当事務所のサービスである機械加工メーカーや金型メーカー向けの無料診断について、日刊工業新聞社さんの月刊誌「型技術」でも診断項目を紹介させていただいておりますが、前回に引き続き実際に診断した報告書の事例を紹介したいと思います。
今回の事例は最終回になります。会社全般での管理・調達面・5S状況についての内容です。
ある金型メーカーA社の診断報告
会社全般での管理
中長期的な教育の仕組みはあるか・役割ごとに責任と権限は設定できているか
教育については社員の退社などもあり、現在は中断されているようです。
どの会社でも諸事情はありますが、教育が滞っているのは長期的に考えても決して良い状況ではありませんので、早急に対策した方が良いと思います。
①会社全体・②部門ごと・③管理者ごとの年度目標は設定されているか
年度ごとの売上・利益目標は設定されており、まずは良好な状態と言えますが、そこからブレークダウンした、②部門ごと・③管理者ごとの年度目標が曖昧になっているようです。
各管理者や部門が「これを達成すれば、会社の年度目標を実現できる」といった上位目標とリンクした下位目標を設定することで、会社の年度目標が絵に描いた餅になることを回避できます。
早急に上記の仕組みを整えることが重要かと思います。
受注の山谷に対応するための多能工化は図れているか
ほぼ完全な分業体制のため、多能工化はできていません。
多能工化ができていないことで、「山」の受注状態のときに最も必要となる「瞬発力」を発揮することが難しくなっています。
多能工化を行うことで対応できる製造キャパを引き上げることができれば、山谷における「山」の状態、つまり引き合いが多く来たときに、できるだけ多くの型数を受注する、もしくは外注に出す金型を少なくするという対策ができます。
「谷」の状態のときに、しっかりOJTやOFF-JTによる準備を整えておき、「山」の状態が来た時に「多能工」という瞬発力を発揮して来た仕事をできるだけたくさんこなすことが、金型メーカーにおける「多能工化」の真の目的・意義になります。
ぜひ早急に対策を行っていただければと思います。
定期的な改善活動は行われているか
不定期ですが、何かアイデアがあったときに実施されており、最低限の対応はできていると思います。
可能であれば、年次の利益目標からブレークダウンした改善目標を、それぞれの工程や担当者に持たせるといった、トップダウン式かつプロジェクト型の改善への取り組みも、定期的に行うことが必要だと思います。
調達面の状況について
材料業者ごとに得意材料が違うが、ベストなあい見積もりをとれているか
長年の取引によるマンネリな調達活動が行われていることもなく、問題なくあい見積もりなどが実施されているようです。
工場内の5S状況について
ドリルやエンドミルが雑多な保管で、探すのに手間がかかる保管になってないか
一定の整理はされているようですが、探すためのロス時間は発生しているようです。
金型メーカーや機械加工メーカーの業種においては、①安全面、②品質面、③効率性、④客観性という順番で着手するのをオススメしています。
下記のサイトでも事例を紹介していますので、参考にしてみてください。
全体まとめと今後の方向性について
総じて、短期的に作業者の力量に合わせた「過剰品質になりがちだが停滞せず何とか部品ができることを優先した作り方」になっているため、全ての工程においてコスト最適にはなっていません。
今後はコストとリードタイムを少しでも優先させたものづくりに金型部門全体が変革できるよう、社をあげてのプロジェクト活動などを行っていくと良いと思いました。
無料診断報告書の事例は以上になります。読んでいただき、ありがとうございました。
もしよろしければ、御社も利用してみてください。
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コラム投稿者
金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
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