ユーアイ精機株式会社のコンサルティング事例【前編】(2月号掲載)

目次

ユーアイ精機株式会社のコンサルティング事例【前編】

本号で紹介する金型メーカーは、愛知県尾張旭市にあるプレス金型を扱うユーアイ精機(株)である。従業員は18名。主要製品は自動車・厨房部品の量産用金型、試作部品、金型用部品などである。

同社社長は経営にとても高い関心を持ち、本来受注生産である金型メーカーは能動的な計画は作りにくいと言われる中、同社は5年以上先の事業計画まで作ることができている。企業独自にユーアイ・ビジョンという方針を作り、ホームページを活用して広く社内外に発信している。

会社が強みとしているポイント

同社の強みは、試作鈑金から号口金型までワンストップで対応できることである。

これにより部品の試作を依頼する顧客は、量産時のプレス工法(型方案・量産工程)まで検討してもらうことができる。

例えば、絞りや曲げを伴う製品を依頼する場合、試作鈑金ならプレス後の3次元レーザーによる外形トリムが多いため変形が少なく手修正も可能であるが、量産プレスでは抜き反りや途中工程の変形も考慮した工程設計が必要となるため、同社は試作の段階でその先の量産まで踏み込んだ工程設計まで行うことで依頼部品のコストや形状の事前検討を併せて行うことができる。

筆者が知る限り20人規模の企業で、試作鈑金と号口金型の両方をとり扱っているメーカーは少ない。

その理由はいろいろあると思うが、まずコスト面から考えて儲けるポイントが異なる。

試作板金は、1個から数点といった小ロット生産であるため、曲げ・絞り・たたき工程に必要な道具や金型にコストを掛け過ぎないことが儲けるポイントとなる。

逆に号口金型は、必要な耐久性を持ち不良の発生しない安定した生産ができる金型をいかに予算内でつくれるかが儲けるポイントである。

設備面からみても保有する機械は異なる。

試作板金では3次元レーザーやブレーキプレス、プレス機は油圧式が多く、号口金型はマシニングやワイヤーカット放電加工機などで、トライ用プレス機は量産時と同じクランク式が多い。

したがって小規模企業において、1つの企業で同じ製造工程による両立となると難しいと考えられるのだが、同社はそれを実現し強みとしている。

また、同社はその試作ノウハウを活かし、マグネシウムやハイテン材など難加工材のプレス技術の開発を行っている(写真1参照)。

写真1:同社の技術開発によるマグネシウム材のプレス成形品

例えば、ハイテン材をレール状に長い形状に曲げる製品はスプリングバックや反りへの対応が課題になるが、それをうまく型構造の工夫によってコントロールしている。

筆者も苦労した経験があるが、大きくR状に湾曲したハイテン材の反りは特に修正が難しいため、金型への細工が必要となる。
その他、980Mpaハイテン材を箱形に曲げる製品についても、スプリングバックをうまくコントロールして1工程で直角を出す型構造も考案している。

試作・号口両方のノウハウを持つ経験豊富な同社工場長の技術をうまく経営に活かしている。

粗利益を下げてしまう要因となっていた課題

前述したように同社の事業の特徴は、試作と号口、さらに単品部品加工までを幅広く受注し、これらを同じ加工工程で混合生産していることであり、これが販路拡大にも寄与している。

しかしそのため、同社の製造現場では混乱が生じた。短期の試作鈑金や部品加工、長期で再加工の多い号口金型部品が混在した生産は管理が難しい。

どうしても短期仕事が優先になり、長期の仕事や負荷オーバーした分は後回しまたは外注対応になる。

そうなると残業による人件費や会社からのキャッシュアウトが増え、自社の粗利益が減少していくという悪循環に陥っていた。

管理が難しくなった原因は、①扱う品種・品番が激増し部品ごとの工程管理負担が増えた、②2、3日の短いサイクルで扱う部品も混在するため新規受注のたびに行う計画変更が負担になった、などである。

課題となっていた部分の改善

筆者の経験上、金型メーカーの生産管理は、下記のように段階的に細分化するのが理想だと考えている。

  1. 会社全体の受注品目を管理する日程計画
  2. それぞれの金型ごとの工程別に分けた日程計画(ガントチャートなど)
  3. 金型を構成する部品ごとの日程計画
  4. 社内で加工する部品全てを工程別に分けた日程計画
  5. 製造工程全体を俯瞰できる機械・作業者への割り当て計画
  6. 各作業者が見る小日程計画

同社は特に④の管理に問題があったため、加工する際に準備が間に合わず着手できない部品が多発した。

例えば機械加工では、着手日に材料・図面・NCデータが揃っていないといった問題である。

そこで同社は、加工工程を整流化する管理の仕組みを導入した。

具体的には、特に最初の工程になることが多くボトルネックの原因にもなっていたワイヤーカット放電加工の工程で生産管理ボードをつくり、毎日4台の機械で当日加工する部品の予定をつくり細かく一元管理するようにした。

これには次のような効果があった。①材料・図面・NCデータが準備できたかどうかの見える化、②各部品の加工予定を隙間なく1日の計画に当てはめることで稼働率を最大化できる、③複数の機械間で加工予定を入れ替える調整がしやすい、などである。

これにより現在は、予定外の機械の空き時間や後工程の予定遅延を減らすことができ、ムダな残業や外注費を削減することができた。

同社は、生産面の評価指標として日中の機械稼働率を用いているが、経営面としては「労働分配率」という指標を活用している。

労働分配率は人件費を企業の付加価値で除したものであり、売上から材料費や外注費など外部への支払いを差し引いた自社で生み出した価値と人件費のバランスを表す。

この割合は企業ごとの方針によるが、同社は毎月の人件費や外注費が多くなり過ぎていないか、この指標を使いチェックしている(資料1参照)。

資料1:労働分配率についてどう考えるかについての資料

人件費や外注費などの製造原価の増加をできる限り抑え、そのうえで受注を増やし売上を高めることが粗利益の増加につながる。

従来同社の高い従業員のモチベーションは、ただ忙しく仕事をさばくことに向けられていたが、現在は粗利益を高める行動にその意識は向けられている。

同社は自社を広く認知してもらうことで「呼び込む営業」に積極的に取り組んでいる。

難易度の高いハイテン材やマグネシウムなどのプレス加工にこだわり、その高度な技術に取り組む企業姿勢をホームページや講演などで社外発信している。

これにより製品開発をしたいという企業から共同開発依頼を受けるなど、お願い営業をすることなく事業拡大ができている。

それに応える製造現場は従来以上に多様な部品を製造しているが、営業と技術、両面から粗利益を高めていく体制をつくることができた。

今後の企業としての発展

現在マグネシウム素材においては海外企業と共同製品開発を進めている。

経営全体戦略としては、競争を意識した技術・営業戦略、受注平準化への取り組みを社長が先頭に立ちおし進めている。

これらの取り組みは企業を永続させるためのものであり、更に生産体制の強化もできたことで今後ますます同社の発展が期待できる。

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コラム投稿者

金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054

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