【今さら聞けない】大日程計画のあるべき考え方
金型の売値と見積もり工数の関係
先日、あるプレスメーカーの金型内製部門のコンサルを行うさなか、新規の金型が入ってきたときに、日程計画をどのように立てたらよいかわからないという質問を受けました。また、計画を立てるスキルを持った社員がいないので、どのように育成したらよいかという質問もありました。
そこで私は、金型や部品加工の大日程計画を立てるにあたって重要なことは、「何日かかるのか」を見抜くよりも、「何日で終わらせるべきなのか」の方が重要だと説明しました。
それには、金型や部品加工の売値がどうやって決まるのかを知ることが重要だとお話ししました。
今回は、金型や部品加工の売値と日程計画の関係について見ていきたいと思います。
大日程計画とは
まずは、そもそも大日程計画とは何かから見ていきたいと思います。ちなみに大日程計画のほかには、中日程計画と小日程計画というものもあります。
大日程計画は、下図のように、会社が受注した金型ごとの日程計画です。

一般的には、設計はいつからいつまで、加工はいつからいつまで、組み立てはいつからいつまで、といったように、工程ごとに、着手から工程納期までをガントチャートなどを使って表します。
一方、中日程計画は、下図のような各金型を構成する部品ごとの日程計画です。

先ほどの大日程計画と同じように、材料手配はいつからいつまで、マシニング加工はいつからいつまで、研削加工はいつからいつまで、といったように、それぞれの部品について、工程ごとに、着手から工程納期までをガントチャートなどを使って表されます。
最後の小日程計画は、下図のように、それぞれの人や機械について、例えば、三日とか1週間、2週間など一定期間をカレンダー形式にして、1日を時間ごとに区切って、毎日行う仕事を差し立てます。

話を広げましたが、今回の主題は、このうち大日程計画の立て方についてです。
金型の売値の決め方
大日程計画の立て方についてのお話をする前に、まずは金型の売値はどうやって決まっているのかについて見ていきたいと思います。
今回は、以前私がセミナーで、金型の原価や売値を決める方法についてお話をした際に使った事例で見ていきたいと思います。
まず金型の費用は、一般的に下図のような構成になっています。

今回この中で着眼したいのは「工賃」についてです。
工賃は、費用を算出する対象の金型について、人や機械が掛けた時間を使って計算するもので、一般的には下図のような計算を用います。

この計算をもとに、事例を使って金型費の見積もりをしてみたいと思います。
条件は以下のとおりとします。
- 材料費10万円、ミスミ部品4万円
- 工賃
- 設計工数:20時間
- 加工データ作成:10時間
- マシニング加工:50時間
- ワイヤーカット加工:30時間
- 組み立て:20時間、トライ作業40時間
- マンチャージ:@4,000円、マシンチャージ:@5,000円
このうち「工賃」の計算は、以下のようになります。
- 設計費:4,000×20h=?
- 加工データ作成費:4,000×10h=?
- マシニング加工:5,000×50h=?
- ワイヤーカット加工:5,000×30h=?
- 組み立て費:4,000×20h=?
- トライ作業費:4,000×40h=?
したがって、計算結果は以下のようになります。
- 工賃計算
- 設計費:4,000×20h=8万円
- 加工データ作成費:4,000×10h=4万円
- マシニング加工:5,000×50h=25万円
- ワイヤーカット加工:5,000×30h=15万円
- 組み立て費:4,000×20h=8万円
- トライ作業費:4,000×40h=16万円
これらを合計し、さらに材料費や市販部品費、全てを足し合わせると、下記のとおり90万円と、金型費を見積もられます。
- 材料費10万円
- ミスミ部品4万円
- 工賃76万円
- 合計90万円
営業部門は、この金型費に利益と管理費を上乗せして、最終的な売価を決定します。
もう一つ、見積もりの事例を見ていきたいと思います。

今度は、外注加工費が入っています。合計の金型費は下図のように計算されます。

大日程計画の立て方のポイント
さてここまで、金型費の見積もり計算の方法を見てきましたが、ここで大日程計画の立て方に戻りたいと思います。
下図のような大日程計画を立てるにあたって、それぞれの工程、例えば設計や機械加工などにかけることができる日数を決定づけるものは一体何でしょうか。

ここで気づいている人もおられるかと思いますが、そうです、先ほどまで見てきた、各工程の見積もり工数を使います。
例えば、設計が30時間かかると見積もり、その金額で受注したならば、設計にかけることができる時間は30時間とするという考え方です。
1日を8時間として、まる1日その金型の設計に従事するのであれば、約4日です。
もちろん同じ期間内で複数の金型の作業が重複することもあるでしょう。
そうした場合は、量産加工で使う「山積み山崩し」の考え方を使います。
複数の金型の作業が重なる場合、作業時間を超過しないように金型ごとの工程の開始時期を調整します。具体的には、工程の開始時期を早めたり、遅らせたりすることで、作業時間を平準化します。
例えば、もし複数の金型が重複したため、1日の作業時間が8時間を超えてしまったら、着手日をずらしたり、工程納期を後ろにずらして、山崩しします。
そうして出来た大日程計画が前述した図のような状態になるわけです。
ですが、重要なことは、着手から工程納期までの日数が、山崩ししたことで、見積もり工数よりも長くなっていたとしても、実際に仕事を終えた後の実績としての工数は、見積もり工数以内であるべきだということです。
大日程計画の立て方に戻りますが、重要なことは、計画を立てる際に、受注した金型について、それぞれの工程が何日かかるかを検討することよりも、そもそも何日で完了するべきなのか、それを先に切り口にするということです。
もしかしたら赤字になる極めて安い金額で受注している場合もあるかもしれません。
そうした初めから負け戦の金額をベースにスケジュールを立てても、そもそも絵に描いた餅になってしまうこともあるかもしれません。
そうしたときは、現実的な工数に修正してスケジューリングします。
いかがでしたでしょうか。
部品加工メーカーにおいても同様です。
機械加工として受注した仕事がどのくらいの工数で仕事を見積もったのか、もし工程ごとに工数が振り分けられていなかったら、総工数を工程ごとに按分して振り分けます。
そして現場は、その計画を目標に仕事をし、日報という形で実績を残し、果たして見積もり金額どおりで完了できたのかフィードバックを行い、結果を分析し、次の受注に備えていく。
この繰り返しにより、月次や年間の目標売上に向かって、売上を積み上げていきます。
もちろん、見積もり工数よりも短い時間で作業できれば、それは会社の儲けにつながります。
御社はこのPDCAを回すことができていますでしょうか。参考になれば幸いです。
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