競争力・生産性の自己診断(型技術2023年10月号掲載)

競争力・生産性の自己診断
目次

競争力・生産性の自己診断(型技術2023年10月号掲載)

今回は当事務所の見解(普段お手伝いしている企業の規模・事業形態)に基づき、プレス加工メーカーや成形メーカーの金型内製部門や工機部門の競争力や生産性を診断するための項目を工程や分野別に分けて紹介する。 項目は次のような分類としている。

  • 設計部門の診断項目
  • 加工部門の診断項目
  • 組立/トライ工程の診断項目
  • 管理面の診断項目
  • 部門収支の診断項目

もしよろしければ、読者企業で行う自己診断にお使いいただけたらと思う。
それではまず設計部門から見ていく。

設計部門の診断項目

  • 平均的な設計リードタイムは何日くらいか。
    • 金型の種類によって設計リードタイムが異なるため、何トンクラスの順送型など、自社で標準的な金型を目安として、リードタイムを同業他社と比較した場合どうだろうか。
  • 2次元設計か3次元設計、どちらを採用しているか。
    • それぞれにおいて自動機能を最大限に使えているか。
    • 金型設計のための支援機能のないCADなど、自社の設計には適さない、作業性が悪くなってしまうCADの種類を使っていないか。
  • 成形シミュレーションソフトを活用しているか。
    • 加工現場では、解析に使用したモデルを忠実に再現できる精密な加工が行われているか。
  • デザインレビューは設計完了までに何回行っているか、適切な段階で行われているか。
  • 過去トラブルのデータベースはどのように収集・運用されているか。
  • 社内と協力メーカーで統一的に使用している金型標準書(設計規格書)の内容はどうか。
    • 協力メーカーで製作される金型も、社内と同じクオリティのものが製作されるほどきちんと内容が網羅されているか。
  • 設計の分業化で効率化を図っているか。
    • キャベツの千切りまでベテランがやらなくて済む体制になっているか。
  • 壊れにくい金型構造になっているか。

加工部門の診断項目

  • 加工条件は同業他社と比較してどうか(穴あけ・形状加工)。
  • CAMは自社の加工内容に適したものになっているか。
    • 手間をかけ過ぎる作業が発生していないか。
  • 同時多数個かけ加工は、同業他社と比較してどこまでやれているか(マシニングセンター・放電加工)。
  • 精密加工に必要となる機械や治具の保全、加工手順の整備はどこまで行われているか。
    • 工具の振れ調整
    • ミーリングチャックの種類の選定
    • ツール伸びの考慮
    • リーマ加工手順
    • 長時間加工への配慮など
  • ワイヤーカット放電加工のカット回数は同業他社と比較してどうか。
  • CAMオペレーターのスキルは同業他社と比較して充分か。
    • スキルに個人差は発生していないか、オペレーションは標準化されているか、オペレーター教育の目安・指針はあるか。
  • 小日程計画(差し立て)はどのように行っているか。
    • 積極的に前詰めの計画は立てられているか、負荷に応じて前詰めと後ろ詰めの計画は使い分けされているか。
    • 夜間自動加工の稼働率は適切か。
  • 不具合対策は適正か。
    • NC機械の加工の場合、チェック方法はオペレーター全員で標準化されているか。
  • 平面研磨加工において反りは適切に除去されているか、作業手順は標準化されているか。
  • 加工後部品の測定はどのような管理で行われているか。
    • 必要に応じて機内計測は行われているか。
  • 最低限必要な機械の精度確認は定期的に行われているか。
    • マシニングセンター動作とテーブルやバイス口金との水平平行、主軸の振れ、タッチセンサーの校正など。
  • ワイヤーカット放電加工機の分解メンテナンスはどのくらいの頻度で行われているか。
  • 一人あたりの仕事の範囲は妥当か。多能工の程度はどのくらいか。

組立/トライ工程の診断項目

  • 玉成までの平均トライ回数は同業他社と比較してどのレベルか。
  • トライ後の金型意匠面の補正加工はどちらのパターンで行っているか。
    • ハンドワークですり合わせ調整を行っている場合、予備部品を作ったり、部品の再製作を行う際の再現性を高めるためのリバースエンジニアリングは行っているか。
    • 機械加工で金型意匠面の補正を行っている場合、設計や加工部門に負荷が偏っていないか。
  • 組立/トライ担当者は、どこまでCAD/CAMスキルを持っているか。

管理面の診断項目

  • 技術者教育管理のためのスキルマップはどのように運用されているか。
  • 多能工として他工程の作業に入っていないとしても、各作業者は別工程の作業スキルをどの程度持って普段の業務に活かしているか。
  • 作業日報の形式はどういったタイプのものが採用されているか。各作業者の待ち時間なども集計できるタイプになっているか。
  • 機械レイアウトは多能工や人の動線に適した配置になっているか。
    • 汎用機は適宜活用しやすい配置になっているか。
    • 道具等の手元化はどの程度進んでいるか。一度段取り作業に入ったら一定エリア内の移動で済むように配置されているか。
  • 納期・品質以外の目標として、生産性目標は周知されているか。
  • 型案件ごとの収支はどのように計算されているか。実作業に関わった作業者には実績としての時間単価などはフィードバックされているか。
  • 若手社員の下積み後のキャリアプランはどのように制度設計されているか。
  • 組織内に自分ファーストなモノづくりが蔓延していないか。

部門収支の診断項目

  • 内製部門単体での労働分配率は何%か。60%を超えるような厳しい状態になっていないか、40%以内を維持できるくらい安定した粗利益を確保できているか。
  • 保全作業と新規型製作の人員バランスは適正か。
    • 保全業務の方に偏り、新規型製造キャパシティの不足に陥っていないか。

以上、生産性と一部品質を確保するための内容に絞った診断項目となっているが、もしよろしければお使いいただけたらと思う。

読んでいただいて気づかれた方も多いと思われるが、「同業他社と比較して」という表現が多かったと思う。この点が特に「競争力」を診断する点においては重要な視点だと考えている。

なかなか生産性や稼働率が上がらないというお悩みをお持ちの企業の一助になれば幸いである。

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コラム投稿者

金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054

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