なぜ当事務所で扱う「べき動率」は100%を超えるのか?
今回は、当事務所のコラムで頻繁に登場する「べき動率(可動率)」について、なぜ一般的な書籍で解説されている使い方とは異なる、独自のアレンジを加えているのか、その理由をご説明したいと思います。
「可動率」の一般的な定義
まず、基本の確認から見ていきます。「可動率」とは、「本来、作業を行うべき時間」に対して、「実際にどれだけ設備や人が稼働できたか」を示す割合(%)のことです。
一般的な書籍では、「稼働率」との違いがよく取り上げられます。


「稼働率」の分母が工場の操業時間(例えば8時間や24時間)であるのに対し、「可動率」の分母は「仕事の予定が入っている時間」のみとなります。
なぜこのような違いがあるのかについては、別のコラムで詳しく解説しておりますので、そちらをご参照ください。

なお、「可動率」については、「稼働率」との混同を避けるため、「かどうりつ」とは呼ばず、やるべき仕事に対する達成割合として「べきどうりつ」と呼称する旨が書籍に記されています。
当事務所が目指す「100%超え」のべき動率
さて、ここからが今回の本題です。
一般的な可動率は、その性質上100%が上限となります。しかし、当事務所がコンサルティングの現場で活用している「べき動率」は、100%を超えることを目標としています。
なぜ、そのような違いが生まれるのでしょうか。それは、計算方法が異なるためです。
当事務所では、べき動率を以下の式で算出しています。
べき動率 = 予定工数 ÷ 実績工数
ここで言う「予定工数」とは、その職場の熟練者やリーダーが作業を行った場合に想定される時間、いわゆる「標準工数」のことです。
一方、「実績工数」は、若手作業者などが実際にその作業を行ってかかった時間です。
つまり、特定の作業や工程において、基準となる工数に対して、どれだけ効率的に作業を完了できたか、その比率を「べき動率」として評価しています。
具体例で考える「べき動率」
例えば、ある現場のベテランが「4時間」で完了すると見込んだ作業を、若手作業者が「5時間」かけて行ったとします。この場合、当事務所の計算式では以下のようになります。
4時間(予定工数) ÷ 5時間(実績工数) = 0.8
このケースでの、若手作業者のべき動率は「80%」となります。
その後、この若手作業者がスキルアップし、同じ作業を「4時間」で完了できるようになったとします。
4時間(予定工数) ÷ 4時間(実績工数) = 1.0
これで、べき動率は「100%」に到達しました。さらに習熟を重ね、作業を「3時間」で終えることができれば、
4時間(予定工数) ÷ 3時間(実績工数) ≒ 1.33
べき動率は「133%」となり、100%を超えるのです。
なぜ、あえてアレンジした計算方法を使うのか?
金型加工や単品・小ロット生産の現場では、一般的な可動率の考え方が馴染まない、と私は考えています。
タクトタイムが厳密に決まっている量産品の加工であれば、稼働率や可動率を指標とすることに大きな意義があります。しかし、作業者によって個人差が出やすい単品・小ロット生産の世界では、矛盾が生じることがあります。
過去に、あるコンサルティング先でこんなことがありました。
稼働率の数値を良く見せるために、機械の送り速度を意図的に下げ、停止時間を減らして稼働時間を延ばそうとした作業者がいたのです。
これは極端な例かもしれませんが、一般的な可動率の計算方法では、仕事が速い人がどれだけ効率的に作業をこなしても、その頑張りが数値として正当に評価されにくいという側面があります。
「効率性」を正しく評価するために
一方、当事務所が提唱する「べき動率」であれば、どうでしょうか。
品質を維持しながら、予定された工数よりも短い時間で効率的に作業を完了させれば、その成果に比例して数値は向上していきます。
これは、作業者自身のモチベーション向上に繋がりますし、管理する上司にとっても、複数の部下を公平に評価するための客観的な指標となり得ます。
金型メーカーや単品・小ロット加工メーカーを専門とする当事務所が、あえて一般的な可動率ではなく、アレンジを加えた「べき動率」を用いるのは、まさにこの「効率性」を正しく評価するためなのです。
実際には、案件ごとにべき動率を算出しつつ、月次などの一定期間で、予定工数と実績工数を集計し、全体のべき動率を評価しています。
まとめ
一般的な「稼働率」「可動率」が現場の操業度合いを測る指標であるのに対し、当事務所が用いる「べき動率」は、「仕事の効率性」を評価するための指標です。
単品・小ロット加工の現場では、操業度の高さが必ずしも生産性の高さに直結するとは限りません。むしろ、逆の結果を招くことさえあります。
だからこそ、当事務所は、生産性に直結する「効率性」を測るために、あえて分母と分子の意味合いを逆にし、「良い結果を出した者ほど数値が高くなる」という、シンプルで分かりやすい考え方を採用しています。
これが、今回のコラムのタイトルである「なぜ当事務所の『べき動率』は100%を超えるのか?」という問いへの答えであり、分母と分子を入れ替えるという逆転の発想に基づき、努力や工夫といった成果が、正しく数値として可視化される仕組みを構築しました。
この「べき動率」を用いることで、この業界において、従来の指標では捉えにくかった“真の改善成果”を明らかにし、現場の生産性向上に直接的に寄与できると考えています。
今回のコラムが、皆様の現場改善のヒントになれば幸いです。
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コラム投稿者
金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054
