【改訂版】指図を受けたくない人の心理とその解決策について
金型メーカーや部品加工メーカーの製造現場で、上司や会社からの指示・指図を素直に受け入れられない、いわゆる「一匹狼」タイプの方に出会うことがあります。
技術経営コンサルタントとして現場改善に携わる私も、こうした方々とどう協働していくか、頭を悩ませる場面は少なくありません。
彼らは時として和を乱す存在と見られがちですが、一方で、誰にも頼らず一人でやり遂げようとする強い責任感と実行力を秘めた、ポジティブな一面も持ち合わせています。
実は、私自身もこの「指図を受けたくない」タイプの要素を持ち合わせています。今回は、それを象徴する私のエピソードから、この複雑な心理の正体と、どうすれば組織の中で好ましい関係を築いていけるのか、その解決策について考えていきたいと思います。
私がゴルフスクールを辞めてしまった理由
以前、知人から勧められてゴルフスクールに通い始めたことがあります。しかし、結局長続きせず、途中で行かなくなってしまいました。
後から聞いた話では、私にスクールを紹介してくれた人が、同じスクールをある税理士の方にも紹介したそうです。その方も私と同時期に通い始めたのですが、やはり同じように辞めてしまったとのことでした。
詳しい理由は分かりませんが、おそらく彼も、専門家としてご自身のやり方を確立されている方。きっと私と同じような葛藤を抱えていたのではないかと、勝手に想像しています。
ではなぜ、私は続かなかったのか。最大の理由は、「これまで何年も我流でやってきた自分のスタイルを、イチから崩すことへの強い抵抗感」だったと思います。
もちろん、70台、80台で回れるレベルではありませんでした。それでも、自分なりに研究し、たまに狙った通りにボールが飛び、会心のショットが打てたときの喜びはありました。
特に私は、美しいフェードボールを打つプロゴルファーをカッコイイと思っていて、彼らの著書を読んだり雑誌の特集を見たりしては、そのフォームを必死に真似ていました。
あくまで自己満足の世界ですが、それっぽいボールが打てていたという自負もありました。そんな私がスクールでは、一旦これまでのフォームはゼロにして、「クラブを体の中心から前後90度の範囲でひたすら振り子のように動かす」という、単調な基礎練習を延々と繰り返すことから、改めてやり直すことに耐えられませんでした。
自分の積み上げてきた(と信じていた)ものが、全く価値のないものだと否定されたように感じたのだと思います。
職人気質の現場に共通する「指図を受けたくない」心理の正体
この私のゴルフ経験は、特に職人色の強い金型メーカーや機械加工メーカーの現場で働く方々の心理と、深く共通する部分があるのではないでしょうか。
常に正解のない世界で、自らの経験と勘を頼りに、数々の難問と闘ってきた人たちです。その闘いの中で自力で答えにたどり着いてきた自負があるからこそ、「信用できるのは自分だけだ」という想いが強くなります。
私のゴルフ経験と、現場の職人の方々に共通する心理を整理すると、以下の3つの原因が浮かび上がってきます。
- 積み重ねてきたプライドを崩したくない
長年の経験で培ってきた自分のやり方、成功体験が必ずしも最良までとは妄信していないものの、それを根本から変えるような指示には無意識に拒否反応を示してしまいます。 - 自分の「美学」に反するものは受け入れがたい
私にとっての「フェードボールへの憧れ」のように、仕事の進め方にも「こうあるべき」とか「このやり方の方が好きだ」という個人の美学や嗜好が存在します。それに反する方法を強制されることに、強いストレスを感じます。 - ベテランになるほど「今さら」という抵抗感が生まれる
経験豊富なベテランであるほど、まるで初心に戻ったかのような基礎的な指示や、自分の知らない新しいやり方を受け入れることに心理的な抵抗が大きくなります。
このような心理は、決して悪いことばかりではありません。プライドは高い品質を生み出す原動力になり、美学は独自のやり方を生み出す原動力になります。
しかし、これらが過剰になると、上司や周囲との間に壁ができ、コミュニケーション不足や成長の停滞といった問題を引き起こしてしまうかもしれません。
「苦痛」を受け入れさせるほどの「目的」を提示できるか
では、どうすればこの頑なな心理を変え、指示やアドバイスに耳を傾けてもらえるようになるのでしょうか。
再び自分のゴルフ経験に立ち返って考えてみます。もし私が、あの「苦痛」でしかなかった基礎練習を受け入れ、スクールの方針通りに練習を続け、スコアを向上させるには何が必要だったのか。
それはおそらく、「シングルプレーヤーになる」「コンペで優勝する」といった、苦痛を乗り越えてでも達成したい、揺ぎない「大きな目標」だったと思います。
しかし、ゴルフ自体を辞めてしまった今だからこそ分かるのですが、当時の私にはそこまでの執着がありませんでした。結局のところ、私の目的は「良いスコアを出すこと」以上に、「かっこいいプロゴルファーの真似事がしたい」という自己満足にありました。
一方で、私は中小企業診断士や社会保険労務士の資格を取得する際には、資格予備校の指示に完璧に従うことができました。膨大な学習スケジュールから単調な暗記作業の細部に至るまで、ほとんど全て言われた通りに実行しました。
この違いは何だったのか。それは、資格試験には「合格後にはコンサルタントになりたい」という、真似事ではない、明確で具体的な目的が見えていたためだと思います。
このことから導き出される解決策は一つです。 「指図を受けたくない」と感じている人ほど、その指示を受け入れるための「目的」や「メリット」が明確になっていなければ、動くことはできない、ということです。
単に「こうしろ」「こうして」と指示するのではなく、「今からお願いする、この作業や、このやり方を受け入れてもらうことで、あなたの目指す〇〇という目的が達成できるのでは」「これによって、あなたには〇〇というメリットが生まれるのでは」というレベルまで、対話することが不可欠なのではないでしょうか。
まとめ: 「指図」を「共通目的を達成するためのアドバイス」へ
「指図を受けたくない」という心理は、その人の持つプライドや美学、成功体験の裏返しだと言えます。それを一方的に無視するのではなく、まずはその存在を尊重することが第一歩になると思います。
その上で、指示を出す側は、その指示が「個人のやり方を否定するもの」ではなく、「チームや個人が目指す、より大きな目的を達成するための、有益なアドバイスやサポート」だと、伝え方を少し変えてみるのはどうでしょうか。
そして、指示を受ける側も、「なぜ今、このような指示をされるのだろう?」と、その背景にある「目的」を、一度考えてみるのはどうでしょうか。頑なな気持ちが少し和らぐかもしれません。
上司と部下の関係においても、我々のようなコンサルタントと現場の方々の関係においても、この「目的の共有」こそが、まずは最低限のものだとしても信頼関係につながり、個人と組織の成長を促す鍵となるのではないでしょうか。
このコラムが、皆さまの現場での円滑なコミュニケーションの一助となれば幸いです。
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コラム投稿者
金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054
