どのラフィングエンドミルを使ったらよいか
具体的に、どのラフィングエンドミルを使ったらよいか教えてください。
前回の「ラフィングエンドミルのメリットと工具特性を教えてください」に引き続き、このような質問をいただきました。
具体的には、下記の工具を検討しているとのことです。
- 三菱マテリアル社:VASFPR (バイオレットファインラフィングエンドミル(S))
- OSG社:FX-MG-REE
それぞれの工具の特徴をみていきます。
三菱マテリアル社:VASFPR ですが、メーカーサイトの説明では、「高級粉末ハイスの母材に、新開発のバイオレットコーティングを施したラフィングエンドミルです。」と、書かれていますので、工具材種は、ハイス種となりますので、切削時の発熱により、硬度が低下する温度は、500℃を超えたあたりになります。ただし、コーティングが施されているので、各被削材ごとの推奨条件は、それを前提とした加工条件となっています。
例えば、メーカーのカタログに記載されている、S55C相当の加工条件で見ると、φ10の場合(側面切削)、
- 主軸回転速度(rpm):1,350回転
- 送り速度(mm/分):250ミリ
これを、切削速度、回転あたり送り量に換算しますと、
- 切削速度(m/分):42.39メートル
- 回転あたり送り量(mm/rev):0.18ミリ
と、なっております。
次に、OSG社:FX-MG-REE を、見ていきます。
こちらの工具母材は、超硬合金となっておりますので、一般的には、切削時の発熱により、硬度が低下する温度は、1000℃付近になります。
また、こちらの工具に付与されているFXコーティングは、下記のサイトに紹介されておりますが、酸化開始温度は、850℃となっておりますので、先に紹介した、三菱マテリアル社:VASFPRよりも、高速な加工が期待できます。
例えば、メーカーのカタログに記載されている、S55C相当の加工条件で見ると、φ10の場合(側面切削)、
- 主軸回転速度(rpm):2,500回転
- 送り速度(mm/分):500ミリ
これを、切削速度、回転あたり送り量に換算しますと、
- 切削速度(m/分):78.5メートル
- 回転あたり送り量(mm/rev):0.2ミリ
と、なっております。
では、どちらを使うとよいのか、ですが、
加工速度だけで比較すると、超硬母材で作られている、OSG社:FX-MG-REE の方が適していると言えると思います。
では、三菱マテリアル社:VASFPR は、どういった場合に適しているかというと、超硬工具よりも、ハイス種の方が靭性は勝っているので、欠損が大きな問題になるような、例えば、長時間の無人運転を仕掛け、かつ加工時間よりもリスク低減の方を優先したいような場合、例えば、夜間や週末の無人運転などに適していると思います。
また、OSG社:FX-MG-REE の方の側面切削の条件に記載されているae値は、0.3Dで、三菱マテリアル社:VASFPRは、0.5Dとなっております。
CAMでデータ作成する際には、このあたりにも気をつけたいものです。ただし、この差は、加工時間に大きく影響を与えるものではないと思います。
OSG社:FX-MG-REEを使って高速切削をするうえでは、0.3DくらいのXY方向の切り込み量が適しているのだと思います。
CAMでデータ作成を行うなど、安定した切り込み量で、加工できるのであれば、超硬母材のラフィングエンドミルを使うことで、効率的に加工できるかと思います。
※ 実際の加工においては、工具材種だけでなく、被削材の物性、機械剛性、工具の消耗状態、被削材のクランプ状態などの外的要因で、如何様にも状態は変化するため、実際の加工においては、自己責任のうえ、充分な確認・検証を行ったうえで、加工してください。
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