【コンサルの現場から】「逆順教育」って何ですか?
先日、クライアント先で技術者教育の指導を行っていた際、「逆順教育(ぎゃくじゅんきょういく)」という手法についてお話ししたところ、参加者の方から「具体的にどういうことですか?」という熱心なご質問をいただきました。
この「逆順教育」については、過去のコラムでも何度か触れてきましたが、非常に重要な考え方ですので、改めてその本質と実践のポイントについて整理したいと思います。


「逆順教育」とは何か
通常、ものづくりには「上流から下流へ」というプロセスの流れがあります。
例えば金型製作であれば、「設計」→「機械加工」→「組み立て」→「トライ(調整)」という順序で進みます。機械加工の現場であれば、「CAMデータの作成」→「治具製作」→「機械へのセット」→「加工オペレーション」という流れが一般的です。
「逆順教育」とは、このプロセスの流れとは「逆」の順序で、あるいは下流の作業を行いながら上流の意図を汲み取る形で、技術や知識を習得していく手法を指します。
これは単なる作業手順の学習ではなく、どちらかといえば「意識の持ち方」に重きを置いた教育概念です。
実践の具体例:金型設計と機械加工
具体的な例を挙げてみます。
1. 金型設計の場合 若手設計者は、まずベテランが設計した全体図をもとに「部品図」へとバラしていく作業(トレースやアシスタント業務)から入ることが多いと思います。
この際、単に線を引くのではなく、「なぜ先輩はこの構造にしたのか?」「なぜこの材料や部材を選んだのか?」と、下流(部品図作成)から上流(構想・構造設計)の意図を遡って学習するのです。
2. 機械加工の場合 機械のセットアップやオペレーションを行う際、「なぜこのエンドミルやドリルを選んだのか?」「なぜこの回転数、送りスピード、切り込み量に設定されているのか?」を考えます。
作業の背景にある「加工理論」や「判断基準」を意識することで、ただのルーチン作業が深い学びに変わります。
一見すると単純な作業であっても、そこに込められた「意義」や「根拠」を意識するかしないかで、数年後の習熟度には計り知れない差が生まれると思っています。
「逆順教育」を成功させる2つの柱
金型製造全体での工程といった枠組みで捉えると、例えば機械加工と組み立てやトライとは、作業の中身が大きく異なるため、逆順という考え方はまた少し意味合いが変わってきますが、「設計」や「機械加工」といった特定の技術工程に的を絞れば、この逆順教育は極めて効果的な手法となります。
この教育を成功させるためには、次の2つの柱を同時に進めることが重要です。
① 若手技術者本人の「意識」
まず、教わる側の若手が「逆順で意図を汲み取る」という姿勢を持つことです。目の前の作業の「上流にある目的」を常に自分に問いかけながら取り組むことが、成長の最短ルートとなります。
② 組織としての「コンテンツ整備」
そしてもう一つ、会社や部署側が、その「なぜ?」という疑問に即座に答えられる環境を用意することです。 具体的には、「自社の標準的なやり方(自社流)」を明文化し、なぜその仕様にするのか、なぜその手順なのかという「根拠」をコンテンツとして整備しておくと効果的です。
「うちのやり方はこうだ」という基準が明確であれば、若手は迷うことなく本質的な学習に集中できます。
この「自社流の整備」の重要性についても、過去のコラムで詳しく解説していますので、ぜひ併せて参考にしてください。

まとめ
今回の指導先企業では、この「意識の持ち方」と「コンテンツの整備」という2つの側面から解説をさせていただきました。
「逆順教育」は、単なる教育の順番の問題ではなく、現場に蓄積された「知恵」をいかに効率よく次世代に引き継ぐかという経営課題でもあります。
今回の内容が、皆様の現場での技術者育成の一助になれば幸いです。
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コラム投稿者
金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054
