小ロット・一品加工品の不具合対策について
今回のタイトルの件についてですが、私自身も参考にするため、一品加工品(一つもしくは少数しか加工しない部品)に特化した品質管理の市販図書を探しているのですが、私が知る限りなかなか見つかりません。
大量生産、いわゆる大ロット品の品質管理、例えば全数検査や抜き取り検査、それに伴う統計やQC手法による異常の原因の見つけ方、標準化、記録の残し方、チェックシートの作り方などの本は山ほど存在するのですが、金型メーカーや部品加工メーカーが求める、一品加工品向けに特化した本は、まずなかなかありません。
今回はその一品加工品について、特に不具合を発生させないために必要となる取り組みについてまとめてみました。
そもそも不具合日記をつけていますか?
私はコンサルタントになる前、自らが加工者だった頃、よくミスをしましたが、その際に必ず不具合日記をつけていました。
設計をしていたときも同様です。CAMデータ作成業務をしていたときも、マシニングのオペレーター業務をしていたときも同様です。
ミスをやらかすたびに、日付と内容をセットにして、自分の不具合日記をつけていました。
最初はノートでしたが、会社で自分用としてのパソコンを使用できる環境になってからは、EXCELでその不具合日記をつけていました。
何の為か?それはもちろん再発防止のためです。
対策を考えたときは、それもセットにして書いていましたが、何と言っても目的は、以前やってしまったミスを思い出すための記録です。
この不具合日記に大した目的まで考えてはいませんでしたが、やはり2回同じミスを繰り返すことは避けたいので、マシニング加工で言えば、サイクルスタートボタンを押す前、CAMデータ作成で言えば、計算をかける前や後工程にデータや指示書を渡す前、必ず不具合日記を一通り、見るようにしていました。
会社の不具合対策は2段階ある
こうした不具合への対策ですが、次のような2段階に分かれると思っています。
- 個人レベルでの対処
- 工程ごとや部門で標準化する対処
私がとっていた対応は、①の「個人レベルでの対処」です。
これを読んでくださっている方にお聞きしたいのが、自分がミスをしてしまったとき、まずは個人レベルでの対処でいいので、何か行っていますでしょうか?
「次も同じミスをしないよう気を付けるようにしています」
これは、対処しているうちに入りません。何か行動レベルで対処して、はじめて対処したと言えます。
別に私と同じような不具合日記を必ずつけてください、と言っているわけではありません。同じミスをしないための対策を、何か一つでもいいのでとっていますか?ということです。
また、複数で同じ作業をする者同士で共通した対策をとるのが、②の「工程ごとや部門で標準化する対処」です。
これは上司や管理者などの指示のもと、最も効果のありそうな対策を、同じ作業をする全員で統一して採用し、皆でミスを撲滅しましょうという取り組みです。
例えば、投資をして自動化を図ったり、治具や道具をつくったり、簡単なところでは共通のチェックシートやルールをつくったり、といったことが当てはまります。
不具合日記では限界がある
さて、私は自分が担当する業務ごと、それぞれで不具合日記を作っていたのですが、見る必要のない項目については順次削除はしていくものの、ご想像のとおり、月日が経つごとに膨大になっていきました。
そもそも、私が19才の頃(執筆時では30年前)、初めて金型加工者として担当したのは倣い加工機だったのですが、やりはじめは本当にミスが多く、また周りの先輩は口下手な年配の職人さんばかりで、ミスへの対処法は全く教えてもらえませんでした。
そのため、自分で編み出したのが制御機の横にガムテープを300ミリくらいの長さで、縦に何列か並べて貼り、そこに自分のミスとチェックする箇所を、順次、油性マジックで書いていくというものでした。

それが私にとってはじめての作業チェックシートでした。
ただし、上司の了解もとらず勝手に行い、剥がしても粘着の跡が残ってしまうガムテープをベタベタと貼る行為については問題がありますので、もちろんこれは人におすすめできません。
全くお粗末な対処だったのですが、唯一よかったと思うのは、否が応でも目に入る箇所にチェック内容があったという、ポカヨケやヒューマンエラー対策のセオリーに乗っかっていた点です。
以降40歳でコンサルタントに転身するまで、常に自分の作業については不具合日記を作り、自分の作業後のチェックシートとして使っていました。
ただし・・・それでも限界は来ます。
金型や部品加工の仕事は、都度、形状が変わることが多く、過去の不具合履歴を振り返るだけでは対応できないものが出てきます。
そこで必要になるのがKY(危険予知)です。
よく安全管理の分野では、KYトレーニングとか、KYTなどと呼ばれたりする、アレです。
一品加工品に対してはKY(危険予知)が決め手
私は一品加工品については、このKY(危険予知)が決め手だと思っています。
言い方を変えると、加工をはじめる前の段階で、目の前にある図面(もしくは3Dモデル)のものを加工すると、どのような不具合が発生しそうなのか、初めにこの懸念事項が出てこない人は、ずっとミスを出し続けると思っています。
例えば今から加工するプレート部品、その薄い箇所について、仕上げが終わった後に、歪みが出て寸法公差外れになりませんか?
また、焼入れ前に加工したリーマ穴、焼入れ後にピッチ寸法が公差外れになることはありませんか?
そもそも、そのバイスのクランプの掴み代だと、加工中に動いてしまいませんか?
私がやっていた不具合日記など過去に失敗した履歴は、これらを発想させる情報源として使います。
あくまで全く同じものを加工するわけではありませんので、その情報源を元に、まさに今から加工する部品について、同じような不具合が発生しないか、その危険予知を行うわけです。
懸念事項に対して具体的にとる対策
ではその懸念された不具合を発生させないため、具体的にどのような対策をとるのか、ですが
ここに経験やスキル、応用力の差が出てくると思います。
例えば、先ほどの仕上げ加工後に寸法外れになってしまいそうな不具合の懸念がある箇所について、一体どれだけ仕上げ代をつけておけば安全なのか、また今回指示されている寸法公差なら、いきなり仕上げても公差内に入るのか、このあたりの判断に個人差が出てきますし、仕事の早い・遅いの差は、まさにこの差だと思っています。
安全を見過ぎる人は、不具合は少ないかもしれませんが、逆に仕事が遅い人になってしまうかもしれません。
また、今この執筆時はコロナ渦でもあるわけですが、仕事が暇なときや、改善活動の時間に、こういった過去の不具合について検証をしてますでしょうか。
先ほどの例で言えば、まさにどれだけの仕上げ代なら大丈夫なのかの検証です。
また同じような案件が来たとき「エイヤッ」で加工する・・・これはビジネスではありません。ギャンブルです。
しかしながら、実際の製造現場ではこういった「エイヤッ」→不具合、また「エイヤッ」→不具合、といった繰り返しが起こっているのも事実です。
御社はいかがでしょうか。
私が日々訪問している企業で加工している人の中には、ファンタジスタというあだ名を持つ、常にギャンブル的な一発勝負の加工条件と順序で、仕事をしている人もおりますが、こうした野生の勘が常に的中するのも一つの才能であり、センスの成せる業かもしれませんが、
私も含め、一般的な加工者が行う、一品加工品で不具合をできるだけ発生させないための対策について最も重要だと思う取り組みは、
不具合日記とそれを活かしたKY(危険予知)による、安全な加工条件・順序の設定
だと思っています。
また、不具合日記は、ポカミスに対するチェックシートにもなります。
参考になれば幸いです。
もし思い当たるところがあれば、ぜひ取り組んでみてください。
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コラム投稿者
金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054
