「純チタン2種の切削加工の見積もりはどうしたら良いですか?」
先日このような相談を受けました。その際に回答した内容をまとめてみました。
やはり、チタンと聞くと、エンドミルや旋盤加工したら「キーキー」なのかな?と思ってしまいます。
チタンと言っても、さまざまな種類があり、俗に言う、硬くて削りにくい「チタン」は、チタン合金、特に「6アルミ4バナ」と呼ばれる、Ti-6al-4vなどを言います。
では、今回ご質問いただいた、純チタン2種(TB340)の機械的性質を見てみます。
引張強さ(MPa) 400以上
耐力(MPa) 215以上
伸び% 23以上
※あくまで参考値ですので、正式な数値は別途、ご確認ください。
では、S50Cはどうかというと
引張強さ(MPa) 600以上
耐力(MPa) 360以上
伸び% 18以上
※あくまで参考値ですので、正式な数値は別途、ご確認ください。
我々がよく切削加工する機会の多い、S50Cと比較すると、このような感じです。
引張強さと耐力は、むしろS50Cの方が強いくらいで、機械のロードメーターは、こちらの方が大きく振れそうです。
ただし、伸びは、純チタン2種の方が伸びますので、
断続切削のフライスとは違い、今回対象としている旋盤加工は連続切削になりますので、
切りくずが折れにくいためつながりやすく、いわゆる「ねばい」といった現象が出そうです。
切りくずを折り、切れ味の良いタイプのブレーカチップを使った方がよさそうです。
また、純チタンの名が示す通り、純度の高い材料は、切削の際の破砕する起点になる合金成分が少ないため、やはり「ネバさ」が出ます。
ネバさは切削の際、切削抵抗や振動(ロードメーターの振れ幅)として現れます。ここは意識して注意したいところです。
ところで、とにかく削りにくいと言われる、Ti-6al-4vの材料特性はどうでしょうか。
時効処理する前の状態で、
引張強さ(MPa) 980以上
耐力(MPa) 920以上
伸び% 14以上
※あくまで参考値ですので、正式な数値は別途、ご確認ください。
数値データをみても、純チタン2種とは、同じチタンの名を冠していても、機械的な性質は異なりますし、
被削性についても、熱伝導率が低いため、エンドミルに熱がこもりやすく傷みやすいとか、
鉄やステンレスよりヤング率はむしろ低いため、切削時にビビりやすいといった、切削の際の難しさは色々あります。
したがいまして、「チタン」とはいっても、実際はどの種類のチタンなのか、把握しておくことが必要です。
また、技術者としては、被削材に対して、どういった機能を持つ工具が必要になるのか、考えて選択したいものです。
「チタン向けの工具よろしくね」と、代理店に丸投げしてしまうのは、なるべくやめましょう。
それと、こういった未知の材料の切削加工の見積もりは、リスクを感じるものですが、
こうした数値データを元に、よく扱う材料、たとえば、S50Cを基準に1.2倍するとか、1.5倍するといったように、
普段の実績から係数計算するという方法がやりやすいと思います。
※ 実際の加工においては、工具材種だけでなく、被削材の物性、機械剛性、工具の消耗状態、被削材のクランプ状態などの外的要因で、如何様にも状態は変化するため、実際の加工においては、自己責任のうえ、充分な確認・検証を行ったうえで、加工してください。
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金型・部品加工業 専門コンサルティング
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