エンドミル加工における「中仕上げ」の送り条件について
今回の技術コラムは、マシニングセンターなど、エンドミルを使った切削加工における、「中仕上げ」加工の送り条件(F値)の決め方についてです。
荒取り加工や最終仕上げの送り条件については、これまでこのコラムでも取り扱ってきました。
荒取り加工については体積ベースで計算する、最終仕上げについては、エンドミルの側面切削であれば、狙う仕上げ面粗さによって、1回転ごとの送り長さを計算するというものでした。
平均切りくず厚さを考慮
では、荒取り加工ほど大きな体積を削るわけでもなく、また最終仕上げ加工のように、仕上がり面粗さを考慮する必要のない「中仕上げ」の送り条件はどのように考えればよいのでしょうか。
当事務所では、下図にあるような、「平均切りくず厚さ」をベースに考えることをオススメしています。
その理由として、
- 荒取り加工ほど切削体積がなく、強い切削抵抗がかからないので、本来、中仕上げ加工は、工具カタログにおける、仕上げ用の条件並みに送りを速くすることができる。
- かといって、最終仕上げ加工のように、仕上げ面粗さを考慮した送り条件まで下げる必要はない。
この「仕上げ面粗さを考慮した送り条件まで下げる必要はない」というのが、この「中仕上げ」の送り条件を決めるうえでは重要です。
なぜならば、工具の「回転あたりの送り量」が少ないことは、エンドミルの摩耗を促進させてしまうという弊害があるためです。
稀に「機械の稼働率はそれほど高くないので、工具費を抑えるため、できるだけ送り速度を下げて無人加工させている」という人にお会いしますが、大きな間違いです。
コスリ摩耗といって、送り速度を必要以上に下げていると、一定距離を削る間に、必要以上に工具の回転が多く当たることになり、特に「逃げ面」と呼ばれる部分の摩耗が進みます。
この「平均切りくず厚さ」は次のような計算式で計算できます。すなわち、必要以上工具を摩耗させないあたりの切りくず厚さを前提に計算をすると、通常のカタログ値よりも、送り条件は高くなってくると思います。
このように「中仕上げ」加工においては、仕上がり面粗さまで狙う必要もないのに、最終仕上げの送り条件を使っていると、場合によっては「平均切りくず厚さ」が必要以上に薄くなり、その結果、逃げ面のコスリ摩耗を促進してしまう可能性が高くなります。
一度、御社の送り条件と見合わせてみてはいかがでしょうか。
最終的には、御社でお使いの工具や機械に適した「平均切りくず厚さ」に合わせていくことになると思います。
荒取り加工条件の標準化でも書きましたが、企業として重要なのは、適正な加工条件を会社・部門で統一して使えるかどうかです。
それには、納得して使える指標が重要になります。
もしよろしければ、一度試してみてください。
※ 実際の加工においては、工具材種だけでなく、被削材の物性、機械剛性、工具の消耗状態、被削材のクランプ状態などの外的要因で、如何様にも状態は変化するため、実際の加工においては、自己責任のうえ、充分な確認・検証を行ったうえで、加工してください。
金型・部品加工業専門コンサルティングからのご案内
ホームページの技術コラム本の第8巻が発売されました!
設計部署や製造現場、管理部署にぜひ一冊。
経営者や部長などマネージャー職の方々から、悩める現場リーダーへのプレゼントにも最適です。
くわしくはこちらのページからどうぞ。
【改善・管理の上級編】セミナー動画が発売中です【お得なDL版あります】
過去に大手セミナー会場で、代表コンサルタントが講師として登壇した内容をZOOMで再収録しました。
内容は、加工や管理における上級コースとなります(基礎知識はすでに持っておられる方向けになります)
動画セミナーですので、いつでも何人でも受講でき、長時間一気に受講する必要もありません。隙間時間を有効に使って受講できます。
お買い求めしやすいダウンロード版もございます。
くわしくはこちらのページからどうぞ。
【書籍販売中です】経営が厳しい金型メーカーのための本
このホームページに掲載している多くの技術・管理コラムから、経営が厳しい金型メーカーのために、大きな投資に頼らず、意識面や仕事の取り組み方などから改善改革していける方策に関するコラムを集めた本をつくりました。
こちらの書籍を販売しております。内容は、366ページの大ボリュームとなっております。
ぜひ社員の皆さまで読んでいただければと思います。また、金型メーカーを支援される金融機関や公的機関、会計事務所やコンサル会社でお勤めの方々にも、読んでいただければ幸いです。
詳しくはこちらのページからどうぞ。
YouTubeを使った上級セミナーを配信中です
金型メーカー・部品加工メーカーにおける、個別テーマの上級セミナーを配信しております。
YouTubeによる動画配信ですので、ネット環境があればいつでもどこでも視聴できます。
くわしくはこちらのページからどうぞ。
「金型メーカー・機械加工業のための管理職育成マニュアル」発売中です
当サイトの管理職育成ルームに掲載しているコラムを集めて編集したものになります。
金型メーカーや機械加工メーカーで、新たに管理職になられる方や、すでに管理職としてお仕事をされている方向けに、ストーリー形式で、心構えから具体的に取り組む業務内容まで、幅広くまとめております。
くわしくは、こちらのページからどうぞ。
「金型メーカー・部品加工メーカーにおける処世術」が発売中です
こちらの書籍は、金型メーカーや部品加工メーカーにおいて、国内全体で賃上げの機運が高まる中、勤める会社に貢献しながらも、ご自身の付加価値・市場価値を高めていこうとされる方々の一助になるような内容をお届けすることを目的としています。
「処世術」をテーマにした一般書籍はたくさんありますが、主にホワイトカラー向けのものが多く、金型メーカーや部品加工メーカーのお仕事ですぐに使えるものが少ないと思っています。
一方この本では、金型メーカーや部品加工メーカーの現場「あるある」を題材にしており、そこでお仕事をされる方々に身近なわかりやすい内容にしております。
簡単なワークも掲載していますので、社内研修にもお使いいただけます。
詳しくはこちらのページからどうぞ。
「金型メーカー・機械加工業のための自己診断ハンドブック」が発売されました!
私がコンサルティングの初回訪問時や、無料診断サービスにおいて、訪問先企業の製造現場で確認する項目を解析付きで紹介しています。
金型メーカーや部品加工メーカーに皆さまに、自社をセルフチェック(自己診断)するために使っていただければと思っております。
くわしくはこちらのページからどうぞ。
2パターンの技術セミナーレジュメを販売いたします
日刊工業新聞社さん主催で行われた、機械加工メーカー向け、金型メーカー向け、それぞれの技術セミナーで配布されたレジュメを販売いたします。どうしても遠方で参加できないといった方や会社さまより、レジュメだけでも使いたいとリクエストがあったためです。
当事務所のホームページに掲載されているコラムの内容がベースとなっておりますが、それとの違いとしては、具体的計算と事例ワークなどを盛り込み、ホームページよりも手厚く解説しております。
本来レジュメと言いますと、図やイラストがほとんどで、言葉による文章が入っていないイメージがありますが、本レジュメはそうではなく、復習がしやすいよう、多くが文章で構成されており、1人で読み進めることができます。
くわしくはこちらのページからどうぞ
ミドルマネジメント層向け人材育成セミナーのレジュメを販売いたします
ミドルマネジメントの人材育成のテーマで、講演をさせていただいた際に作成したレジュメ(当日映写したパワーポイントファイルと同じものです)を販売いたします。
日程や生産管理、品質管理だけが幹部・管理職の仕事ではありません。儲けるためのマネジメントが必要です。
そういった視点や意識を持ってもらうためのきっかけとしてオススメの一冊です。
くわしくはこちらのページからどうぞ。
4コマ漫画ギャラリーを開設しました
コラムページにプロローグとして添付している4コマ漫画を集めたページを開設しました。
こちらをクリックすると入れます
コラム投稿者
金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054
参考文献
西嶢祐 著(初版発行: 2004年9月)「現場で役立つ切削加工の勘どころ」日刊工業新聞社