金属プレスメーカー(量産・号口)の診断チェックシート

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金属プレスメーカー(量産・号口)の診断チェックシート

私は、中小企業診断士として経営面での診断仕事をすることもありますが、今回は、業績格差の激しい金属プレスメーカーに焦点をあて、元・金型技術者の視点から、一般的な経営診断の項目とは違ったアプローチの診断チェックシートをつくってみました。

次の10項目となります。

  1. 小ロットでも、単発ではなく順送で量産している。
  2. 型段取りにフォークリフトを使わない。
  3. 使用途中のコイル材の交換を苦にしない。
  4. カス詰まり・カス上がりなど、金型のトラブルが少ない。
  5. 腕のいい金型屋さんを囲い込んでいる。
  6. 不良の社外流出が少ない。
  7. 新規顧客獲得のための営業活動やトップセールスを常に行っている。
  8. 急な計画変更に柔軟に対応できる体制ができている。
  9. カラクリによる無人化の仕掛けをうまく多用している。
  10. 複合材のインサート成形など、やっかいだが単価の良い仕事も持っている。

詳しく見ていきます。

1.小ロットでも、単発ではなく順送で量産している。

これにより、無人化で空いた作業者を別の単発工程などにあてることができ、

その分、多くの仕事を受注することや外注へ出していた仕事の内製化が可能になります。

逆によくない傾向として、

例えば、「1ロット1,000個程度なら迷わず単発プレス」といったような

固定的な考えになってしまっている状況です。

小ロットでも迷わず順送工程にしている会社が儲かっています。

ただし、そのためには、

  • 型交換の時間を最低でも30分以内にする。
  • コイル材を途中でも苦にせず交換し、しかも迅速に行う。

などの技術が必要です。

儲かっているプレスメーカーは、1台のプレス機に対し、

順送段取り替えを1日に5回以上行っています。

このために、小ロット製品でも無人化生産ができ、逆に手の掛かる

単発プレスに人を張りつかせることができます。

(後述しますが、そういった単発プレス仕事は比較的単価が良い場合が多いです)

この段取り替えの速さは、実際に作業したことのある私から見ますと、

とても脅威的だと思いますしかし、儲かる企業はこれを実現します。

逆に単発プレスは、例えば、4工程の場合、通常の納期対応のため1個流しをすると、

4人が張り付くことになり、限りある作業者が多くとられ、受注を増やしたくてもなかなかできなくなります。

そのため、売り上げが上がらなくなる悪循環に陥ります。

2.型段取りにフォークリフトを使わない。

私も経験ありますが、フォークリフトを使うと型交換が遅くなります。

理由は次のとおりです。

  • リフトの順番待ちが多発する。
  • フォークとボルスターとの高さ合わせなど、位置調整に時間がかかる。
  • 段取りできる作業者が限られてしまい、効率性が低下する。

などです。

逆にリフトを使わないメーカーは、専用のチェンジャーや台車を使っており、

クレーンやフォークリフトなど動作に時間がかかり、順番待ちが起こる共有設備を使いません。

3.使用途中のコイル材の交換を苦にしない。

これを苦にすることでさまざまな弊害が生まれます。例えば、次のとおりです。

  • コイル材を最後まで打ち切るため、余剰在庫が生まれ、現金化が遅れる、
    余分な残業が増える、在庫スペースが増え効率性が犠牲になる、など弊害が発生する。
  • 小ロット製品は、単発にしたくなり、順送による無人化をしなくなる。

などです。

逆に、苦にしない会社は、コイルチェンジャーにも投資をしていますし、

外段取り化のための工夫を凝らしています。

4.カス詰まり・カス上がりなど、金型のトラブルが少ない。

金型のトラブルは、長時間の停止時間を生みます。

まず業績の厳しいプレスメーカーの多くは、このトラブルが多いです。

しかし、仕方のない側面もあります。

昨今の製品単価引き下げにより、金型にかける費用が少なくなり、逆に金型メーカーの

立場からしますと、「えー!順送でこの値段!?」というような引き合いが多くなりました。

それでも、仕事が空いてしまうタイミングになると、泣く泣く受注する時もあり、

シビアなコストで製作する型は、安定性や強度が犠牲になることもあるかもしれません。

そのような中でも、儲かるプレスメーカーは、力のある保全部門がいることが多く、

逆にトラブルの少ない金型に改修してしまう、修理が迅速、などの強みを持っています。

5.腕のいい金型屋さんを囲い込んでいる。

これについても、「商売上手」な経営者は抜け目がありません。

どこで知り合ってくるのか。紹介?呑み屋?いろいろなチャネルをお持ちの経営者は、

コイル材などの材料業者、塗装業者など、自分が不利にならない良いパートナーをちゃんと持っています。

この点はやはり「商売上手」と思わせられます。

製造現場を見させていただくと、「これは良い型屋さんを使ってるなぁ」と関心させられることがあります。

逆に、

  • ステージ数が多くて長い順送型でしかも曲げ絞り深さが深いのにも
    かかわらず、ストリッパプレートが1枚構造になっており、そのストリッパ
    プレートが激しく傾斜しながら上下稼働している。
  • 厚板、ハイテン材の抜き工程があるのに、バッキングプレートが熱処理されていない。
  • メンテナンス中の金型を見ると、ショルダーパンチやインロー構造のパンチがコーキングによって調整されている。

と、いったような金型を見ると、

これは生産余力をつくるどころか、常にトラブルシューティングに追われ、

その対応に四苦八苦してそうだなと想像できます。

やはり、腕の良い金型メーカーをパートナーに持つことはとても重要です。

6.不良の社外流出が少ない。

私も経験ありますが、これによるもっとも大きな弊害は、

  • 作業が停滞し、時間ロスが生まれ、受注量・外注費用に悪影響が出る。
  • エース級の作業者や型段取りできる管理者が顧客対応に奔走し、残された作業者の効率性が極端に落ちる。

などです。

やはり儲かっている会社は、工程品質が確立されており、そもそも金型トラブルが少ない、

検査レベルが高いなど、管理・モラル・技術、あらゆる面でしっかりしています。

7.新規顧客獲得のための営業活動・トップセールスを常に行っている。

やはり、これは重要です。儲かる会社のトップである社長は、外に出て、

単価の良い仕事に出会うチャンスを探っています。

「どこでその仕事を掴んだんですか?」という質問に、

「たまたまだけどさぁ・・・」と語り出す経営者は少なくありません。

8.急な計画変更に柔軟に対応できる体制ができている。

突発仕事や急なぶっこみは、どの中小企業でも例外なく存在します。

しかし、儲かる会社はグチをこぼしながらも、それを受け止め、さばける体制をつくっています。

逆に業績が厳しい会社は、恨み節だけで先に進んでいないケースをよく見受けます。

「あの会社は儲かってそうだなぁ」に見える会社も、例外なく飛び込み仕事はあると思います。

要は、これを受け止め、どう対処するかです。

9. カラクリによる無人化の仕掛けをうまく多用できている。

これも「商売上手」かどうかです。

「商売上手」な経営者は、自分でつくってしまうか、これも呑み屋で知り合うのか、

紹介してもらうのか、サッとつくってくれる業者をパートナーとして持っています。

からくり仕掛けによる無人化ができれば、その空いた人員を別の単発工程に

まわすことができ、受注量を増やすことができます。

もちろん、中長期的に見た投資対効果の判断は必要になります。

10.複合材のインサート成形など、やっかいだが単価の良い仕事も持っている。

これは会社の姿勢によります。

平均的にプレスメーカーに限らず、切削加工などにおいても、やっかいな製品は

技術的に大変ですが、単価が良い傾向にあります。

理由はシンプルです。そういった仕事は、やっかいな分だけ、競合相手が減るためです。

例えば、支給されたプラスチック部品を鉄材料でプレスによって挟み込むなど、

単発プレスで人が張り付き、効率性・品質管理で難易度の高い仕事に手を挙げる会社は少ないと思います。

しかし、そういった仕事こそライバルが減って、価格競争になりにくい仕事と言えます。

まとめ

以上、元・技術者からの視点で、金属プレスメーカーの経営診断チェックシート項目を考えてみました。

中小企業診断士として、金融機関を中心に依頼を受ける経営診断は小規模なメーカーが多いため、

経営面まで含んだ今回の内容は、小規模メーカー向けだったかもしれません。

しかしながら、今回私が一番言いたかったのは、経営診断や経営改善計画を作成する際には、

元々技術面で効率の良くない生産をしているプレスメーカーに対し、

例えば、ABC分析による粗利益の把握、その情報をベースにした価格交渉や撤退戦略をするコンサル手法は、

私自身がコンサルタントになる前に勤めていた会社で散々味わっていますが、結局、処方箋にはなりませんでした。

もし、現状業績の厳しい企業が、

儲かっている会社が当たり前のようにやっていることをやっていないのであれば、

それはどこをどう切っても、業績改善は難しいと思います。

今回のプレスメーカー向け経営診断チェックシート、参考になれば幸いです。

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