【改訂版】責任感や使命感の薄い社員にどう対処する?
今回は、金型メーカーや部品加工メーカーの現場において、責任感や使命感の薄い社員にどう対処するか、という少し重いテーマについて、私の考えを述べたいと思います。
私の父はいわゆる町工場で働く溶接職人でしたが、昔「簡単に自分の技術を人に見せるな・教えるな」と言っていたのを覚えています。
今にして思えば、それは個人の評価が報酬に直結し、かつ評価制度も未整備な零細町工場において、自分の貢献度や存在価値を守るための処世術だったと思われます。
ところが、現代の分業化された製造現場では、状況は一変しました。
一人ひとりの貢献度や存在価値を測ることは容易ではなく、むしろ技術や情報を共有し、協力し合わなければ、自分自身の仕事が立ち行かなくなることさえあります。部下や同僚に仕事を教えないことは、今や組織に対して、反抗する行動とさえ見なされます。
しかし、この「分業化」が、別の問題を生んでいるかもしれないと感じています。それは、個人の貢献度や存在価値の希薄化です。
分業体制は、ともすれば最終製品である金型や加工部品のQCD(品質・コスト・納期)に対する責任感をも希薄化させることもあるかと思います。「自分だけの問題ではない」といった意識が生まれやすいのではないでしょうか。
あくまで私が訪問してきた現場での見聞ですが、責任感や使命感が薄い結果、能率が悪かったり、方針に従わないやり方をしたりする人がいても、大きな問題を起こさない限り、厳しく追及されないケースが見られます。
これが、責任感や使命感を強く持って仕事に取り組んでいる社員から見れば、「あの人は責任感や使命感が薄い」と映る。これは至極当然なことかもしれません。
では、どうすればよいのでしょうか。
やはり当事務所が考える対策は、「一人ひとりの貢献度の見える化」に尽きます。その方法は2つあります。
1.個人の貢献度を「金額」で見える化する
一つは、チームメンバーについて、「誰がどれだけ貢献しているか」を具体的に示すことです。
例えば、加工現場の事例で言いますと、下図の「1か月の集計工数」(実績)のような表がそれに当たります。

この表では、個人ごとに稼いだ「付加価値額」や、計画工数に対する達成度を示す「べき動率」、そして貢献度を時給換算した「時間単価」が明確に示されています。
特に付加価値額は、会社が設定している時間単価(チャージ金額)に、メンバーそれぞれが加工した工数(時間)を乗じており、これがまさにチームメンバーそれぞれの「貢献額」だと言えます。
2.労働分配率を現場全員で共有する
もう一つは、チームや部門の「労働分配率」を関係者全員で共有することです。これは、先ほどの個人別の付加価値額の「合計」を使って計算します。
下図に示すとおり、労働分配率は「総人件費 ÷ 付加価値額」で計算されます。分母の付加価値額は、簡易的には「売上 − 材料費 − 外注費」で算出されますが、現場のみで付加価値額を算出する場合は、工賃分として、時間単価(チャージ金額)×作業(加工)工数で計算します。

例えば、下図の事例では、チームメンバーの月給合計180.0万円に対し、付加価値額の合計(付加価値額②)が307.5万円。労働分配率は約58.5%となります。上図の目安に照らせば「50%以上:黄色信号」だと言えます。

さらに、上の図の事例(4名)からメンバーが増え、6名になった下図の事例では、月給合計231.7万円に対し、付加価値額の合計(付加価値額②)が422.5万円で、労働分配率は約54.8%。こちらも黄色信号とはいえ、先ほどよりも効率的に分母の付加価値額を増やすことができ、労働分配率が改善されました。

この数値を全員で共有することで、「自分たちの給与(総人件費)を賄うためには、分母である付加価値額を全員でどれだけ稼がなくてはならないか」という当事者意識が生まれます。
なお、今の表の中に出てきた付加価値額①と②の違いなど、こちらの表の使い方に関する詳しい説明は、下記のコラムにて解説しております。もしよろしければ、そちらも併せてご覧いただけますと幸いです。


令和の時代における「使命感」の持たせ方
最後に、再び昔の職人の気質の話に戻ります。 かつては「自分にしかできない仕事や領域」があることが、使命感につながっていたところはあると思います。
しかし、現代の製造現場において、特定の「その人しかできない仕事」が存在することは、属人化を招き、そこが現場のアキレス腱となり、リスクやボトルネックの原因にしかなりません。
では、令和の時代に「これはあなたにしかできないことだから」と言って部下に声をかけるとしたら、それは何でしょうか?
私は、それこそが先ほどから取り上げている、チームメンバー全員で積み上げる「金額ベースでの貢献度」の領域ではないかと考えます。
「この部分の付加価値額は、あなたにしかできないことだから」 この言葉で、管理者は「しっかりあなたの存在価値を認識しているし、頼りにしている」というメッセージを伝えます。
そして同時に、もし責任感や使命感が薄いと見なされている人がいるならば、その人に不足している貢献度が具体的にいくらなのかを、先ほどの表のような「見える化」されたデータで冷静に伝えていく。
この「貢献度の見える化」は、責任感や使命感がある人、薄い人、その全員を含めた現場において、今や必要不可欠な管理の仕組みではないでしょうか。
これを読んでくださっている読者の方々の現場にも、責任感や使命感が薄いと感じる社員はいらっしゃるでしょうか。
本コラムが参考になれば幸いです。
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コラム投稿者
金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054
