金型メーカー・加工メーカーを取り巻く労働基準法
私はホームページの方で「金型・部品加工業専門コンサルティング」と謳っておりますので、ご依頼をいただくお仕事は管理面や技術面のご相談が多いのですが、たまには中小企業診断士として、会社の経営面について書いてみたいと思います。
中小企業診断士の試験範囲には、企業経営理論という科目で労働基準法を扱います。
この労働基準法ですが、我々の業界、金型メーカーや部品加工メーカーでも関係する内容が出てきます。
その中で、今回は2つ取り上げてみたいと思います。
残業時間は15分刻みが良いのか30分刻みが良いのか
これは多く質問を受ける内容です。
定時で仕事が終わらなかったとき、会社の残業代は30分刻みでつくので、タイムカード打刻機の前で時間をつぶして待っている人や、掃除や雑談などで30分刻みの時間が来るまで時間をつぶしている社員がおり、そのことに不満を漏らす他の社員もいるためどうしたらよいか、などです。
会社さんによっては15分刻みのところもあります。
実は、この30分とか、15分刻み、そのものが違法です。
労働基準法では24条に、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」というものがあり、それに伴う端数処理の計算ルールがあります。
上記のリンク先だけに限らず、「残業時間 端数処理」などと検索すると一杯記事が出てきます。
これらによると、日々の残業について、例えば、30分の刻みのルールの会社の場合、30分に到達せず28分とかでタイムカードを押した場合、この28分については無かったことになります。
私も何社かの金型メーカーや機械加工メーカーに転職し働きましたが、全て15分か30分刻みの残業集計でした(30分の方が多かったかな)。
私は用が済んだらサッと帰りたい方でしたので、相当な時間がサービス残業になって消えていったと思います(時効は2年なので今となっては何もできませんが)。
話を戻しますと、残業時間の集計については、例え1分であってもカウントしないと法令違反ということになります。
ただし、1か月での合計では30分未満の時間については切り捨て、30分以上については切り上げるといった処理は構わないとされています。
実際に私が知っている会社さんで、2年分さかのぼって切り捨てた分を支払うよう指示を受けたところもあります。
労働基準法の条文のうち、まずこの点については気を付けた方が良さそうです。
「前の会社で部長でした」は本当?
これは問題となる条文ではなく、利用した方がお得という内容です。
私も金型部門の担当者として、採用時の面接担当を何度かやったことがあるのですが、面接を受けに来た人に「前職では設計部門の長をやってました」とか「前職では部長でした」などにより、
「お給料はお任せします」なら全く問題はないのですが、「前職で年収800万もらっていたので、こちらでも同じだけ欲しいです」とか「月給で手取り50万はいただきたいです」と来られると、
本当に部長職だったのかな?とか、本当にそれだけの給料だったのかな?と疑問に思ってしまうことがあります。
お給料については年末調整の際の源泉徴収票でわかるのですが、本当に部長職だったのかは本人の言葉を信じるしかありません。
そんなときのための労働基準法として、22条には、
労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。
これによれば、面接に来られた人に、前勤めていた会社で退職時の証明をもらってきて欲しいと言えば、本当に部長の地位にあったのかを確認することができます。
技術者として転職された方については、マシニング加工や放電加工のスキル等であれば、ある程度実務に入ると、長年やっていたのか、経験が浅いのかわかってしまうものですが。
でも、これらについてもトラブル多いですよね。
例えば、「NC旋盤やってました」と聞いて入社してもらっても、実際に経験があるのは段取り替えだけで、NCプログラムは全く自分で触ったこともないという人も結構いたりします。
ここまでを退職証明書でわかるかというと難しいと思いますが、まずは過剰な人件費を抑制していくためにも、うまく労働基準法を利用して事実確認することも大事かもしれません。
たまには士業らしいことも書いてみようと思いました。
参考になれば幸いです。
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コラム投稿者
金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054