金型メーカーや部品加工メーカーにおける残業を無くせない事情について

ものづくりの現場で「センスが良いとされる人」を考察してみます
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金型メーカーや部品加工メーカーにおける残業を無くせない事情について

ここ最近は、自己啓発シリーズということで、個人読者向けの内容を書いていましたが、久々に組織向けの内容を書いてみたいと思います。

また私は、先に中小企業診断士の資格を取っていますが社会保険労務士でもありますので、今回は社労士らしいことを書いてみたいと思います。

その内容についても、社労士協会への事務所登録名である「金型・部品加工業専門 社労士・診断士事務所」らしく、金型メーカーや部品加工メーカー向けの内容で書こうと思います。

個人と会社の事情、それぞれ両方がある

さて今回のタイトルである「残業を無くせない事情」ですが、個人の事情と会社の事情、2つの切り口から見ていきたいと思います。

まず個人の事情としては、月並みですが手取り給料の問題があります。まさに今この執筆時、少子化対策の財源として社会保険料UPが取りざたされていますが、もし料率等が上がれば、まさに手取り給料がさらに減ることになります。

金型メーカーや部品加工メーカーでお仕事をする人にとって、ご結婚されていたり、住宅ローンがあったり、車のローンを抱えていたりすると、残業分を除く基本給(+諸手当)から、社会保険料や所得税などを控除された残りの手取りだけの金額になってしまうと、かなり厳しいという方は多いと思います。

よく聞くのは、最低でも手取り額が基本給より低くなるのは嫌だし困るという意見です。

ですが、中には家庭の事情で残業出来ないといった人もいて、一部には手取り額が減らないよう基本給を上げてもらっている人もいるようですが、業績が厳しい金型メーカーなどでそういった人が多くいると会社は大変厳しくなると思います。

一方、会社の事情としては、営業戦略の問題があります。

年々下がる一方の、金型や部品加工の受注単価ですが、何とかそこを短納期受注などによって補填している事情があります。

例えば厳しい納期の仕事を受注して、その分受注単価を高くしてもらう方法です。これには実際にモノを作る現場の従業員さんの残業や休出が欠かせません。

こうした戦略のない一般的な単価、もしくは安い単価で受けた仕事を、ズルズルと長時間残業や休日出勤で対応していると会社は苦しくなる一方ですが、
戦略に沿った高い受注単価で受けた仕事を、残業・休出で対応していくことは、海の向こうで半値以下で仕事を受けているところに対抗していくためには必須の対策だと思われます。

ちなみに先日、顧問先企業がマシニングセンターで使用するミーリングチャックを、中国の通販サイトで3千円で購入していたのにはとても驚きました。こういったところと勝負していかなければならない日本企業は、本当に大変だと痛感しました。

さて、こうした対応について、労働者に負担をかけないよう「自動化」を推進していくことが、本来の日本の町工場にあるべき対応策なのだと思われますが、現実にはなかなか厳しいところもあると思います。

自動段取りのマシニング加工も近年着々と導入されていますが、実際にはその機械の横で、インローのポケットを、機械に乗せて仕上げ直している光景もまだ見かけます。

工場内の部品の運搬で使用するAGVも、すでに導入している企業もあって私も勧めるケースもあるのですが、どうしても一定の物量がないと手間のデメリットの方が強そうだという理由で、導入には踏み切れないという企業も多いです。

残業・臨出に対するジレンマ

私は社労士として、残業はできるだけ無い方が労務的に望ましいと思う反面、中小企業診断士としては 外注費より残業代の方が安いと思っています。

ですから外注に出して残業を無くすより、残業して内製した方が労働分配率は良くなることの方が多いと思っています(外注加工メーカーでのチャージ金額と社員さんの時給×1.25の比較)。

このコラムの執筆時の年には全業界で賃上げの機運が高まっており、大企業では軒並み満額ベースアップなどがされておりますが、まだまだ私が訪問している金型メーカーや部品加工メーカーの現場でお仕事をする人については、基本給が21万円とか25万円前後といった人が多く、自分もサラリーマン時代そうでしたが、住宅ローンや車のローンを抱えていると、一定時間残業をやらないと手取り給料だけでは完全に足りません。

また会社としても、金型メーカーや部品加工メーカー以外の事例では、溶接製缶業などハンドワーク主体の作業で短納期受注をしようとすると、必ず残業ありきになります。

もし残業の「時間」だけを見て、それを本当に減らそうとするならば、「見込み残業代」を導入しないと難しいと思われます。

見込み残業代とは、残業をやってもやらなくても事前に決めておいた残業時間分、例えば見込む分を30時間と設定すると、その分の残業代は必ず支払うといった制度のことです。

これであれば、仮に頑張って効率よく仕事をして、毎日定時で帰ったとしても、30時間分の残業代は会社に支払ってもらえるので、一見残業時間は減らせるようにも思えます。

また逆に、ある月が30時間を超える残業になってしまった場合、その超過分はきちんと時給換算して支払わないと労基法違反になってしまいます。

ただし、これを読んだ方は容易に想像されると思いますが、そもそも残業30時間分を想定して、各作業者にちょうど良い分量の仕事を割り振れるのかとか、30時間どころか残業になる分の仕事量を、逆にやらなくなって毎日定時で帰るようになってしまうのではないかとか、逆に経営者からは勿体ない精神が働き、30時間分以上の仕事をどんどん押し付けられてくるのではないか、等々、双方の思惑が色々と出てくると思われます。

たしかに私が20代だった頃、当時課長に昇進し固定給になった上司は、それまで当たり前のように50時間以上やっていた残業がパタッとゼロになりました。しかも仕事の内容は全く変わっていませんでした。これは、それまで意図的に残業をやっていたということに他なりません。ですが金型メーカーや部品加工メーカーにおいて、これは本当に「あるある」話ですよね。

また、学歴は高くないですが、大企業で働く人並みにたくさんお金を稼ぎたいという人も、やはり少なからず金型メーカーや部品加工メーカーにはおられます。

昔こういう人は、独立して工場を立ち上げていたと思います。ですが今は、リーマンショックやコロナショックなどを経験し、「一寸先は闇」を体感的に知っているので、よほどの意欲がなければ、フリーランスを含め、製造現場の仕事で独立する人は極めて少ないのが実状です。

そうなると、大企業に勤めているわけではないですが、たくさんお金を稼ぎたいという人は「時間」で稼ぐしかないと考える人も出てくるわけです。ですが今の国の制度は、そういった人が置き去りにされているように思われます。

まとめ

さて今回は、金型メーカーや部品加工メーカーにおける「なぜ残業は無くならないか」について、そもそも残業を無くせないという理由を、個人と会社、それぞれの切り口から、その一部を見てきました。

労働者を守るというお国の方針もあるかと思いますが、それでも短納期対応などの会社が取りたい戦略に沿って、会社の付加価値になる残業や休出であれば、完全に無くさなくても良いのではないかというのが、金型・部品加工業専門のコンサルタントである私の考えです。

とはいえ、お金を稼ぎたいという人も、あくまで「時間」の長さだけではなく、時間「単価」の方も上げていかなければ、年齢を重ねると共に、体力的に苦しくなってくると思います。

そういう点では、この執筆時、岸田政権で取られている方針、職業能力の再開発・再教育の取り組みである「リスキリング」も、金型メーカーや部品加工メーカーにおいては必要な取り組みではないかと思われます。

そういう意味では、このご時世、完全なハンドワーク主体の職人技能仕事の会社などではない限り、労働「時間」だけで給料を増やしていこうと考えるのは、望ましいことではないかもしれません。

そもそも国が残業を減らしていこうとするのは、長すぎる労働時間は、健康面での悪影響があり、長時間になった労働は、お酒を飲んでほろ酔い状態になったときと変わらない、そういった状態での思考力や判断力、注意力で仕事をしていることになり、能率が落ちるどころか製造現場においては非常に危険でもあるからだと思います。

こういったこともあり、国は長すぎる日本の平均労働時間を減らしていこうとしているわけですが、どうしてもお金を稼ぎたいという個人や会社の事情もあります。

今回はどうやって残業を減らしていくかという議論よりも、なぜ無くせないのかがメインテーマですので、ここまでにしておきますが、そもそも会社自体が儲かっていないと高いお給料は払えないと思います。経営状態が苦しい会社さんで、いくらお金目的とは言え、付加価値のない残業を長時間されてしまうと、会社はとても苦しくなってしまいます。

ですから今回一番お伝えしたいまとめの言葉としては、金型メーカーや部品加工メーカーにおいては「戦略的に無くせない残業もある、また個人の事情で自らすすんで残業・休出するのであれば、付加価値のある仕事でやりましょう」ということになります。

これを読んでくださっている御社はいかがでしょうか。参考になれば幸いです。

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金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054

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