スキルマップの鮮度は賞味期限切れしていませんか?

ものづくりの現場で「センスが良いとされる人」を考察してみます
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スキルマップの鮮度は賞味期限切れしていませんか?

以前、このサイトでのコラムや日刊工業新聞社の月刊誌「型技術」での連載記事で、多能工化とマルチスキルの違いを紹介したことがあります。

簡単に説明させていただくと、多能工は実際に他の工程に入って仕事をするため、取り組んだ実績は見えやすいですが、計画的なジョブローテーションが必要になるなどハードルが高いです。一方マルチスキルは、自分の工程の仕事で、他工程のスキルを活かすというもので、多能工よりも取り組むまでのハードルが低いです。

その多能工やマルチスキルの取り組み状況を示すものとして、多くの会社で使われている「スキルマップ」ですが、実際に金型メーカーや部品加工メーカーでの業界改善などのため、それぞれの会社で用意されているものを、いざ使ってみようとするとなぜか機能しないケースがあります。

それは、すでに賞味期限切れになっているスキルが「できる」として、になっていることがあるからです。

主にベテランの社員さんに多いパターンで、昔はメイン担当として作業していたけれど、今は管理職や設計など別の業務についているというものです。

仕事量がピークに達しているときなど、失注を防いだり外注費を減らすため、一時的に多能工として「できる」となっている作業に入っていただこうとすると、「今はもうできませんね」となる場合があるということです。

ではその対策として、正しくスキルマップの「できる」を機能させるためには、定期的にスキルを維持する何らかの取り組みが必要です。

スキル維持のために有効な考え方

さて、それにあたっては、技能作業系定型作業系に分けて考えることができます。

まず定型作業系は、手順さえ明確にしておけば「慣れのスピード感」は下がるとしても、概ねいつでも作業に入れるスキルを指します。

次に技能作業系は、仮に手順は明確になっていても、手になじんでいなければ、即座に作業できないスキルを指しています。

よく勘違いされやすいのが、CAMのオペレーター業務です。

すでに誰かの手によって作ってあるCAMデータのNCプログラム出力くらいであれば、これは定型作業系という扱いで問題ないと思いますが、データそのものを作るとなるとこれは技能作業系の扱いになる場合が多いと考えられます。

ある勘違いをしてしまった例があります。

ある金型メーカーで新しくCAMオペレーターに任命されたAさんはとても几帳面な方で、CAMの操作一つ一つを、事細かにノートに記述して覚えていました。それこそ左クリック・右クリックといったところまでです。

しかしまさにその一部始終を横で見ていましたが、その後どれだけ詳細にノートにつけていても、いざCAMデータを作る作業に入ってみると、なかなかうまく操作ができませんでした。

加工するワークや素材の形状が変わる度に、それぞれ異なる手順をノートの記述から探しますが、あまりに選択肢が分かれすぎたため、書いたことを見つけるだけでかなり苦労していました。

もちろんノートに記述することも、大変な労力と時間がかかります。

ここで金型メーカーや部品加工メーカーの業務において「標準化すべき手順」について見ておきたいと思います。この「標準化すべき手順」がまさに定型作業系の対象になるものです。しかし、その枠に収まらないスキルやノウハウが必要な作業もあります。それらは、個人の持つスキルや技能で対応していくことになります。

簡単に表現すると「いちいちそこまで全部を標準化しているとキリがない」というものです。

ですから先ほどの事例のように、すでに誰かの手によって作られたCAMデータをNCプログラム出力する程度であれば、手順を明確にしてノートなどに記述しておき、いつでも誰でもできるようにしておくことは、主担当者の急な欠勤などに対応するための有効なバックアップ体制構築になりますが、今回Aさんの事例において、加工データそのものをCAMで作る作業はその枠を超えてしまった、典型的な事例だったと思います。

技能作業系のスキルを、定型作業系のスキルのように扱ってしまうと、実務では運用しづらくなるという典型的な例です。

さて、金型メーカーや部品加工メーカーで、標準化してノートに付けておく意義のある作業、定型作業系で代表的なものの中には、工作機械のトラブルシューティングがあります。

年に数回とか、何年に一回などで発生する機械の故障で、この復旧作業については手順が明確なものが多いです。

これは私の経験談ですが、古い機械でメモリをパンクさせてしまった場合の復旧作業(ずいぶん古い事例ですみません・・・)は、定期的に思い出して作業できるものではありませんし、一定の手順は定まっていますので、これはまさにノートに書き留めておいて管理する定型作業系の代表でした。

一方、多品種一品モノが多い、金型メーカーや部品加工メーカーのモノづくりの中で、応用力が必要になる加工や設計、組み立て、トライ業務などにおいて、ノートに一生懸命、手順を書き留めていても、実際に機能させることは難しくなります(注意する点やチェック項目などのノート記述は必要になります)。

イメージしやすいのは、スポーツの分野でしょうか。

例えば、ゴルフやテニスのスイングにおいて、覚え始めはたしかにメモをとったり本を読んだりして、動作の一つ一つを覚えていきますが、メモさえ残しておけば1か月や半年先などしばらく経ってから、そのメモや本さえ見れば、いきなり本番に使えるスイングができるかというとそうではありません。

やはり、最初はメモや本などに頼って覚えていったとしても、反復練習で体にスイングをなじませ、無意識に体が動くようにならないと、実際の本番や試合では使いものになりません。

金型メーカーや部品加工メーカーの話に戻しますと、私の場合は、これも代表的な技能作業系のスキルの一つ、溶接肉盛りなどは、その仕事から離れた後も、自分で期限を決めて、いつでもその作業に入れるように、定期的に練習してスキルを維持するようにしていました。

CAMやマシニングセンターでの段取り作業や、プレス機械でのトライ作業なども同様です。自分でスキルの賞味期限を決めておいて、定期的に触って維持できるようにしていました。

さて、御社のスキルマップの鮮度はいかがでしょうか。

スキルマップで〇がついている業務は、いざ作業に入らなければならないといった場面で、本当に使えるスキルになっていますでしょうか。

会社の仕組みとして運用している以上、やはり機能していなければ意味がないと思います。

参考になれば幸いです。

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コラム投稿者

金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054

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