【自己啓発シリーズ③】金型メーカー・部品加工メーカーの処世術(勝ち組社員になるために)
【テーマ】遅いけど丁寧、粗いけど早い、どちらが良いのか
今回の内容を読んだ後に取り組める実践ワークは次のものになります。
- 「遅いけど丁寧」か「粗いけど早い」は、どちらが望ましいと思いますか?
- それを選んだのは、どういった理由ですか?
- ミスなく「早く」仕事をするには、どういう方法でやるのが良いと思いますか?
今回のタイトルですが、これは金型メーカーや部品加工メーカーの現場ではよく議論されるテーマです。
まずはじめに、前提となることがあります。
仕事が「遅い」と言いましても、どうしても考えることが苦手だったり、人よりも器用に手を動かすことが苦手など、資質的なこともありますので、ここでは「どうしても丁寧にやってしまうため、仕事が人よりも遅くなってしまう」人を対象とします。
また、丁寧か粗くかに関係なく、普通に仕事が「早い」という人もおられますので、ここでは「仕事を急ぐあまり手を省くこともあり、結果仕事が粗くなってしまう」人を対象とします。
つまり先天的なものではなく「仕事のやり方・スタンス」により、いずれかになっている人、そしてそのいずれかのスタンスに問題があるのであれば、それを是正していくことを考えるのが、今回のメインテーマです。
このコラムは金型メーカーや部品加工メーカーにおける「処世術」がテーマになっておりますので、そういった観点から見ますと、
仕事を覚える段階のタイミングであれば特に、「遅くなってでも丁寧」を目指すことが正解だと思っております。
またこれは、ある程度の経験年数を重ねた人であっても同様かと思います。
「遅くても丁寧」の方が望ましい理由
ちなみに、コンサルティングの現場で「遅いけど丁寧」な人と「粗いけど早い」人、どちらが一人前になるのが早いかとよく質問されるのですが、「遅いけど丁寧」な人を「早く」仕事ができる人に育てていく方が早いとお答えしています。
理由は、もちろん全てに当てはまるわけではありませんが、「丁寧だけど遅い」人を「粗く」していく方が、一人前の仕事、つまり普通に「要求品質のモノを一般的な工数で作れる」ようにしていきやすいためです。
逆に、仕事が粗い人は、もちろんそれを改善できる人もおられますが、やるべき手順や確認を、意図的もしくは無意識に飛ばしていることがあるため、仕組みや管理で何とかすることが難しくなります。これは躾の範疇に入ってきます。
躾(しつけ)の話が出てきましたが、ちなみに仕事の場面で「叱っていい」ケースとは、次の2つだと言われています。
- やらなければいけないことを、やらなかった場合
- やってはいけないことを、やってしまった場合
これを見ると、そもそも「やらなければいけない」こと、「やってはいけない」こと、この2つを事前に伝えてあるかが重要だということですね。そうでないと「後出しジャンケン」になってしまい、上司と部下、先輩と後輩のOJTにおける良好なコミュニケーションが築きにくくなってしまいます。
この内容は、上司や先輩など、人の指導や管理をする人に限定された話しになりますので、ここまでにしておきます。
そもそも「仕事を早くやる」とは、手順や工程を省くというものではなく、初めてやる仕事であっても、できるだけ手順を明確に作り、そこに必要な確認作業を入れ込み、それを淀みなくやれるようにしていくことだと思っています。
したがって、確認など必要な手順を省いて早くするということではありません。ミスが多い人を見ていると、アドリブ的なやり方が多く、例えばCAMの操作の場合、都度入力する項目の順番が違うなどのバラツキが見られます。
いくら金型や単品部品加工が、都度違うものを作るとは言っても、作業の手順はそう大きく毎回変わるものではありません。
- 作業手順→大きく変わらない
- 製作工程→作るものによって選択肢が分かれる
- 寸法や形状→都度異なる
手順がバラついても、最後にまとめて確認すれば問題ないという発想もありますが、少なくとも「抜け・漏れ」というミスに対しては、「作業の順番を一定にする」という対策は「抜け・漏れ」を発見しやすいため、大きな効果があるはずです。
丁寧過ぎて遅くなってしまう人は
一方、作業手順は一定ですが「丁寧過ぎて遅い」という人は、「慣れ」という効果をいかに発揮していけるかがポイントになると思います。
「慣れ」の効果は反復して得るしかありませんが、どうしてもそこに個人差が出るのはやむを得ないと思います。しかしながら、仕事の流し方を少し工夫することで反復効果を高めることができます。
下図は、金型メーカーや部品加工メーカーの一般的な単品部品の仕事の流れ方のイメージです。あくまでイメージですので、A~Eの5種類、加工や設計のやり方が異なる形状があると考えてください。

この図は、例えば、青丸のAの仕事に着眼すると、繰り返しにはなっているものの、他の仕事と混在しているので、間が空き、なかなか反復効果が得られないイメージです。
一方、下図は、個人で勝手にはできませんが、DとEの仕事を別の担当者の人にやってもらい、同じくAに着眼すると、短い期間に反復効果が得られるように配慮してもらったものです。

下図は、特に強い配慮をした、完全に同じプロセスのものだけを一定期間、繰り返しやるようにしたパターンです。

実務をやりながらとなると、2段階目の「反復効果を意識した流し方」までが限界ではないでしょうか。3段階目のパターン「特に意識した仕事の流し方」まで来ると、実務ではなく過去にすでに作ったものを選び出した練習課題を用意して、ある一定の力量を得られるまで本番仕事はやらないといったやり方が考えられます。
このように、仕事が遅くなってしまう人の育成方法として、反復効果を意識していても、実務をやりながらだと実際には難しいので、特に集中特訓が必要だという人には、3段階目のパターン「特に意識した仕事の流し方」に近い形式で、一旦じっくりと練習してみるのも良いかもしれません。
それでも、どうしても他の人よりも仕事が遅くなってしまうという人は、今一度、作業手順に過剰な確認作業が入り込んでいないか、後で補正し直す操作が前段階にもあり、何度も同じ作業・操作が繰り返されていないかなど、手順を第3者にも見てもらいながら見直すのが良いと思います。
ただし厳密に言いますと、「遅い」こと自体が悪だということではなくて、「いつ終わるのかがわからない」ことが良くないということもあります。
したがって、まずは自分の一つひとつの作業にどれだけの時間がかかるのかを先に考えてから作業することを習慣にする、そしてそれを少しずつでも早くしていける「方法」を考えていくのも有効だと思います。もちろん確認など、必要な手順を省くのではなく、です。
ミスのダメージを超えるほど「早く」は難しい
さて、特に仕事の覚えたての時など、「遅くても丁寧」な人の方が重宝される理由として、もしミスが発生した場合(特にオシャカ)、「3倍のダメージがある」ということがあります。
3倍にまでなってしまうのは、次の3つのダメージがあるためです。
- 材料や部品、そこまで作った工数がムダになること
- 巻き返しのための時間や買い直す材料費などが発生すること
- 巻き返しのための時間に、本来やれていたはずの次の仕事がやれなくなること
特に③が見落とされがちになるのですが、これを「機会損失」と言います。
したがって、「粗くてもいいから早く」やろうとしても、3倍まで早くやることは現実的ではないため、ミスの発生リスクと頻度を考慮しても、やはりまずは「遅くてもいいから丁寧に」が優先になるわけです。
ミスが多い人はどうしても社内で信用されにくくなります。社内で苦しい立場になっている人や悪い立場に追い込まれてしまっている人を見かけたりしますが、これを読んでくださっている読者の方も、そういった状況を見たことがあるのではないでしょうか。
では、ミスが多い人の対策ですが、個人の取り組みとしてできることを挙げてみますと、
- アドリブ的なやり方はやめる。
- 必ず作業の順番を決める(テンプレート化する)。
- 致命傷になることから順に、必ずチェックシートを作る。
- 不具合日記をつける。
などが考えられます。
こうした背景からか、金型や部品加工の現場には、女性オペレーターの方が増えてきました。
もちろん全てに当てはまるわけではなく、あくまで私が見てきた中ですが、男性は長所として好奇心が強く大胆さがありますが、短所としては仕事が粗くなりやすく飽きっぽい傾向もあり、一方、女性は目新しいことへのチャレンジというよりも決められた手順を飽きることなく黙々とこなしていくのが得意な人が多いように思います。
もちろん真逆の人も当然おられます。
労働基準法や男女雇用機会均等法などがありますので、性別だけで判断して仕事を割り振ったりすることはできませんが、たまたま私が見てきた中では、金型メーカーや部品加工メーカーにおいて、そういった傾向があったというだけです。
ですから適材適所で、力仕事というよりは、丁寧にミスのない作業が求められるCAMオペレーター業務などにおいて、飽きっぽくなくコツコツと同じ手順を守って(もちろん加工形状は毎回変わりますが)、作業してくれる女性オペレーターなどが向いていたということです。
・・・でも、ちょっと待ってください。
やはりそもそも考えてみると、金型メーカーや部品加工メーカーにおいて設計も含めた現場には、「好奇心が強く大胆さ」が必要になる場面ももちろんあるかと思いますが、「飽きっぽくなくコツコツと同じ手順を守って作業できる」が、必要になる場面の方が多いのではないでしょうか。
少なくとも、売り物を扱っていますので。
と、いうこともあって、やはり「遅くても丁寧」という人の方が、「粗くても早い」よりも重宝されて、しかも一人前になるまでの期間は短傾向があるのではないでしょうか。
まとめ(勝ち組社員になるために)
さて、今回の内容をまとめますと、
- 特に初めてやる作業を覚える場面などにおいて、「粗いけど早い」よりも「遅いけど丁寧」の姿勢の方が望ましい。
- オシャカなどのミスが発生した場合には3倍のダメージがあるため、丁寧さを犠牲にして早くやっても、3倍早く仕事をやることは現実的ではないため、「遅くても丁寧」にやってミスを発生させない方が望ましい。
- 金型メーカーや部品加工メーカーの仕事は、「遅くても丁寧」の方が重宝される仕事の方が多いと思われる。
- 遅すぎるのも良くないが、本質は、いつ終わるか見えないことが良くない。
- 「早いけど粗い」ためミスが多く出る人は、「遅くても丁寧」のスタンスから初めてみてはどうか。
ということになります。
私が普段のコンサルティングの中で、例えば、ワンツーマンでCAMなどを教えている時、初めて触るCAMの操作を丁寧に扱えない人は、心の中で「 あ~、この人の先はもう知れてるなぁ」と思ってしまいます。
「細部に神が宿る」という言葉がありますが、ちょっとした操作一つにも丁寧に作業できる姿勢が、最終的に難易度の高い部品の設計や加工、組み付けなどに対応できるスキルを身に付けることにつながっていくと思います。
もしミスが多いという人がおられましたら、面倒くさいと思っても、まずは一旦「早さ」は捨てて、「遅く」てもいいので、一個一個の操作や作業を「丁寧」に積み上げていくイメージで、仕事のやり方をイチから見直してみてはいかがでしょうか。
最後になりますが、それでもやはり「生産性」、つまり時間あたりの出来高や利益という視点で考えますと、最初は「遅くても丁寧」の方が望ましいとはいえ、段階的には「丁寧かつ早く」を目指していかなければならないことは間違いありません。
参考になれば幸いです。
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コラム投稿者
金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054

