第1回目、プレス板成形のCAE検証
当事務所では、LS-Dynaという解析ソフトを使っています。
こちらのソフトは、プレス板成形専用というわけではなく、汎用的にさまざまな非線形の解析に使うことができます。
プレス板成形専門ソフトでシュミレーションをする場合と比べ、若干不自由するところもありますが、その分、専用ソフトと比較すると安価で購入できます。
詳しい機能紹介は割愛するとして、このソフトには、プレス板成形向けのアプリケーションがありますので、そちらの機能を使うことで、抜きせん断加工以外(設定次第では可能)、その他にも制約はありますが、ある程度のプレス板成形のシュミレーションができます。
ぜひ、当事務所で解析している事例を紹介したい、というところですが、普段は、機密事項の制約のある企業様の形状を扱っていることが多いため、公開できる案件はほとんどありません。
そこで、市販のプレス専門書に説明されている事例を使い、シュミレーションではどのように再現されるのか、いくつか試していこうと思います。
今回、取り組む専門書は、下の「プレス加工のツボとコツQ&A」です。
タイトル「プレス加工のツボとコツQ&A」 著者:吉田弘美 著 出版社:日刊工業新聞社 出版年:2008
今回は、こちらの64ページにかかれている「フランジのある製品を曲げるとフランジにしわが出る」を取り上げてみたいと思います。
こちらには、下のような図が書かれており、いくつか対策例も記載されております。
その対策方法の曲げ方についても、いずれシュミレーションしてみたいと思いますが、今回はまず、どのようにしわがでるのか、結果は本に記載されておりますが、シュミレーションの醍醐味の一つである、途中経過がどのようになるのかを見てみたいと思います。
この本に記載されている工程は、上図のように、先にフランジを曲げてから、2工程目で、L字に折り曲げていますが、私の経験では、この形状は順送金型で扱うことが多く、その場合、L字に曲げるほうを先に行っていましたので、その工程設計でシュミレーションをしました。
各工程の金型は、下図のとおりです。
1工程目の下型
2工程目の下型
ブランクは、下図の形状です。板厚は1ミリ、SPC材の設定です。
まず、1工程目のシュミレーション結果は次のようになりました。
ブランクのみで表示すると、このような形状になりました。
ここから、この形状について、応力などの状態を持たせたまま、2工程目のフランジ曲げを行います。
下型については、下図のように、中パッド仕様にして、クッション圧をかけて浮かせ、1工程目で曲げたL字形状を押えつつ、フランジを折り曲げていきます。
この状態から上型が入っていき、赤色で示すブランク形状が曲がっていくという動きになります。
※ 上型は非表示にしていますので、見えません。
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最終的には、このように、しわになる部分が伸びきった表現になりました。
この部位を、金型の表示は消して、ブランクだけの表示にし、本の記載内容のようなしわが、どのように発生しているか、拡大して見てみると・・・
このように、縮められるフランジ部が、重なるようにして、しわが発生しているのがわかります。
板厚をコンタ表示にして見てみると・・・
重なる部分の板厚は、外側に向かって厚くなっているようです。
もちろん、金型のダイRやクッション圧、板材の材質を、440Mpaや590Mpaなど、ハイテンの設定にすると、また結果は変わってくるはずです。
それらの調整を、コンピュータの画面の中で出来ることが、シュミレーションを使うことの大きなメリットとされています。
また、このようにシュミレーションソフトを使うと、専門書の内容を、動的に学習することができます。
普段の実務では、こうした専門書に書かれている内容を、複合的に集めた加工が多いと思いますが、こと学習する点においては、個別に要点を分け、勉強するほうが確実に学習効果は高いです。
このように、当事務所では、実務に活かせることを重点においた、基礎学習、応用学習をサポートしておりますので、ご興味ありましたら、お問い合わせください。
※ 実際の加工においては、被削材の物性、機械剛性、工具の消耗状態、被削材のクランプ状態などの外的要因で、如何様にも状態は変化するため、実際の対処については、自己責任のうえ、充分な確認・検証を行ったうえで、加工してください。
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コラム投稿者
金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054