金型メーカーでのスケジューラ活用法―「Dr.工程PRO」の機能(型技術2022年11月号掲載)

目次

金型メーカーでのスケジューラ活用法―「Dr.工程PRO」の機能(型技術2022年11月号掲載)

前号に引き続き、金型メーカーにおける中日程計画と小日程計画の運用にあたり、「人が中日程計画を作ると、後は自動で小日程計画が作られる」という機能を持つスケジューラーソフトについて解説する。

本号では株式会社シー・アイ・エム総合研究所様のご協力により、市販の生産管理システムであるDr.工程PROでの操作サンプル画像をご提供いただいたので、この機能について実際にどのようなものなのか、具体的に紹介する。

まず中日程計画にあたるもの、「部品ごとの工程計画とその納期管理」は、Dr.工程PROだと「工程入力」の操作として、次から紹介する画面で管理される。

工程入力(中日程計画にあたるフェーズ)

(ア) 「パート図」の画面


下図は、ある一つの金型で、部品ごとに、機械加工や焼入れ処理などの工程を、リードタイムと共に登録したサンプル画面である。組み合わさる部品は、その順序関係についても登録されている。

(イ) 「工程明細」の画面


下図は、「パート図」において、それぞれの工程を登録するための画面である。

(ウ) 最早日程のガントチャート画面


下図は、機械や人が着手できる都合を考慮せず、前詰めした計画表である。

(エ) 最遅日程のガントチャート画面


下図は、上図の計画表とは逆に、後ろ詰めで計画したものをいただいた。金型納期から逆算して「これまでには終わっていて欲しい」という、それぞれの工程の最終納期を示すという意義での中日程計画であれば、それにあたるものがこちらになる。

山崩し・ガントチャート(小日程計画にあたるフェーズ)

A) 山崩ししたガントチャート図①

下図は、工程ごとに着手できるとした日程から、人や機械の空き状況を考慮して割り振ったものになる(自動で差し立てが行われた状態)。前号で解説した大・中・小の日程計画のうち、小日程計画にあたるものになる。


中段から下段にかけ「機械別」「担当者別」でのスケジューリングされた結果が表示されており、一番上に「金型全体」でスケジュールされた日程(リードタイム)が表示されている。
現場での運用例として、個々の作業者は下段のところで、その日に作業するものを確認し、現場リーダーは中段のところで、その日各機械で仕掛ける部品を確認することができそうである。

B) 山崩ししたガントチャート図②


下図は、最上段を「部品別工程別」表示で展開した様子の画面をいただいたものである。


先ほど中日程計画にあたるものとして最早と最遅日程のガントチャート画面があったが、最上段を見ると、こちらは小日程計画の山崩しによって、実際に作業されるリードタイムとして再調整された中日程計画だと言えそうである。


なお、株式会社シー・アイ・エム総合研究所様によると、Dr.工程PROにて山崩しした結果は「小日程」という位置づけになり、上記の「再調整された中日程計画」という表現は、Dr.工程PROとは関係なく、筆者の考え方として中日程と表現している。

C) 山崩ししたガントチャート図③


下図は、機械別のスケジュールの一覧を併せて表示した画面の様子をいただいたものである。


こちらにより現場リーダーや機械担当者は、カレンダー表記されたものと一覧表記で並べられたもの、それぞれで確認することができると考えられる。

まとめ

以上が、株式会社シー・アイ・エム総合研究所様からご提供いただいたサンプル画面である。

筆者によくご相談いただくのは、自動山崩しの機能について、現実の差し立ての感覚と合わないのではないかとの意見である。

筆者の客観的な意見として、近年実装されている山崩しの機能は、様々な場面を想定したパラメータが備わっているため、かなり現場の状況を踏まえた山崩しができると思っている。

これもまたよく聞くのが、「結局、日々の差し立てを行っても、朝に飛びこみ仕事が入ってきて予定が崩れてしまう。したがって緻密な計画表は意味がなく、ホワイトボードでその日の計画を立てるくらいで丁度いい。」などの意見である。

そこで筆者がコンサルティングの際にお話しするのは、筆者も試作の仕事をしていた身として日々の飛びこみ仕事はかなり経験したが、仕事が飛びこんできたときこそ、本来その日にやろうとしていた仕事をどこにズラすか、またそれ以降の負荷の度合いを把握することが重要で、そういった「先の予定」を再調整し、共有していくにもスケジューラーは有効だと考えている。

多くの金型現場や機械加工現場を見させてもらうと、後工程の方で特定の機械がボトルネックになっていたり、逆に先頭のCAM工程がボトルネックになっていたりと、様々な交通渋滞の状況をお見受けするが、スケジューラーはそういった渋滞を人の感覚ではなく、コンピュータの頭脳を使い交通整理するのに有効だと思っている。

さらにスケジューラーの用途として推奨したいのが、自社に新しい仕事の引き合いが来た時に、設計や加工、組み立て工程などに、受注できるだけのキャパがあるかどうかの確認に使うことである。この用途での使い方としては、金型や部品加工などの登録内容を仮想的に何パターンか作っておき、それを現状すでにスケジューリングされている負荷状況の中に仮入力してみて、現場がキャパオーバーにならないかどうかを確認することである。

これであれば、経営者や営業担当者が、新規の引き合い案件があったとき、ある程度の確信をもって受注可否の判断をすることができる(Dr.工程をこの用途で使う場合は、今回紹介したDr.工程PROよりも、「Dr.大日程」で行うのが望ましいとのことである)。

筆者はコンサルタントとして、特定のソフトウェアを推奨することは望ましくないが、中立の立場として、金型現場や機械加工現場が今抱えている課題に対してスケジューラーが有効なのか、また予算や機能を踏まえた中でどのスケジューラーが適切なのか、相談に乗ることはできる。

全く課題が存在しないという現場はそうそう無いと思われるが、日程計画や納期管理で問題を抱える金型メーカーの一助になれば幸いである。

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コラム投稿者

金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054

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