【自己啓発シリーズ⑤】金型メーカー・部品加工メーカーの処世術(勝ち組社員になるために)

【改訂版】責任感や使命感の薄い社員にどう対処する?
目次

【自己啓発シリーズ⑤】金型メーカー・部品加工メーカーの処世術(勝ち組社員になるために)

【テーマ】自分の市場価値を考えてみる(まだ知らないことはないか?)

今回の内容を読んだ後に取り組める実践ワークは次のものになります。

  • ご自分の市場価値はどのくらいだと思いますか?
    表現方法は何でも構いませんので、考えてみてください。例えば「上の中」くらいとか、「中の上」といった言語表現でも構いませんし、「同業者が100人いたら上から40番目くらいかな」など、数値表現の方がわかりやすいかと思います。
    また担当工程ごとでも構いません。「ワイヤーカットなら100人中、上から20番目くらい」などです。「同年代でならトップの方かな」など条件を絞った表現もあるかと思います。
  • ご自身の市場価値を書いたうえで、まだ自分が「知らない」「できない」と思えるジャンルや項目などはありますでしょうか?
    例えば、マシニング加工で言えば、「まだ使ったことがない工具がある」とか、「段取りオペレーターはやったことがあるがCAMデータまで作ったことがない」などです。
    その他、「焼入れのメカニズムまでは知らない」とか、「窒化やコーティングの種類までわからない」とか、「組み立てまではやったことがない」など、金型の部品や構造にかかわる知識でも構いません。

今回のテーマ「自分の市場価値を意識する」ですが、これは転職を促すものではなく、伝えたいことの本質は「まだ自分が知らないこと・できないことはないか?」を追求していく方が、今の会社で成長していくための「伸びしろ」に気づくこともあるのでは、ということです。

これを書こうと思ったきっかけは、ある量産メーカーの金型部門におられた、その道20年を超える経験を持つAさんが発した言葉からでした。

Aさんはプレス金型製作の現場仕事を長年やられているベテランでしたが、ある日、勤めている会社の経営者さんと口論になり、会社を辞めるかもという言葉を出したほど揉めたそうです。

結果的に退社までには至らなかったのですが、後日Aさんから私に話してくれたのは、「実は友達が勤めている会社からスカウトされていて、お前ほどの実力ならウチの会社は絶対に欲しいってなるよって言われてるんです」という内容でした。

これを聞いたとき、私はちょっと怖くなりました。というのは実際こちらの会社のコンサルティングをすることになったのは、先ほど話に出てきた経営者さんから、「ウチの金型部門はかなり時代遅れになっているので、なんとかして欲しい」というものだったからです。

本テーマのきっかけになった事例

実際にこちらの現場は、Aさん個人に限らず、部署として次のような状況でした。

  • ドリルはハイスしか使ったことがなく、超硬ドリルは全く使ったことがない。その他、刃先交換式やチップ式のドリルは存在も知らなかった。
  • エンドミルの加工では、ボールエンドミルのみ超硬のものを使ったことがあるだけで、その他はハイスのラフィングエンドミルやスクエアエンドミルしか使ったことがなかった。スローアウェイカッターや高送りカッターは存在も知らなかった。
  • ハンドワークでの穴あけ作業については、ドリルを手で研ぐことができず、自動研ぎ機を使わないと研げなかった。
  • プレートの平面研磨加工について、反りをとるという工程の存在を知らなかったため、厚さ寸法を出すことはできても、定盤の上でクルクルと回るくらい、反りが残った状態でしか仕上げることができなかった。その状態のまま、後工程のワイヤーカットやマシニング加工を行っていた。
  • ワイヤーカット加工について、1stカットしか出来なかった。2ndカット以降の加工の存在は知っていたが、一度もやったことがなかった。したがって、社内で製作するインロー構造のはめ合い寸法は、かなり大き目の緩い状態で加工していた。
  • マシニングセンターについて、バイスを使う段取りをほとんどやったことがなかった。ほぼ全ての加工は松葉クランプを使っており、小さなワークであっても段取りに時間がかかっていた。
  • 工具カタログを見ても、ピンポイントで使用する工具と同じ直径の工具の条件(S値・F値)が書いていないと、自分で切削速度と送り量を使って計算することが出来なかった。
  • PVDコーティングとCVDコーティングの違いなどを知らなかった。また金型で使用する改良ダイス鋼の名前は知っていても、特性まで知らなかったため、状況に応じて使い分ける知識がなかった。なんとなく思いつきでそれぞれの鋼材を使っていた。
  • マシニング加工においてもワイヤーカットにおいても、応力変形などを考慮して、高精度に仕上げる知識はなかったため、毎回加工する部品寸法はバラついていた。

マシニングセンターによる3次元加工については、仕上げ以外はハイス工具で加工しているため、同業他社に比べると、とんでもなく時間がかかっていました。私から見て、今どきの工具なら10時間以内で終わるなと思われる形状であっても、100時間近くの時間をかけて加工していました。

また、こちらの金型部門で製作された新規型や修理された金型を使う量産部門では、精度がバラつく構成部品の金型であったために、量産時に謎の寸法のバラツキや製品キズ、壊れる金型などに頻繁に悩まされていました。そして、それをまた何度も何度も繰り返し、直しては壊れ、直しては壊れを繰り返していたため、そうした状況を見かねた経営者さんから何とかしたいと話があったわけです。

ほとんどの読者の方が、前述した現場の事例について、「え?嘘でしょ」と思われたかもしれませんが、こういった事例は起こっています。

実質こちらの現場ではAさんが一番古く、仕事を知っているという立場であり、現場の「長」でした。すなわち「Aさんの技術レベル=こちらの会社の最高レベル」といっていい状況でした。

どうしてこうなってしまうのかはシンプルな話です。同業他社はどうやっているのかを知らなければ、今の自分たちが「最」先端とまではいかなくても、先端ぐらいを走っているくらいの技術のつもりでモノを作っていると思ってしまうかもしれません。

また、20年を超える経験があっても、Aさんたち金型部門の皆さんは誰一人、展示会等に一度も行ったことがないそうで、結果あたかも「浦島太郎」のような状態になっていました。

ここで今回のテーマに戻るのですが、このAさんご自身は、他社に転職しても全然余裕で通用すると思っており、勝るとも劣っていないと思っていたわけです。

したがって、反面教師としてこのような状況にならないためには、自社内だけではなく、同業他社を含めた中での位置づけで、自分自身の「市場価値はどのくらいか」を意識しないといけないのではと思うわけです。

仮に平均値くらいかなとか、逆に、上の方でいいセン行ってるかなとか、まだ平均までいっていないかな、などと考えることで、まだ自分の知らないことや知っておきたいこと、伸ばせるスキルがあることなどを意識することができるのではないでしょうか。

逆にその「市場価値」を意識しないと、まさに今回のAさんのように、実は市場価値は高くないのに、自分では高く買ってもらえるという、ちょっと世間の水準からはズレた発想をしてしまうかもしれません。

自分の市場価値を認識する手段の一例

さて、今回の本題は「市場価値を知る」ことも大事ですが「まだ自分が知らないことはないか?」を意識することの方が重要だという話でしたが、とは言え、そもそもどうやって自分の市場価値を認識するのかについての方も、少し触れておきたいと思います。

手段としては、次のようなことが考えられます。

  • まずはやはり展示会には出向く。最新の機械や工具を見て回るのも良いが、インターモールドなどであれば、同業者の加工品を見ておく。そこで素朴な疑問をぶつけてたりして情報を得る。
  • 金型や工具、工作機械などの月刊専門誌を毎月見る。そこには同業者のことも書いてあるので、正直多少盛ってある部分もあるかもしれないが、それでも刺激を受けることはできる。
  • 納品や引き取りなどのついでで、協力メーカーの現場を見させてもらう。邪魔にならない程度に、話が聞ければ聞き取りして情報収集する。

刺激を受けた例と言えば、私の場合、プレスメーカーの金型部門に勤めていたときの経験談ですが、大手工具メーカーから来た腕のいい転職者さんに、散々こき下ろされ、そのときに強い刺激を受けました。20代前半の頃のことです。

先ほどの A さんは 転職を思いとどまりましたが、もしも転職に踏み切っていたら私とは逆のパターンで打ちのめされていたもかもしれません。私の場合は外部から来た転職者さんに打ちのめされましたが、A さんの場合は、自分が転職者となって転職先の現場で打ちのめされていたかもしれませんね。

外部の人と接するときのための準備

私はその打ちのめされたときに感じましたが、僅かずつでも構いません、専門知識を得るための勉強はできるだけやっておいた方が良いと思います。

理由は、経験だけで得る知識と勘コツで勝負するのも良いかもしれませんが、書籍や研修などで得られる専門知識はあった方が、特に「外部」の人と対等に話をするのに有効だからです。

先ほど挙げた私の経験では、ドリル研ぎ一つとっても「シンニング」という言葉すら知らなかった当時の私は、その転職者さんに対して、とても恥ずかしい思いをしました。

例えば、マルテンサイトという言葉とか、切削条件の計算式であったりそのとき出てくる用語とか、工具選定の際のP種・M種・H種とか、超硬材種の種類とか、先ほどAさんの事例で出てきたコーティング種類のPVDとCVDの違いとか、その他挙げだしたらキリがありませんが、やはり身の回りの仕事にかかわる範疇での専門知識は、きちんと勉強して身に付けておいた方が格好がつきます(もちろん工学系の学校を出られた方は問題ないと思います)。

特に転職でキャリアアップを狙うのでしたら尚更かと思います。

逆に専門知識や用語を知らないと、やはり外部の人に対して、恥ずかしい想いをする可能性が高くなると思います。外部の人から恥ずかしい思いをした、もう一つの私の体験談ですが、同じく20代前半の頃、勤めていた会社の現場に、8番のマシニングセンターが入ることになり、担当者になった私が、初期導入教育を受けていたときのことです。

何も考えないまま、一律に何でもかんでも「F20」と遅い送り条件を、穴あけ固定サイクルのプログラムに入力する私を見て、工作機械メーカーの教育担当の人が、教育2日目の最後の最後にたまりかねて、こう言いました。

「いい加減、我慢できなくなりましたわ。さすがにこんな条件で加工してたら、どんなにいい機械でも機械が泣きますわ」と。

当時の私は、さすがにショックはショックでしたが、素直に自分の力量のなさを痛感するしかありませんでした。

その日から加工条件を気にするようになりました。今から思うと、あの日、その教育担当者さんに言われた言葉には感謝しています。

まとめ(勝ち組社員になるために)

さて、今回の内容をまとめますと、

  1. あまりに内に籠ってしまうと、同業他社との違いに意識が行かなくなってしまい、他社より優れているにしろ劣っているにしろ、自分を高めようとするインセンティブが弱まってしまう可能性がある。
  2. 外部の人に接するときに備えて、知識武装はしておいた方が望ましい(恥ずかしくない)。
  3. 結局会社どうしは厳しい競争にさらされているので、その中で仕事をする社員さん個人も、結果的に同業他社の社員さんと力量比較されていることと同義になる(市場価値は無視できない)。

と、このような感じになります。

金型メーカーや部品加工メーカーの業界は常に競争にさらされており、安くて良いものが作れる会社ほど生き残っていくという、厳しい世界です。

そういった中、競争にさらされている会社の中でお仕事をされる社員さん一人ひとりもまた同じく、厳しい競争の中で仕事をしていると言っても過言ではありません。

そうなると、転職するしないに関係なく、同業他社の社員さんとの技術・知識レベルの違いを意識せざるを得ず、ということは結果的に、自分自身の市場価値を意識せざるを得ないのではないでしょうか。

したがって、ご自身の市場価値を意識しながら、「まだ知らないことはないか」と、ご自分を疑ってみるのも良いかもしれません。

少しでもご自分の市場価値を高めていこうとされる方の一助になれば幸いです。

※ 会社ごとに評価の基準も異なるため、本内容は結果を保証するものではありませんのでご了承ください。

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コラム投稿者

金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054

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