても根拠のない工程になっていたり(決めた理由が明確に答えられない)、新しい工具を自分で選定できない(探せない)、新しく使うと決まった工具の加工条件も自分では決められないなど、やや底が浅いオペレーターになっていました。
以前やっていたという機械オペレーター作業についても、いくつか種類の機械をなんとなく触れるレベルで、やはりCさんのキラースキルと言うべき、個性を示せるスキルは持っていないようでした。
これもここまで見てきた中では自然な流れだと思っていまして、ここまで面倒くさがりで、ちょっとした作業についても、あれこれ難癖をつけて回避しているようですと、やはり持つスキルは限られたものになってしまうと思いました。
こういったCAMオペレーターさんの事例は、他にもありました。
CAMオペレーターのDさんは、自分で加工条件を考えるのが億劫なのか、CAMを販売しているディーラーサポートに、加工条件を含めた工具データを、全てお任せで提供してもらわないと自分では設定できませんでした。
私も含め、多くのCAMオペレーターさんは、自分で工具設定することが多いと思いますので、ちょっと意外だと思われるかもしれませんが、実際にこういった方はおられます。
やはりこの人のスキルを棚卸ししてみますと、経験年数の割には持っているスキルは少ないなと思いました。
またマシニングセンターだけでなくワイヤーカット加工についても同様なケースがあります。例えば多くの会社で行われている多数個かけについても、あるメーカーの金型部門のEさんは、プログラム編集などを億劫がって何かと理由をつけては一向にやろうとしませんでした。
自社のワークには合わないなど色々と理由は挙げるのですが、Eさんのスキルに着目したところ、やはりGコードプログラムを読むことができない、したがって複数のNCプログラムを結合編集することがそもそもできないといった実状が見えました。
やらないからやれない、やれないからやらない、これは同じような言葉に聞こえますが、この違いは重要です。
結果として「やれないからやらない」となっているのですが、それを覆い隠すため、他に色々と理由を持ってきているのですが、やはりそもそも「やらないからやれない」状況に陥っています。
したがってそういった人の今後の望ましい対応としては、会社がどうのとか広い話はひとまず置いておいて、まず自分個人のスキルはどの程度なのか見つめなおしてみるのが良いのではないかと思っています。そして何か新しい取り組みに挑戦するときには、「ときには向こう見ずに飛び込んでみる」という姿勢と、「その結果自分に残るものもある」ということを意識してみるのが良いのではないでしょうか。
ざっくり一言で言ってしまうと、もう少し素直になりましょう、ということになってしまうのですが。
ですが、何でもかんでも素直過ぎるのも問題でして、私も20代中頃に、上司にVB(ビジュアルベーシック)というプログラミング言語を紹介され、それを使って自宅で手作り穴あけ CAM を作るという、今で考えたらトンデモない指示を受け、まだ世間を知らない私は言われるままにプログラム言語を仕事の後の自宅で勉強し、家で仕事が終わってから夜中に手作りCAMを作ったのですが、そのおかげで、その後の転職先ではキラースキルとして活用することができました。
もちろんこんな自宅でやるような指示命令は労働基準法違反で、あくまで私個人の良くない事例の昔話に過ぎませんが、会社の就業時間内で、しかも会社の指示として取り組むことができるならば、時には反発せずに思い切って挑戦することで、自分のスキルや経験という財産を、会社の時間を使って得ることができます。
最後に、今回のエピソードを書いていると、私自身やコンサル先で参考にしてもらうことがある、佐賀県武雄市が職員採用試験を案内するホームページに掲載されていた「求めない人材」のことを、今回書いていて思い出しました。
今回のコラムのエピソードに出てきた人は、この14項目のうち、例えば「自分の役割に壁をつくる人」とか「考えるのが億劫(おっくう)な人」、「周囲の雰囲気を暗くさせる人」、「変化より安泰を望む人」、「要領こそがすべてと思っている人」、「自分とは違うやり方を認めない人」などに該当すると思います。
これらの14項目は、製造現場でお仕事をする人にも参考になると思っています。
もしこれらに該当する部下を持つという方はぜひ、少し自分をコントロールしてでも気を付けてはどうかとお話しされてはいかがでしょうか。また私自身も含め、もし自分に思い当たるところがあるという方は、自分自身をそうでない方向にコントロールしていくことで、結果技術者としても、後々自分に残るスキルをさらに多く身に付けていくことに繋がっていくのではないでしょうか。
参考になれば幸いです。
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コラム投稿者
金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054
