株式会社フクヤマのコンサルティング事例(型技術2022年1月号掲載)

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株式会社フクヤマのコンサルティング事例(型技術2022年1月号掲載)

本号で紹介するプレスメーカーは、株式会社フクヤマ(愛知県豊川市 TEL0533-88-2223)である。同社は600t順送プレス機をはじめ30台以上のプレス加工設備により自動車用部品を製造する量産プレスメーカーであり、プレス加工においては、980Mpaの高張力鋼やステンレス材、アルミニウム合金、黄銅など、幅広い材質に対応している。

またプレス加工後においても、ロボット溶接、スポット溶接、カシメなどアッセンブリも社内対応しており、さらにインサート成形や樹脂部品との組立など、後加工についても幅広い一貫生産対応を行っている。

図1 同社が製造している製品例

同社の金型グループは、45t~600t順送プレスで使用する金型を社内製作しており、経験年数20年を超えるベテラン作業者が、設計・機械加工・組立・トライなど各工程の要所で活躍している。

図2 同社の金型グループの設計・製造現場の様子

筆者が見てきた多くの金型メーカーや機械加工メーカーでは、経験年数の長い40~50歳といった中間年代層がおらず、若手作業者への技術継承に苦慮している。

一方同社では、数名の中間年代層の金型技術者が、プレーイングマネージャーとして、それぞれの工程の実務と生産マネジメントを行っており、過酷な厚板・超高張力鋼板のプレス成形、複雑な成形品の順送金型などに、その長年の苦労で培ってきたノウハウを活かしている。

保全部門としては、内製外製合わせ様々な仕様の金型が自社で使用されており、金型の摩耗・故障・損傷、製品異常などにおいても、多くの症例が持ち込まれてくる。
その点についても、長年対応してきた応急処置・恒久処置の成功例・失敗例を見てきた経験に基づく迅速かつ正確な対応を、中間年代層の作業者が発揮している。

同社の金型製作プロセスの特徴として、各工程の主力がベテラン揃いということを活かし、内容をスリムに最適化した2次元設計の図面により金型製作を行っている点がある。

近年多くの金型メーカーで採用されている3次元設計であるが、そのメリットとして一目で構造や全体像が把握できる点がある。一方、金型の内容にもよるが、金型構造の設計までであれば(個々の部品図作成時間を除く)、2次元と3次元それぞれの設計で実務経験のある筆者の比較では、2次元設計の方が早く作業を終えることが多い。

ただし、2次元設計による迅速な設計を行うことができても、現場に3角法による図面を読み解く力量が足りていない作業者がいる場合には、形状把握に時間がかかったり、ベテラン作業者のサポートが必要だったりする。

また複雑な形状であったり、可動する構造の部品などにおいて理解しやすくするため、詳細な断面図を多く作図すると、結果3次元設計と比較し、その作図時間は多くかかり過ぎてしまうこともある。

その点同社は、設計・機械加工・組立など新規金型の製造プロセスにおける各工程の要所を、ベテラン作業者がプレーイングマネージャーとして実務を行うことで、必要最小限の2次元図面により、必要な作業工数を抑えたリードタイムで金型製作を行うことができている。

今後同社が目指す改革

各工程にベテラン作業者を擁する強みを活かし、高難易かつバラエティに富んだ金型を製作してきた金型グループであるが、さらに増えている需要に対応するため、短期間にもっと多くの金型を製造できる体制を作る必要が出てきた。

そこで同社は筆者と共に、従来を超える金型の製造キャパシティを得るため、設計・加工・組立・トライといった各工程において、それぞれの工程で分業体制を作り、その分業化したオペレーションに若手作業者を効果的に活用していく新たな仕組みを構築していくこととした。

プロジェクトのキックオフとして、まず取り組んでいく分業化は設計工程からである。

同社の設計工程は前述したとおり、構造設計は2次元で行っており、マシニングセンターによる3次元加工を要する製品意匠面があるパンチ・ダイ部品などに3次元モデリングを行っている。

また、設計作業は(株)C&Gシステムズ社のEXCESS-HYBRIDⅡを使用しており、その構造設計後の穴あけ加工など2次元加工については、このソフトを使うことで、組図からそのまま個々の部品を加工するNCデータを作成することができている。

加えてワイヤーカット加工・3次元加工などのNCデータを作成する、材料発注や金型日程計画を追記更新するところまでが、同社の設計担当者の仕事となっており、これは筆者が提唱している3段階の多能工化のうち、2段階目にあたるもので、間接コストの削減などに寄与することができている。

3段階の多能工化とは次のようなもので、レベル①からレベル③に上がるほど、効果が大きくなる。

レベル①:機械加工工程においては複数の機械を受け持つ多台持ちができており、設計者やCAMオペレーターにおいても複数ソフトが扱え、ハンドワーク部門においても複数の機械を扱うことができている状態を指す。

レベル②:自分の受け持つ工程のすぐ後の工程の作業を「ついでに」行うことができている状態。主に指示書を作成するなどの間接コストの削減に寄与する。

レベル③:設計と組み立て工程など、部門をまたいだ多能工化を実践している状態。

レベル①はその工程の稼働率UPが得られ、レベル③の「部門をまたいだ多能工化」については、一つの工程のみならず、会社全体での高い稼働率が得られる。

このうち同社の設計工程はレベル②の多能工化の状態にあり、設計を担当した者がCAM作業まで行うことで、設計者がCAM作業者へ必要精度などを伝えるための手間を省くことができ、「作業者1人あたり生産性」を高くすることができている。

ところが現状は、設計からCAM作業まで横断して担当できる技術者が少数に限定されており、またその者らに続く者の育成にも長期の時間をかけることができないため、一旦このレベル②の状態を崩し、分業化による大量生産の仕組みを構築しようというのが今回のプロジェクトの狙いであり、「金型グループ全体としての生産性」の向上を図る。

もう一つ今回のプロジェクトでは、従来の2次元設計での体制に加え、新たに3次元設計の導入も計画している。

2次元と3次元設計にはそれぞれに異なる長所があり、筆者は受注案件に応じて使い分けられる体制がベストだと考えている。

例えば、外部販売用の金型は同業他社や海外メーカーとの価格勝負になることが多いため、金型コストや製造リードタイムを重視すべきことが多い。

一方、社内のプレス加工で使用する金型の製作においては、干渉チェック機能や細部までモデリングする手法など、改修履歴や金型製造品質を重視できる3次元設計の方が得られるメリットが多いことが考えられる。

したがって外部販売用の金型と内製用の金型、それぞれにより2次元と3次元の設計を使い分けられるメーカーが最も競争力が高いと思われる。

同社は前述したこれらの改革を推進していく計画であり、設計以降の後工程についても、さらなる大量生産ができる体制を作っていく計画である。

従来の強みを一旦崩し、新たな強みに変革させていこうとする同社に筆者は大きな期待をしている。

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コラム投稿者

金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054

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