楽しんで仕事をする人の方が伸びしろがある?

ものづくりの現場で「センスが良いとされる人」を考察してみます
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楽しんで仕事をする人の方が伸びしろがある?

先日、あるメーカーさんで、楽しみながら仕事をする人とそうでない人の違いを感じるエピソードがありましたので、少し紹介させていただきます。

あるメーカーさんでのお話しなのですが、そこでは採用活動が上手くいっており、金型部門においては、設計のみならず機械加工の方も 4 年制大学の卒業生を採用しています。CAM オペレーターや機械段取りオペレーターとして、彼らは作業に従事してもらっています。

とりわけその中でも、工業系の大学を出て将来有望とされている、入社して数年経つマシニング段取りオペレーターの方とお話ししました。将来どうなりたいかなどを伺いました。

会話自体はハキハキとしていたのですが、将来の目標についてあまり明確な答えが返ってこなかったので、「では、社内では誰を目指していて、その人のどういうところがすごいと思っていますか?」という質問を投げかけてみました。

すると、「機械オペレーターとして 20 年の経験を持つ A さんが目標です。Aさんは色々な段取りを迷わずテキパキとこなすところがすごいと思います。」と答えてくれました。

私は次に「では、その人のように作業できるようになったら、その先は将来に向けて何を目指していきますか?」と質問してみたところ、ウーンと頭をかしげ、そのまま返答はありませんでした。

この会話をしていたとき、私はこの会社の加工現場に限らず、金型メーカーや部品加工メーカーの将来に不安を感じました。

イチ会社員としてはとても真面目で誠実、段取りオペレーターとしてはおよそ100点の目標だったと思います。

ですが、私もモノづくりに関わる一人として、「迷わず段取りできること」が、やりがいがあって楽しい目標かと言われると、ちょっと疑問に思えたからです。

その会社では、5軸マシニングもあり、設計も3次元でやっており、CAMは3次元用に加え同時5軸加工も出来るため、仕事として直接用途はないかもしれませんが、複雑なモデルを作って 5 軸で削ってみたり、自分の特技となるスキルを身につけて発揮したりするような、モノづくりの分野での目標を持っていても良いと思います。

また、こちらの加工現場では、スローアウェイカッターにチップを取り付ける方法を写真入りで丁寧に説明した書類や、工具セッティングの作業要領書などが、作業スペースにたくさん掲示されています。

会社としての品質管理としては、とても素晴らしい取り組みなのですが、マシニングセンターの段取り作業に関して、あまりにも細かく丁寧な教育が必要なのであれば、オペレーターの成長の余地はどれくらいあるのか、少し心配になります。

一方、先日ある設備メーカーさんに行った時のお話しなのですが、マシニングセンターの稼働状況を見せてもらったとき、少し変わった箱状の部品を切削していたので、「これはどこのお客さんの部品ですか?」と聞いてみたところ、「いや、これはウチの自宅で壊れた排水口の部品を、自分でモデリングして削ってるんだよ」と、今は息子さんに社長業を引き渡した会長さんがお話ししてきました。

現役を退いた今も、創業者である会長は、自分でVISIでのモデリングとhyperMILLでCAMデータを作り、箱状部品を楽しみながら削っていました。

「いやー、こういう深い加工とか、R0.3とか細かい溝部の加工って、普段のウチの製品にはないからさー、一遍やってみたくなっちゃって」と、イキイキしながらデータを作って加工をしていました。

実際、納期と要求品質を守りながら加工する本業実務とは、責任の重さもまるで違ってきますが、私個人としては、どこか懐かしさというか、これが本来現場でお仕事をする人のモチベーションなのだと感じました。

厳しい普段のお仕事もあるのですが、ちょっと空いたときや練習のときに、普段ではやれない「遊び」のような加工やモデリングもできるところに、金型メーカーや部品加工メーカーでお仕事をする醍醐味があると思っています。

ある意味、そういう醍醐味を感じなければ、ドラマやアニメに出てくるような今ドキの綺麗な職場に、みんな行きたくなってしまうのではないでしょうか。それは、この業界にとって望ましくないことです。

その会長に、hyperMILLで複数の加工面からデータを作る際に使う応用操作を教えていた際、「村上さんって、どうやってそういう知識を覚えたの?普段のデータ作るだけならここまでいらないでしょ」と聞かれました。

そう問われた私は、エグい加工の仕事を受けたとき泣く泣く身に付けたこと、いざそういう時のため普段時間が空いたとき色々試してきたことなどを答えました。

これを聞いた会長さんは「あー、じゃあ、村上さんは、元々CAMをいじるのが好きなんだね、でないと仕事で使うものをわざわざ空いた時間には触らないよね」と言っていました。

私の評価の話はどうでもいいのですが、これを聞いたとき、最初に出てきた若手マシニングオペレーターのことを思い出し、もちろん私だけでなくこの会長さんや、過去に自宅にソフトを持ち帰って触っていた人など(コンプライアンス的に良くありませんが)、昔はこういった人が大勢いたなぁと思いました。

今回のコラムテーマですが、楽しんで仕事をする人とそうでない人、どちらに伸びしろがあって、どちらがスピード感を持って成長していけるかと言えば、やはり多くの人は楽しんで仕事をする人だと答えると思います。

とは言え、昨今厳しくなった残業規制や賃上げ要請に伴い、「遊び」のための余剰な時間は、益々取りにくくなっており、金型メーカーや部品加工メーカーに少なくなったとはいえ、楽しんで仕事をしている人にとっては、とても厳しい時代になりました。離職も多いこの業界、少しでも多く、楽しんで仕事をする感覚を持つ人が増えていって欲しいと思います。

以前にも、この業界でお仕事する人が応用力を身に付けるにはどのようにしたら良いかを、コラムで書いたことがありますが、もしよろしければこちらも読んでいただければと思います。

最初に出てきた若手マシニングオペレーターさんとの会話は、私にとって、この業界の将来に不安を感じさせるものでしたが、労働環境を悪化させないうえで、少しでも「加工や設計を楽める」環境づくりのお手伝いをしていきたいと改めて思いました。

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コラム投稿者

金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054

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