「自己啓発シリーズ」の実践ワークの解答例に見える、会社と社員 それぞれの認識
下記のコーナーでご紹介している「【自己啓発シリーズ】金型メーカー・部品加工メーカーの処世術(勝ち組社員になるために)」ですが、それぞれのコラムに、読んだ後に取り組める実践ワークを用意しております。
今回は、実際にいくつかの顧問先企業で、このワークに回答してもらった事例をテーマごとに紹介しています。なお、回答してもらった社員さんに配慮して、言葉をアレンジしています。
今回の内容により、社員さんがどういった考え方で普段のお仕事に向き合っているのか、また会社が考えている評価の基準と、実際に働いている社員さんが認識している基準に違いはあるのか、などを見ていければと思います。
それでは順に見ていきたいと思います。
【テーマ例】複数の仕事をこなせる人になろう での回答例と見解
実践ワークの回答例
複数の仕事が重なったとき、あなたは一つひとつ順番に仕事を終わらせていくタイプですか、それとも並行して進めていくタイプですか。
自分は一つひとつ仕事を終わらせてから次に仕掛かっていくタイプです。
複数の仕事が重なったとき、一つひとつ順番に仕事を片付けていく方法のメリットは何だと思いますか。
今とりかかっている仕事に集中できるところです。
複数の仕事が重なったとき、同時並行して進める方法をとるメリットは何だと思いますか。
自動機で仕掛けているときに出来た待ち時間などに、次の仕事に取り掛かることで、空き時間を作らないようにできることです。
部長職や課長職など、一定数の部下を持つ立場になったとき、上記の2つの仕事のやり方のうち、どちらの方法が望ましいと思いますか。
同時並行して進める方法だと思います。
回答例からわかったこと
この回答例は、20代の若手社員さんのものですが、とても自分のことを理解している人だと思いました。
また、社内に同時並行で仕事を進める人はいますかと質問したところ、社内で1,2を争うエース級である直接の上司がやっているとのことで、それが自分の目標だと話してくれました。
自分との違いとして、「自分は自動機の待ち時間などに次の仕事の準備やラジアルボール盤などのハンドワーク作業を入れてしまうと、やりかけになった仕事を忘れてしまうなどのミスが発生するため、リスクを取らず安全に一つ一つ仕事を終わらせていく」とのこと、いずれ仕事が上手になれば、複数仕事を並行してこなしていけるようになりたいとのことでした。
今回のワークに回答したことでこの若手社員さんは、上司が焦ってバタバタやっているわけでもないのに、なぜ自分より仕事を多くこなせることができるのか、改めて明確にすることができ、自分もいつ頃までにそういった仕事のやり方ができるようになれるか目標を立てることが出来ました。
【テーマ例】勤める会社の評価基準の「キモ」に沿った仕事のやり方ができていますか? での回答例と見解
実践ワークの回答例
あなたが勤めている会社の「評価基準のキモ」は「根性」ですか「要領」ですか、それとも別のものですか?
完全に「根性」だと思います。
「評価基準のキモ」に沿った仕事のやり方ができていますか?
できていません。
回答例からわかったこと
とてもシンプルな回答例で、わかりやすいです。
こちらもある企業の若手社員の方の回答事例ですが、着目したいところは、この会社の経営者さんは、残業や臨出に協力して短納期対応を頑張る「根性」だけの方針ではなく、「要領」よく仕事をすることや、高いスキルを持ってもらうこと、技能系の資格を取ることも「評価基準のキモ」だと考えていましたが、実際にそこで働く社員さんは「根性」が全てだと考えていたことです。
しかも、その社員さんは自分のプライベートで趣味を持っており、毎日「要領」よく仕事を捌くことで、17時の定時で帰れるよう日々努力していました。ですが残業はあまり積極的にやっていないことで、高い評価を受けることについては、ある意味諦めに近い感覚を持っていたということです。
たしかにこちらの会社は、持ち前の営業力で、短納期対応の仕事であれば、自社の製造キャパで対応できる限り、どんどん次から次へと仕事を入れていける状況ではあったので、ぶっちゃけて言えば、経営者さんも残業や休出など無理を聞いてくれる人を評価していたと思います。またそういった空気が若手からベテランまで全員に伝わっていたと思います。
ですが、やはり「働き甲斐」ということに会社が配慮していくのでしたら、出来る限り会社と社員さんの認識の齟齬を解消し、例えば今回の事例の若手社員さんでしたら、残業・休出にはあまり協力できなくても、機械やソフトでマクロなど整備して効率よく使っていくとか、技能系の資格を積極的に取得するなど、全ては会社の方針にそぐえなくても自分が出来る範囲で、会社の「評価基準のキモ」に沿った働き方をしていくことで、自分の受けている評価に対してもう少し「自信」を持って仕事をすることができるのではないでしょうか。
【テーマ例】遅いけど丁寧、粗いけど早い、どちらが良いのか での回答例と見解
実践ワークの回答例
「遅いけど丁寧」か「粗いけど早い」は、どちらが望ましいと思いますか?
「粗いけど早い」です。
それを選んだのは、どういった理由ですか?
ウチの仕事はそこまで精度を要求されていないからです。
ミスなく「早く」仕事をするには、どういう方法でやるのが良いと思いますか?
加工に入る前に工程を全て決めてから仕掛かることです。これによって途中で迷ったり、手を止めたりしなくて済むからです。
回答例からわかったこと
この結果を見せた経営者さんが発した言葉が、「よくこの2択から選べたなぁ、感心感心。」でした。
私もそう思います。
実際の正解は、この2択であるならば「遅いけど丁寧」になるのですが、この回答は講義を聞く前、まずは正解を知る前に回答してもらった段階というところもあり、普段の仕事に自分がどう向き合っているかを重視して答えてもらったという経緯になります。
ですから自社の仕事や、特に自分に任されている工程の仕事はどういうものかを、まずは良く理解しているなぁという見解になったわけです。
また「ミスなく早く仕事をする方法」についても100点満点の答えだと思います。仕事にかかる前に流れを決めておき、そこでリスクがあれば、事前にチェックや対処の方法を考えておく。そして決まったら迷いなく粛々と作業していくというのが、慌てずバタバタとやるのではなく、丁寧にかつ手早く仕事をしていく一番の方法だからです。
【テーマ例】タイパ・コスパにこだわり過ぎない での回答例と見解
実践ワークの回答例
あなたは普段のお仕事をするうえで、タイムパフォーマンスやコストパフォーマンスにこだわる方ですか、そうではない方ですか。
どちらかというと、こだわる方だと思います。
タイパ・コスパにこだわった仕事をするメリットは何だと思いますか。
常に効率化を考えるようになります。
逆に、仕事でタイパ・コスパにこだわることのデメリットは何だと思いますか。
余裕をもって仕事をすることがなくなることです。
回答例からわかったこと
こちらも、回答してくれたのは若手の社員さんですが、仕事の姿勢としてはとても良いと思います。意識して効率よく仕事をしようとしていることが伺えます。
一方、正解の内容を聞く前の回答ですので、タイパ・コスパにこだわり過ぎるデメリットとして、スキルやコミュニケーションの醸成に悪影響が出るところまではまだ理解していませんが、よく考えて答えてくれたと思います。
ですが、普段の仕事にはタイパ・コスパを意識しているようですので、後は全てにそれを持ち込まないことだけ注意してもらえれば、理想的な働き方ができると思います。
総評
さて今回は、ほんの僅かのワーク回答例を見ていただいたわけですが、事例企業の実態が少し垣間見える内容だったのではないでしょうか。
なかなか上司と部下が口頭で面と向かって話すと、格好をつけたりし、本心や普段の仕事ぶりとは違う答えを言ってしまうなど、実態があぶり出せず、普段抱える課題をなかなか解消できなかったりするものです。
この自己啓発シリーズは、金型メーカーや部品加工メーカーの「あるある」をテーマに構成しておりますので、すぐのすぐに解決は難しいかもしれませんが、問題解決への糸口を見つける一助になればと思っております。
コラムの本文の方では、実践ワークで本当に伝えたかったことは何だったのか掲載しておりますので、もしよろしければ、他のテーマ共々読んでいただければと思います。
それでは、引き続きよろしくお願いいたします。
金型・部品加工業専門 社労士・診断士事務所
代表コンサルタント 村上英樹
金型・部品加工業専門コンサルティングからのご案内
ホームページの技術コラム本の第8巻が発売されました!
設計部署や製造現場、管理部署にぜひ一冊。
経営者や部長などマネージャー職の方々から、悩める現場リーダーへのプレゼントにも最適です。
くわしくはこちらのページからどうぞ。
【改善・管理の上級編】セミナー動画が発売中です【お得なDL版あります】
過去に大手セミナー会場で、代表コンサルタントが講師として登壇した内容をZOOMで再収録しました。
内容は、加工や管理における上級コースとなります(基礎知識はすでに持っておられる方向けになります)
動画セミナーですので、いつでも何人でも受講でき、長時間一気に受講する必要もありません。隙間時間を有効に使って受講できます。
お買い求めしやすいダウンロード版もございます。
くわしくはこちらのページからどうぞ。
【書籍販売中です】経営が厳しい金型メーカーのための本
このホームページに掲載している多くの技術・管理コラムから、経営が厳しい金型メーカーのために、大きな投資に頼らず、意識面や仕事の取り組み方などから改善改革していける方策に関するコラムを集めた本をつくりました。
こちらの書籍を販売しております。内容は、366ページの大ボリュームとなっております。
ぜひ社員の皆さまで読んでいただければと思います。また、金型メーカーを支援される金融機関や公的機関、会計事務所やコンサル会社でお勤めの方々にも、読んでいただければ幸いです。
詳しくはこちらのページからどうぞ。
YouTubeを使った上級セミナーを配信中です
金型メーカー・部品加工メーカーにおける、個別テーマの上級セミナーを配信しております。
YouTubeによる動画配信ですので、ネット環境があればいつでもどこでも視聴できます。
くわしくはこちらのページからどうぞ。
「金型メーカー・機械加工業のための管理職育成マニュアル」発売中です
当サイトの管理職育成ルームに掲載しているコラムを集めて編集したものになります。
金型メーカーや機械加工メーカーで、新たに管理職になられる方や、すでに管理職としてお仕事をされている方向けに、ストーリー形式で、心構えから具体的に取り組む業務内容まで、幅広くまとめております。
くわしくは、こちらのページからどうぞ。
「金型メーカー・部品加工メーカーにおける処世術」が発売中です
こちらの書籍は、金型メーカーや部品加工メーカーにおいて、国内全体で賃上げの機運が高まる中、勤める会社に貢献しながらも、ご自身の付加価値・市場価値を高めていこうとされる方々の一助になるような内容をお届けすることを目的としています。
「処世術」をテーマにした一般書籍はたくさんありますが、主にホワイトカラー向けのものが多く、金型メーカーや部品加工メーカーのお仕事ですぐに使えるものが少ないと思っています。
一方この本では、金型メーカーや部品加工メーカーの現場「あるある」を題材にしており、そこでお仕事をされる方々に身近なわかりやすい内容にしております。
簡単なワークも掲載していますので、社内研修にもお使いいただけます。
詳しくはこちらのページからどうぞ。
「金型メーカー・機械加工業のための自己診断ハンドブック」が発売されました!
私がコンサルティングの初回訪問時や、無料診断サービスにおいて、訪問先企業の製造現場で確認する項目を解析付きで紹介しています。
金型メーカーや部品加工メーカーに皆さまに、自社をセルフチェック(自己診断)するために使っていただければと思っております。
くわしくはこちらのページからどうぞ。
2パターンの技術セミナーレジュメを販売いたします
日刊工業新聞社さん主催で行われた、機械加工メーカー向け、金型メーカー向け、それぞれの技術セミナーで配布されたレジュメを販売いたします。どうしても遠方で参加できないといった方や会社さまより、レジュメだけでも使いたいとリクエストがあったためです。
当事務所のホームページに掲載されているコラムの内容がベースとなっておりますが、それとの違いとしては、具体的計算と事例ワークなどを盛り込み、ホームページよりも手厚く解説しております。
本来レジュメと言いますと、図やイラストがほとんどで、言葉による文章が入っていないイメージがありますが、本レジュメはそうではなく、復習がしやすいよう、多くが文章で構成されており、1人で読み進めることができます。
くわしくはこちらのページからどうぞ
ミドルマネジメント層向け人材育成セミナーのレジュメを販売いたします
ミドルマネジメントの人材育成のテーマで、講演をさせていただいた際に作成したレジュメ(当日映写したパワーポイントファイルと同じものです)を販売いたします。
日程や生産管理、品質管理だけが幹部・管理職の仕事ではありません。儲けるためのマネジメントが必要です。
そういった視点や意識を持ってもらうためのきっかけとしてオススメの一冊です。
くわしくはこちらのページからどうぞ。
4コマ漫画ギャラリーを開設しました
コラムページにプロローグとして添付している4コマ漫画を集めたページを開設しました。
こちらをクリックすると入れます
コラム投稿者
金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054