第2回目、プレス板成形のCAE検証
市販専門書の内容を使って実践検証する当サイトの企画の2回目です。
前回、「プレス加工のツボとコツQ&A」という専門書を第1回目ということで、とりあげました。
引き続き、本の64ページに書かれている「フランジのある製品を曲げるとフランジにしわが出る」の続きを見ていきます。
このフランジ曲げですが、本に記載されている図に書かれているとおり、第2工程でL字に曲げられると、フランジ部は圧縮されるため、挫屈が発生します。
そこで、材料が集まってくるフランジ部の凹R部の板幅をカットしておく対策が、本書に記載されています。
前回、当事務所で使用しているシュミレーションソフト、LS-Dynaを使ってシュミレーションしたところ、やはり本の図のように、挫屈の現象が表れました。
そこで今回は、本に記載されている対策に習い、ブランク形状をカットして、シュミレーションにかけてみました。
前回のように、L曲げを先に行い、2工程目にフランジ曲げを行ったところ、下図のようになりました。
輪郭形状を少し凹ませ過ぎたようです。そこで、少し微調整してみます。
再度、シュミレーションにかけてみました。
先ほどよりも、凹みが緩和されました。
真横から見てみると・・・
やはり凹みが緩和しているようです。
もう少し、ブランク形状を微調整してみます。
このブランクの、2工程目の成形後は、下のようになりました。
今度は若干膨らんでしまったようです。
再度また、微調整をかけます・・・といったように、実際の展開形状を出す作業は、このようにやっていくわけですね。
シュミレーションが無かった時代、私も現役時代はさんざんやりましたが、トライ用のプレス機に金型を取り付けておき、ワイヤーカットやレーザーでカットした展開の予測形状のブランク板を、プレスしながら、もし製品寸法が違えば、再度微調整し、目的の製品形状になるまで、何度も展開形状を修正してはプレスし、探っていきました。
しかも、加工後の金型の成形部に問題が無ければよいのですが、そもそも製品にカジリが出たり、当たり傷が出たりすると、展開出し作業の前に、金型修正の作業が入ります。
シュミレーションという便利なツールがある今では、展開出し作業をコンピューター上で行うことができることで、実際に金型を製作してからプレス作業を行う場合と比較して、効率的に行うことができると思います。
しかも、金型形状を変えるという大作業が発生しても、コンピューターの中であれば、実際に加工するよりは、少ない工数で行うことができます。
さて、再度、微調整した結果が、下図になります。
今、市販されているシュミレーションソフトは、展開形状を自動計算してくれる機能があります。
ただ今回は、そもそも展開出し作業はこのように行っていくもの、材料はこのように動くということを知る機会として、昔ながらの手順を踏襲してシュミレーション作業を行いました。
このように、「市販専門書の実践検証」は、答えを示してくれている専門書の内容について、自らその根拠を探索していくという企画になります。
引き続き、フランジ曲げについては、別の機会でも触れていきたいと思います。
参考文献「プレス加工のツボとコツQ&A」 著者:吉田弘美 著 出版社:日刊工業新聞社 出版年:2008
※ 実際の加工においては、被削材の物性、機械剛性、工具の消耗状態、被削材のクランプ状態などの外的要因で、如何様にも状態は変化するため、実際の対処については、自己責任のうえ、充分な確認・検証を行ったうえで、加工してください。
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コラム投稿者
金型・部品加工業 専門コンサルティング
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