【今さら聞けない】労働分配率を使って、頑固な製造部門を動かす方法

労働分配率を使って頑固な製造部門を動かす方法
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【今さら聞けない】労働分配率を使って、頑固な製造部門を動かす方法

加工や現場経験のない方が経営者や幹部職をやられている場合などに、製造部門の意見が強くなってしまい、以前より経営状態が悪くなっているにもかかわらず、その改善を促そうにも、なかなか現場が言うことを聞いてもらえない場合があります。

正直こういった場合には、コンサルタントの立場からも手を焼くことがあります。

ではこうした場合どのように、現場の皆さんに動いてもらうのか、今回はその点についてみていきたいと思います。

労働分配率は「何を頑張るか」を教えてくれる

もう何度もこのホームページのコラムではお伝えしていますが、私は労働分配率の数値と計算式を利用して、製造部門の方に、今何がどう悪くて、何を頑張ってもらわないといけないのか理解してもらうようにしています。

普段のコンサルティングの中で、企業の事情を伺っていると、労働分配率を一回も計算したことがないというお話しも聞いたりしますが、とてももったいないですし、怖いことだと思います。

下の図を見てください。

労働分配率の図解
労働分配率の図解

これは分数による労働分配率の計算と、その主要な内訳、分母分子の関係を表しています。

ざっくり言うと、製造部門が今のお給料を維持したいのであれば、何らか労働分配率が良くなる(数値が下がる)取り組みをせざるを得ないということです。

ましてや、年齢やスキルに応じてお給料を増やしていきたいということであれば、それ以上に、分母の数値が増える何らかの取り組みを行っていかざるを得ないというわけです。年齢やスキルに応じて勝手に分母の数値が上がっていくわけではありませんので。

最悪の場合、以前良かった頃の労働分配率を取り返そうとした場合、分母の数値が変わらないのであれば、分子側のお給料を減らすことを考えなければいけないこともあり得る、ですがこれは働く人の労働条件が悪くなることなので、勝手にはできませんし、労働意欲にとても強い悪影響を及ぼします。

ですので、経営者側も労働者側も、いずれにおいても、分母側の方の数値で何とかしなければならないというわけです。状況によっては死に物狂いで。

それでは、図中にある①と②の関係性をそれぞれ見ていきたいと思います。

①総人件費と売上の関係

まず購入費や外注費で対応できない場合、つまり売上を増やす取り組みで、分母を増やすことを行わなければならない場合を考えます。

労働分配率の図解

売上を分解すると、単価×数量です。単価はさらに分解すると、顧客単価×顧客数とか、営業回数×成約率なども文献資料によって色々と出てきますが、金型メーカーや部品加工業においては、「単価」は案件ごとの単価ということで良いのではないでしょうか。

したがって、「数量」つまり受注量が変わらないとか、顧客側の発注の都合であって自社側ではコントロールできないということであれば、「単価」の方を何とかするしかありません。

例えば、できる限り製造条件の悪い案件を狙って取りに行くなどが考えられます。よく言われるのは納期対応ですね。

今日注文が来て明朝取りに来るとか、金曜日の夜に注文が入って月曜日納品とか、長期休暇の休み明け初日に欲しいとかいう無理難題を言われる案件です。

これを、見積もりはとっている暇がないのでとりあえず仕掛かった後から請求書を送るとか、今仕掛かっているワークを降ろして間に挟むため割高になるなど、通常より高めの受注金額で対応することが、日常的に行われています。

当然、製造現場には負担がかかります。今の人数ではムリという声も出るかもしれません。

しかしながら、ここで従業員の人数を増やすことは、それに追従して分母の売上額が増えていけば問題ありませんが、元々悪化していた労働分配率を元に戻すという取り組みであれば、ここで従業員数を増やしてしまっては意味がないことになってしまいます。

ここで製造現場には、「今いる戦力で何とかする」という使命が生まれることになります。かつての労働分配率を目指して。

図面に要求された品質・精度を守るのは当たり前、お客さんと約束した納期を守るのも当たり前、さらに分母を増やすためには、今いる戦力で、より単価が高い、高難易度の加工品や短納期の無理難題に挑戦していかなくはならない、ということになります。

これを労働分配率の数値を根拠として製造現場に示す、ということになります。

さて次は、単価×数量のうち、「数量」の方を見ていきます。これも考え方は同じです。

今いる戦力で「受注数量」を何とかするということです。

難しいのは金型メーカーです。理由は、一件ごとの製造ボリュームが大きいためです。

分母側を増やす取り組みのロジックについては、 「今いる戦力」で「単価×数量」のうち、単価が変わらない、もしくは下がっているのであれば、それ以上に「数量」で稼がないといけないところが、一つの金型を作るのに必要なリードタイムが1か月や2か月もかかるのであれば、それを改善努力で出来たわずかな余力に差し込む、ということがなかなか難しい、ということになります。

労働分配率の図解

そうした状況の場合は、キャパオーバーした分を外注メーカーと協力して対応していく、ということになりますが、その場合は、次の②の取り組み(総人件費とオーバーフロー外注費とのバランス)と合わせて考えていくことになります。

その点、マシニング加工などを主力とする部品加工メーカーは、金型メーカーよりも、「数量」を稼いでいく取り組みはやりやすいと思っています。

ただし、この「数量」を稼いでいく取り組みについては、会社の状況によって真逆の取り組みになると考えられ、例えば、機械よりも人間の数の方が多い場合は分業化を推進しますが、逆に人間よりも機械の台数の方が多い場合は、分業しない方が儲かる場合があります。

したがって、会社の設備保有の状況などによって、「数量」を稼いでいく取り組みはフレキシブルに変わっていくということになります。

また「数量」を稼いでいく取り組みとして、多くの部品加工メーカーを見ていると、その違いも見受けられます。

例えば、夜間の無人加工において、全くやっていない会社さんもあれば、長時間の仕上げ加工がある場合には仕掛けているという会社さんもあり、またある程度ロットのある同じ加工品であれば、その時は並べて仕掛けているという会社さんもあれば、全く別々の加工品でも、一つのマシニングセンターのテーブル上に、所せましと並べて夜間無人加工をやっている会社さんもあります。

夜間無人加工をやっていない会社さんでは「たまたまそういうやりやすい部品が、その会社さんにあるからできるんでしょ」と言われますが、そう言われる会社さんでも、30分でも夜間にかければその分、昼間に別の加工を行うことができます。

私は、少しでも儲けようという強い意識があるかないか、この意識レベルの問題だと思っています。

ここで、やはり労働分配率に目を移すと、「今いる戦力」で受注数量・加工数量を何とかするということになります。

労働分配率の図解

具体的な手段としては、多能工化や前述した夜間の多数個かけなどが考えられます。これについては、以前のコラムや執筆記事など、もしよろしければ、参考にしてみてください。

「マシニングセンタにおける段取り作業効率化の考え方と取り組み事例」の記事へのリンク

型技術3月号P18-21の記事はこちらをクリックすると読むことができます

② 総人件費とオーバーフロー外注費との関係

労働分配率の図解

次は、売上と違って、引き下げなければならないもの、です。しかも「今いる戦力」で、が前提です。

まず労働分配率を引き下げるためにコントロールできるのは、外注費のうち、「オーバーフロー外注」の分です。

外注費には、熱処理や表面処理、塗装、メッキなど、自社にはない設備のためどうしても協力メーカーに依頼せざるを得ない「必要外注」分の費用と、自社で保有している設備の仕事でありながら、社内の仕事がパンパンでどうしても納期までにやりきれず、同じ設備を持つ外注メーカーに依頼せざるを得ない「オーバーフロー外注」との2つがあります。

今回、スポットを当てるのは、2つ目の「オーバーフロー外注」の方です。

この「オーバーフロー外注」でよく議論の対象になるのは、「社内でやると外注よりも高い、だから外注に出した方が安い」という議論です。

これは下記の以前のコラムにも書きましたが、チャージ×工数の計算で出した工賃計算で高いとされた社内の加工ですが、多少高くても社内で内製するとした場合、製造経費のうち何が増えますでしょうか?

水道光熱費に含まれる電気代とか、消耗品費に含まれる工具代は増える気もしますが、社内で加工する場合の計算で用いるチャージ金額の大部分を占める人件費については、外注に出そうが出すまいが、固定費として発生するので、外製と内製でのコスト比較をする際に、人件費は含めないのがセオリーです。

そうした場合、少し乱暴な言い方をすると、内製で加工する場合は、材料代しかかからないと言えるのではないでしょうか。

また労働分配率の計算に着眼すると、オーバーフロー外注が増えてしまうと、分母の数字が小さくなってしまい、労働分配率を悪化させてしまいますが、それに伴って、分子側の人件費が減るわけではありません。外注に出しても社員さんのお給料は払わなければならないのです。

労働分配率の図解

外注に出すことで、その分、分子側の人件費が比例して多く減るのであれば、オーバーフローした分を積極的に外注に出すことは戦略的に「アリ」かもしれませんが、前述したように、人件費は基本的に固定費なので、外注に出そうが出すまいが変わることはないのです。

また、労務的に好ましいことではありませんが、残業代とオーバーフロー外注費を比較した場合でも、時給2,000円の人が残業しても、その1.25倍の2,500円で済みますが、外注に出すと、時間あたり4千円以上、特急対応ならもっと高い時間単価で請求されます。

この点においても、あくまで「儲ける」ことだけを考慮した場合は、労働基準法で許される限り、内製で対応した方が「儲かる」、つまり労働分配率は良くなることになります。

ですから特に、前述した「社内でやると外注よりも高い、だから外注に出した方が安い」については、社内が空いているのに、工賃の計算上だけで外注の方が安いという理由で社外に出している場合は、これはよろしくない対応だということになります。

ただし留意すべきは、次の見出しの論点とも関係してくる話ですが、オーバーフロー外注を社内に取り込みすぎたせいで、儲かる仕事を受注する余力が無くなってしまい、機会損失となってしまったという状況は避けたいというところでしょうか。

③売上と外注費との関係

最後に、製造現場としてはこれを忘れてはいけません。

先ほどまでの図には出てきませんでしたが、③として、売上とオーバーフロー外注費との関係です。

特に今は感染は減少してきたとはいえコロナ渦でもあり、大きな売上増加が期待できない、また自社の営業活動では売上増加に向けてうまくコントロールできないということであれば、「製造現場」として何を頑張るか、です。

やはりここまで見てきたように、「オーバーフロー外注費をできる限り減らす」ということになります。

ただし、ここで一つ議論があります。それは、オーバーフロー外注費を支払ってでも、仕事をどんどん取っていった方が良いのか、と言う議論です。

これについて私は、長期の会社経営という面を考えると、将来に見通しの立たない仕事とははっきりと区別して、今後の種まきという面も含め、できるだけ来た仕事は受けていった方が良いと思っております。

多くの顧客を持つ金型メーカーや加工メーカーの方が、経営は安定していると思うためです。

ただしここで留意すべきは、やはり金型や部品加工の仕事は、山谷があり、平準していないのが特徴なので、仕事の引き合いが出てきたときにちょうどいい量の仕事が出てくるとは限りません。

そこで協力メーカーの手を借りながら、できるだけ失注しないよう仕事を受けていくわけですが、ここで先ほどの③の「売上とオーバーフロー外注費」との関係が出てきます。

例えば、ある金型メーカーさんでは、一定期間に製造キャパが多くとれないため、せっかく受けた仕事のほとんどが外注対応になってしまうケースがありました。

その金型メーカーさんの労働分配率は65%と、決して良くはない数値でした。

したがって、こうしたオーバーフロー外注も使いながら受注をたくさんとっていこうとするときこそ、労働分配率に注意を払いながら、行動すべきかと思います。

労働分配率が悪くなる時は、「社員さんのお給料・人数に対して、内製で対応している分が不足している」状況だと言えます。

ですから、一定期間に仕事が集中しているため、納期的に非常に苦しいとは思いますが、ここで多能工化を発揮して1人何役もこなす、夜間多数個かけを徹底するなど、できる限りオーバーフロー外注費を減らす取り組みをするべきだと思います。

最後になりますが、こうしてみると、頑なな製造現場に動いてもらう、そして動いてもらうからには何を頑張ってもらうか、これらを見るには、やはり労働分配率はうってつけだと思います。

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金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054

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